自分の「伝えたいこと」を書いているうちは、ファンが増えない。ビジネスの必勝法則「リトルベッツ」の極意。『SNSで夢を叶える』ゆうこす×『殺し屋のマーケティング』三浦崇典、天狼院対談レポート【後編】

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公開日:2017/12/7

 10月某日、『天狼院書店 池袋駅前店』にて、『SNSで夢を叶える』(KADOKAWA)著者のゆうこすさんと、天狼院書店の名物店主である三浦崇典さんによる特別対談イベントが行われました。「モテるために生きてる!」と断言するゆうこすのSNSマーケティングは、なぜビジネスにも活用できるのか? 小説『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)を上梓した三浦さんが、ゆうこすさんの発信の極意とビジネス発信の成功の法則に迫ります。


●Twitterはでフォロワー数を競うより、どれだけ共感できる言葉を発信できるか

三浦 フォロワーが80万人以上いるゆうこす師匠にお聞きしたいんですけど、SNSってどうしたらフォロワーが増えるんですか? 今、僕のTwitterはフォロワー数が1700人なんです。

ゆうこす その質問、よくされるんですけど、むやみにフォロワーを増やせばいいってわけじゃないと思うんです。今はフォロワーも買える時代だし、見栄をはってもしょうがなくて。エンゲージメント率が高い、愛されてるアカウントであることの方が大事なんです。フォロワーが1700人でも、全員が本を買ってくれたらすごいじゃないですか。

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三浦 確かに。Twitterの発信で気をつけた方がいいことってありますか? 

ゆうこす Twitterは短い言葉で、簡潔につぶやくように意識しています。その方が見る人にささると思うんです。それから、他の人がしないような表現にすることも意識していますね。エッジのきいた言葉にしたいので、商品のコピーとかを見て勉強したりもしています。

三浦 本当に色々考えながら発信されてるんですね。

ゆうこす フォロワーに「この本のことを広めたい」と思ってもらうには、リツイートしたくなる内容にすることも大事だと思います。「発売しました」という告知だけだと、そうは思わないですよね。リツイートしたくなるのって、「共感」したときだと思うんですよ。だから、たとえば「この本を読むとこうなりますよ」という内容にするとか。この本は装丁もオシャレなので、写真をつけてもいいと思います。

三浦 なるほど、共感か。どうやったらリツイートされるか、考えなることが大切なんですね。色々伺いましたけど、まずは朗読(前編にて対談)から取り入れようかな。


ゆうこす それ、画的にも面白くなりそう! 三浦さんのビジュアルで、ものものしい雰囲気で殺し屋について朗読するって(笑)。キャッチーだし、ニッチでもあると思います。ライブ配信は“今”を伝えたり、臨場感を伝えるにはすごくいいツールだと思います。視聴者のコメントが見られるので、コミュニケーションも取れますしね。

●発売前からストーリーを作り、応援者を増やす

 最後は、参加者からゆうこすさんへの質問コーナー。ゆうこすさんに直接質問できるチャンスとあって、大勢の方が手を挙げました。


――何か新しいことに挑戦するときは、ファンの心理をどのように考えていますか? 受け入れられるかな、と不安はありますか?

ゆうこす 私は、自分がプロデュースした商品を販売するときには、「今度こういうことやろうと思ってるんだけど、どう思う?」と先にフォロワーに聞いています。そこから、いい意見を聞けることもありますし、形になったときに、ファンも「あのときのだ」とわかってうれしいと思うんですよね。発売前からストーリーを作るようにしています。

三浦 そうか、ストーリーで考えてるんですね。

ゆうこす キングコングの西野亮廣さんの『革命のファンファーレ』にも書いてありましたけど、人は物が発売されたからといって、すぐに買うわけじゃないと思うんです。先にストーリーを作って、応援してくれる人を増やした方がいいですよね。だから、物を売るときはストーリーもあわせて売る、と考えていいと思います。

――ライブ配信をするときに気をつけていることはありますか?

ゆうこす 視聴者を不安にさせないことです。発信者が何を話そうかなと迷ったり、間があったりすると、見ている側は不安になるんですよね。それよりも、もう1時間も経っていたの? と思われるような、楽しい配信にしたいと思っています。でも私も、最初からうまくできたわけではなくて、全然話せなくて。最初の頃は、困ったときに見る用のメモを用意していました。

三浦 経験が物を言う部分もある?

ゆうこす そうですね。1年前までは、イベントでも途中で話せなくなって、無理やりトイレ休憩を入れたりしてたくらい(笑)。ライブ配信はリスクを伴うし、難しい部分もあると思います。でも、毎日続けることが大事。続けることで成長できるんですよね。

●失敗から成功に転じる極意は、「リトルベッツ」の思考法

――最近、Twitterを始めたものの、ほとんどフォロワーがいません。最初はどうしたらフォロワーが増えますか?

ゆうこす 私は、とりあえずやってみて、少しでも反応がよかったものをとにかく試していきました。フォロワーが増えないのには、何か理由があるはずなんです。半年くらいやってみて増えなかったら、分析して「この写真がダメだったかな」とか、反省を次に活かします。私、失敗は財産だと思っているんです。だから、失敗を恐れずに「今度はこういうハッシュタグのつけ方をしてみよう、こんな文章にしてみよう」と、色んな方向性を考えながら何回も挑戦してほしいです。

三浦 すごい。それ、ビジネス書にもある「リトルベッツ」の話ですね。失敗を前提として、失敗を早くやって回収しようという「小さく賭けろ」の理論を今、短く1分でまとめてくれた。ゆうこすさんは本質的なことを何個も言っています。有名なビジネス書作家の人も同じことを言うと思います。しかも、それを自分で体得していったんですよね?

ゆうこす そうですね。それはやっぱり失敗があったから。失敗からたくさん学んだと思います。

●自分の書きたいことを書いても、ファンは増えない――それが現実


――自分の文章や作品を発信するのには度胸がいると思うのですが、自分を自然に表現することができるようになったきっかけはありますか?

ゆうこす SNSで自己プロデュースを始めた当初は、私のやりたいことを応援してくれる女の子って本当に少なかったんです。でも、その一人一人の声を聞いて大事にしていたら、自分もポジティブに考えられるようになって。それが大きいですね。周りの意見を聞いて、自分の中で嚙み砕いて発信するって、すごく大事だと思うんです。自己中な発信はもったいない。

三浦 ライターの場合、そういう視点がないとプロになれないんですよね。天狼院書店では、書くことを仕事にしたい人に向けて「ライティング・ゼミ」を開催しているんですけど、そこでつまずく人が多いんです。自分の書きたいことだけを書いてしまって、読者のために書くという姿勢を取ることができない人が多い。

ゆうこす 私もSNSをやってなかったら、そういう意識はできなかったと思います。まずは発信して、人に見られる意識を持ってほしいですね。発信すると、何かしら反応が来るので。最初は何を発信すればいいかわからないと思いますけど、続けることで「見られる意識」はついてくると思います。

三浦 そこで悩んでいる人にも、『SNSで夢を叶える』はすごくオススメできると思いました。

ゆうこす 発信で失敗しても別に死ぬわけじゃないし、いずれ自分の成長につなげればいいんです。私は自分の商品を販売するときは、胸を張って出せるレベルまで持っていってから発売するんですけど、そのうえで出てきた失敗って、めちゃくちゃいいじゃないですか。「あー、こんなとこには気づかなかった」とタメになるので。失敗って大切なんだなと気づけてからは、あんまり億劫にならなくなりました。

三浦 そうですよね。失敗できてラッキー、になりますよね。それは財産になる。

ゆうこす そこまで全力でやってから、なんですけどね。適当にやって失敗したら、ただのダメなヤツなので(笑)。

三浦 いやぁ、本当に面白かった。勉強になりました。師匠、ありがとうございます。必ず『殺し屋のマーケティング』をハリウッドに持っていきます!

ゆうこす 私もこういう場でお話ししたのは初めてでしたが、温かい空気で楽しかったです。SNSって色んなことに使えますよね。SNSは無料で、誰でもすぐに使えるもの。チャンスは誰にでもあるので、ぜひ挑戦してほしいなと思います。そして、どんどん夢を叶えてほしいですね。

取材・文・写真=渡辺絵里奈

【前編はこちら】//ddnavi.com/interview/418548/a/

■プロフィール
ゆうこす(菅本裕子/すがもと・ゆうこ)

1994年5月20日生まれ。「モテるために生きてる!」、「モテクリエイター」と宣言。貪欲なまでの自己プロデュース力の高さでSNSで20代女性から熱烈な支持を集める。Instagramで紹介した商品が完売するなどカリスマ的人気を誇り、YouTube「ゆうこすモテちゃんねる」も話題。タレント、モデルとしても活躍。Instagram、Twitter、LINE@、YouTubeなどのSNSのフォロワー76 万人。SNSを駆使した自己プロデュースで、ファンを広げ続けている。

三浦崇典(みうら・たかのり)
天狼院書店店主。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。編集者・プロカメラマン。大正大学表現学部非常勤講師。1977年宮城県生まれ。小説賞に挑戦しながら、アルバイトをしていた書店で新店舗の店長を打診され、3年間、店長を務める。手書きPOPでの集中一点売りなどの特徴的な手法が、讀賣新聞をはじめ、様々なメディアで取り上げられ、文芸書の売上増大の成果をあげる。2009年、株式会社東京プライズエージェンシーを設立、2013年に天狼院書店の1店舗目となる「東京天狼院」を南池袋にオープン。開店して3ヶ月で倒産の危機に陥り、以後、現在まで9回、倒産の危機に見舞われるが、その都度、新しいマーケティング手法を駆使して窮地を切り抜ける。