上手な人と下手な人の“差”を知ることで講師力がUP! プロ講師・大谷由里子さんへインタビュー【後編】

ビジネス

2017/11/22

 朝礼や研修など、人前で話すことが苦手な方。「もっと講師力を上げたい」と考える塾講師や学校の先生、プロ講師の方々にもぴったりな『はじめて講師を頼まれたら読む本』(大谷由里子/KADOKAWA)。

 本書は著者・大谷由里子さんが長年講師として磨き上げてきた、プロ講師としてのマインドとテクニックがふんだんに盛り込まれている。

 大谷さんに行ったインタビューの前編では、「ツカミ」「オチ」で使える考え方やテクニックや「ネタ作り」のコツについて、後編では講師を始めたきっかけ、大谷さんが敵わないと感じた講師の方などについて語ってもらった。

年間1億円のオファーに応える(有)志縁塾 代表取締役の著者・大谷由里子さん

■上手な人と下手な人の“差”を知ることが上達への道

――講師業を始めたきっかけは何だったんですか?

大谷:私はもともと吉本興業でマネージャーをしていました。その後、吉本を退職してから、イベント会社を立ち上げます。すると「吉本の裏話を30分喋ってくれ」などと声をかけられて。それが講師を始めたきっかけですね。

――最初の講演はどうでしたか?

大谷:もうボロボロでした。この時「他の講師はどうやって話をしているのだろう」と考えて、色々な人の講演を見に行くようになりました。マネージャー時代は「講演の時間は、お茶を飲んでゆっくりできる」くらいにしか思っていなくて、ろくに聴いていませんでしたから(笑)。

――本にもありましたが、漫才や営業の現場だとマネージャーが率先して拍手したり、大きな声で笑ったりしなければいけなかったですもんね。

大谷:そうそう(笑)。だから、それからは「日本で一番、講演を聞いています!」などと、ネタにするくらい、色んな人の講演を聞きました。

――そこで何か得るものはありましたか?

大谷:見ていると他人のことだとよくわかるんです。特に下手な人。「なんでお客さんを寝かすねん」「もっとこうしたらいいのに」「だるいな」「面白くないな」って感じたら、自分はそうならないように気を付けましたね。

――反面教師ってことですね。

大谷:そうです。そのなかでも一番の収穫は、“差”がわかったことです。良い料理人は美味しい料理と不味い料理の“差”がわかる。ですから、自分で美味しい料理が作れるのです。講師も同じです。上手な人と下手な人の“差”がわかるから上手になれます。

■難しいことをわかりやすく伝えるのが「講師」

――なるほど。ちなみに、今まで見てきた講師の中で「この人はスゴイ!」「敵わないな」と思った方はいましたか?

大谷:小泉純一郎元総理の参謀・竹中平蔵さんはうまいなって思いました。政治ってどうしても取っつきにくい。ところが、難しい政治の話を日常の出来事に例えて、私たち庶民にもわかる言葉を使って、理路整然と話されました。

――難しい話をかみ砕いて、わかりやすく説明する力が、竹中さんはすごかったんですね。

大谷:そうです。 他にも池上彰さん、コリア・レポートの辺真一(ピョン・ジンイル)さんも、わかりやすくて面白い。

――わかりやすく説明する力が講師には必要ですか?

大谷:そもそも「講師」という言葉は、難しい仏教の教えをわかりやすく人々に伝えていた僧を意味する「講師(こうじ)」が語源です。ご自分の体験から、聞き手の役に立ちそうなことを、わかりやすく伝えることがポイントになります。

■一流講師は事前のリサーチに手を抜かない!

――今まで講師をやっていて、一番の失敗は何ですか?

大谷:失敗というよりも反省がしょっちゅう。例えば、男女共同参画やキャリア形成の話をしたけれど、お客さんは子どもの受験の方が気になっていたとか。マネジメント・コーチングの話をしたけど、コミュニケーションスキルや子育ての話が聞きたかったということを懇親会で聞くと反省ですね。

――今でも反省することはありますか?

大谷:毎回ありますよ。想定していた年齢層と実際のお客さんの年齢層がずれていた、ということなら、ある程度わかります。けれど、お客さんが頭の中で考えていることまでは、なかなか察しきれません。

――人の頭の中を予想するっていうのは相当難しいですよね。

大谷:そうですね。経営者の会合などでは、参加者名簿を事前に見せてもらうことで、工場系の社長が多いのか、サービス系の社長が多いのかなどの情報を仕入れて、話す内容を変えます。また、少し早めに会場に行くことで、窓口のご担当者とのご挨拶など、会話の中で「今日はどのような人が来ますか?」と、リサーチするようにしています。

――なるほど、お客さんが本当に求めているものを知るために地道なリサーチが欠かせないというわけですね! 最後にこれまで一番印象に残ったお客さんはいらっしゃいますか?

大谷:足を引きずっている75歳のおばあちゃんですね。講演が終わった後、「無難に日々生きていけたらいいと思っていたけれど、もう一回、自分が生きている意味と使命を見つめます」と、感想を話してくれました。なんだか、こちらが元気を戴きました。

 「講演の翌日には、9割の人は話の内容を忘れますね。昨日の大谷さんは、元気だったなあ、と、思い出してもらえれば本望です(笑)」と笑う大谷さん。それでも「色々な生き方・考え方がある」「人生は縦の長さは決まっていても、横の幅は自分で決めることができる」という、自身の体験からのメッセージを、これからも伝え続けていく。

文=冴島友貴

大谷由里子(おおたに・ゆりこ)
2003年3月、「世の中を明るく元気にする」大谷氏の活動に共感した26人が一人100万円ずつ出資し、有限会社志縁塾(しえんじゅく)を設立。2005年にスタートした【講師塾】では、大谷流の「講演や研修」のノウハウを伝授している。参加者の中には、オリンピックのメダリストや元Jリーガー、教師、経営者、人事担当者、労働組合の執行部、士業、デザイナー、政治家など、その受講者は、1,400人を超える。