二階堂ふみ「唯一無二の作品に仕上がったと思います。」

あの人と本の話 and more

2016/3/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回は、映画『蜜のあわれ』に主演する二階堂ふみさんが登場。老作家と金魚がエロティックな会話を繰り広げる、この映画の原作は、室生犀星が晩年に執筆した同名の幻想文学。17歳の時に原作と出会い、映像化を切望してきた二階堂さんの胸中とは?

「人間以外の役をやるのは実は3回目なんです。最初が猫、その次がタヌキで、それは舞台だったんですけど、今回は金魚です」

 金魚は金魚でも、真っ赤なドレスをひらひらと翻し、自分のことを「あたい」と言う。大杉漣演じる老作家を「おじさま」と呼び、小悪魔的な魅力で翻弄するエロティックな金魚の赤子を存在感たっぷりに演じている。

「赤子は一途に小説を書き続けてきたおじさまがつくりあげた女の子で、キャラクターをつくるうえで、衣装や現場の環境にものすごく助けられました。衣装デザインは澤田石和寛さん(映画『るろうに剣心』『信長協奏曲』『シャニダールの花』などを手掛ける)だったんですが、すごくきれいな衣装をつくってくださって、ポックリを履きたいと言ったら、ポックリも用意してくださったんです。撮影したのは石川県の緑の多い場所で、高いビルがないので空が広くて、夜も静か。そういう場所に身を置いていたからこそ、あの作品の世界観にどっぷり浸かっているなという感覚がありましたね」

 現在21歳。誕生日はニューヨークで迎えた。

「21歳になる10日くらい前にニューヨークに行って、写真集をつくったりしながら、ブルックリンのカメラマンの方の家に集まって誕生日を迎えたんですけど、21歳って向こうでは大人になる特別な年齢じゃないですか」

 19~20歳の間、雑誌『ポパイ』で魅力的な大人との対談を連載。それをまとめた対談集『アダルト』を読むと、この人がうかうかと大人になる気はなかったのだとわかる。

「ギアチェンジ、はかっていたと思います。今ちょうど『アダルト』の下巻をつくってるんですけど、袋とじ、つくるんですよ(笑)。二十歳から21歳になるまでの一年も本当にいろんなことを感じる年で、そういう時に高校生の時に原作を読んで以来ずっとやりたいと思っていた作品をできることになって、すごくいい感じで22歳を迎えられそうだなって」

映画『蜜のあわれ』は、まさに少女から大人になろうとする二階堂ふみをとらえた一作でもある。小説にはない美しいラストシーンは映画ならではの祝福に満ちている。

「最後のあのダンスは私がほとんど振り付けをしたんですけど、ふたりで踊る場面では大杉漣さんがリードしてくださったんです。そういう空気が現場に流れていて、書いて書いて書き続けて、もう何も残ってないひとりの作家が、ようやくいろんなものから解放された瞬間みたいな。行き着く果てはふたりともすごく純粋で、唯一無二の作品に仕上がったと思います」

(取材・文=瀧 晴巳 写真=冨永智子)

二階堂ふみ

にかいどう・ふみ●1994年沖縄生まれ。2009年『ガマの油』でスクリーンデビュー。12年映画『ヒミズ』でベネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『地獄でなぜ悪い』『私の男』『味園ユニバース』など出演作が相次ぐ実力派。今年も映画『オオカミ少女と黒王子』が5月、『ふきげんな過去』が今夏公開。
メイク=足立真利子 スタイリング=髙山エリ ※衣装はすべてスタイリスト私物。

 

『リバーズ・エッジオリジナル復刻版』書影

紙『リバーズ・エッジオリジナル復刻版』

岡崎京子 宝島社 890円(税別)

いじめられっ子の山田は、河原で発見した死体を見ると「勇気が出る」とハルナに告げる。過食しては吐くを繰り返すモデルのこずえも、この死体を愛していた。昨年は世田谷美術館で初の大規模展「戦場のガールスライフ」が開催されるなど新たに読者を獲得し続けている漫画家・岡崎京子が94年に刊行した代表作。

※二階堂ふみさんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ4月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『蜜のあわれ』

原作/室生犀星 監督/石井岳龍 出演/二階堂ふみ、大杉 漣、真木よう子、高良健吾、永瀬正敏 配給/ファントム・フィルム 4月1日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
●「おじさま、あたいを恋人にして頂戴」。老作家(大杉蓮)と無邪気でエロティックな会話を交わす少女・赤子(二階堂ふみ)の正体は真っ赤な金魚だった。原作の耽美な魅力を引き立てる斬新な映像。変幻自在の赤子の小悪魔的な魅力。艷やかでアヴァンギャルドな世界観に惹きこまれる。
(c) 2015『蜜のあわれ』製作委員会