残高3万円でも「好きなことで幸せになる」には気にしない!? ヨッピー×夏生さえりの“他力本願”処世術【前編】

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更新日:2017/12/7

(左)ヨッピーさん(右)夏生さえりさん

 『明日クビになっても大丈夫!』(幻冬舎)を9月に上梓した人気WEBライターのヨッピーさん。『今日は、自分を甘やかす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)や『口説き文句は決めている』(クラーケン)の著者で同じく人気WEBライターの夏生さえりさん。今日の活躍の前に苦悩のサラリーマン時代を経験されたお2人に、前編では、好きなことを仕事にする方法について聞いてみました。

■ダメならサラリーマンに戻ればいいや、でWEBライターになった2人

――2人とも企業勤めのご経験がありますが、サラリーマン生活はどうでしたか?

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ヨッピーさん(以下、ヨッピー):僕は商社で7年間サラリーマンをやっていたんですが、まあ、楽しくはなかったですね……!本にも書いたんですけど。でも基本的にサラリーマンってそんなもんじゃないですか。上司の顔色を見ながら働きつつ、飲みの席で愚痴を言って、月末の事務作業にへきえきする、みたいな。クリエイティブな仕事をしている人だとピンとこないかもしれないですが、基本的にサラリーマンの仕事って、そこまで特別な事を求められませんし、自分以外の誰かでも出来る仕事をひたすら毎日続けるっていう。

夏生さえりさん(以下、夏生):新卒で入った会社は出版社で、次はWEBの制作会社に入りました。一社目では編集のお仕事をさせてもらっていましたが、会社の体制は古いほうだったと思いますね。15人くらいしかいない会社で、新しい意見をどんどん言ってねと言っていただきましたが、結局は別の人に「新しいことをやるには、10~20年待ってくれ」と言われちゃって。すごくお世話にはなりましたが、私は待てない性格だったので……。

ヨッピー:あるある、出る杭は打たれるってヤツだ! 僕もね、新入社員の頃に「お前らが多少ヘマしたところで会社が潰れたりしないから、どんどん好きなようにやれ!」って先輩に言われて、それで海外から届いた商品サンプルを組み立てる仕事を頼まれたときに、「説明書英語だし、なんかよくわかんないけど、まあ好きにやってみるか!」って好きなように組み立てたら思いっきりぶっ壊れて「お前、これ世界にひとつしかない商品サンプルやぞ! どうするつもりや!」って目の玉が飛び出るかと思うくらい怒られましたからね。詐欺ですよ! 詐欺! でも、そんな感じの事って往々にしてあるし、「好きにやる」なんてサラリーマン社会じゃ全然出来ないじゃないですか実際のところ。

――サラリーマンからWEBライターになろうと思ったきっかけは?

ヨッピー:いや、本当に行き当たりばったりですかね。「ライターになろう!」なんて全然思ってなかったです。「次、どこに転職しようかなー」とか思って面接受けたりしてたくらいですし。サイバーエージェントには書類選考で落とされたので今でも恨んでます!
ライターになる流れは本にも書いたんですが、大学生ぐらいから趣味でやっていたブログがきっかけ誘われたWEBサイト「オモコロ」で、サラリーマンをしながらもライターっぽい仕事はしてはいたので、その流れでぽつぽつ他の媒体からもライターの仕事を貰うようになって。無職だし、暇だし、「いいっすよ。書くっすよ」くらいにホイホイ受けている内に「あれ? なんかライターの仕事だけでも生活できそうだぞ?」って思って今に至る、って感じですかね。

夏生:私も同じで、全然フリーのWEBライターになるなんて思ってなかったです。前職の時に副業としてライターも頑張っていて、流れるように独立していて。もしフリーランスで食べられなくなったらサラリーマンに戻ろうと柔軟に捉えていたので独立に踏み切れて、なんとか今でもやっていられるという感じです。実際やってみたら、自分に合わせた仕事リズムを作れますし、嫌な仕事を無理に引き受ける必要もないのでストレスなく頑張れていますね。

ヨッピー:僕もふざけるだけでお金がもらえるような境遇になるとは思ってもいませんでした。「え!? 銭湯行ってお風呂入ってはしゃいで記事書くだけでお金貰えるの!? ラッキー!」みたいな。

■あってもなくても大変なWEBライターのお金事情

――会社を辞めた後の不安などで今一歩踏み出せないサラリーマンの方も多いかと思います。そういった不安が消えた瞬間やフリーランスでいけると思ったきっかけなどはありますか?

ヨッピー:企業タイアップの「記事広告」の仕事に巡り会えたのは大きかったと思いますね。「儲かりそうな椅子の探し方」というタイトルで本の中でも紹介しているんですが、依頼を受けて行った現場が、恐らくはウン百万円という予算をかけてひとつのコンテンツを作ってるような現場で。こんなに潤沢に予算がある企画ならライターにもまあまあお金くれるんじゃないかっていう小ズルい打算も働きましてね。椅子取りゲームにたとえるなら、「記事広告が得意なライター」っていう椅子がどうも儲かりそうだし、予算もあるなら派手な事とかくだらない事にもお金使えるぞ、みたいに思いまして。それでその椅子に真っ先に座ることを目指して走ってきたっていう。

夏生:さすがですよね。私はまだそんないけるなんて思えてもいなくて…。

ヨッピー:ちょっと! それはさすがに嘘でしょうよ! 売れてるくせに!

夏生:いや、本当に全然ですよ。会社員時代よりは生活は楽になりましたが、まだまだ頑張りたいくらいですね。

ヨッピー:マジで! ちなみに僕、イベントやったり変な企画に自腹でお金突っ込んだりしまくったせいで、今すぐに使える預金残高は3万円です。いやほんとに。

――すごく稼いでいらっしゃるのに、なんでお金がないんですか?

ヨッピー:こういうことを言うとインターネットで叩かれたりするんですが、僕本当に、そんなにお金欲しいとは思ってないんですよ。いや、もちろんお金は欲しいですよ。くれるなら「ワーイ! 最高!」って言いながら貰いますけど、でも欲求としてはそんなに強くないんですよね。物欲もないし、食べ物にこだわりもないし、服装も適当だし、必要最低限のものが買えればそれで良いんですよ。でも、「お金が欲しいわけじゃない」みたいな事を言うと「綺麗ごと言うな!」って言われるし、「お金欲しい!」って言うと「銭ゲバか!」って言われる。「どうしたらええんや……!」って。肩書も同じで、サラリーマン辞めてすぐくらいに「無職です」とか書いてたんですけど、「お前はお金もらって記事書いてるんだから無職じゃないだろ」って怒られて、それで今度は「ライター」を名乗りはじめるんですけど、「底辺ライターです」って書くと「お前まあまあ売れてるから底辺じゃないだろ。嫌味か」って叩かれて、「売れっ子です」って書くと「自分で言うな!」って言われる。どうしたら良いんですか本当に!

夏生:大変(笑)。

ヨッピー:「ヨッピーのギャラは高いらしいぞ」みたいな事をネットに書かれる一方で、「この案件はずっとやりたかったやつだからお金いらない」みたいなことを書くと「あなたが安売りしたら他の人のギャラも下がるから他の人が可哀想だ」って言われてしまう。もうどうしたらいいんだよって僕もノイローゼ気味だった時期ある。

夏生:それ、どうすることにしたんですか?

ヨッピー:稼いだお金を変なことに使って言い訳できるようにしておこう、っていう結論に至ったんですよ。稼ぐ時はちゃんと稼がないと、確かに相場を下げちゃうから良くない。かといって稼いだお金で自分のために豪遊してたらただのイヤな奴じゃないですか。だから、予算が足りない時に自腹切りまくったり、イベントで参加者に500円ずつあげたり、セミナーでお邪魔した大学の学生なんかに何十万っていう単位でおごったり。そのときは「君たちが社会人になってえらくなったら僕に仕事ちょうだいね」言ってるけど(笑)。

夏生:うまいですね(笑)。

ヨッピー:ただ、学生相手はいいにしても、社会人の後輩にまで飲み代をタカられるのは何とかして欲しいわホンマに……。夏生さんもおごってって言われない!?

夏生:私は言われないですよ。実際そんなに稼いでいるわけでもないですから!

■フォロワーに生かされている他力本願ライター

――お2人ともお金の面でいろいろ考えられているんですね。お金の面以外で、仕事についてこだわりはありますか?

ヨッピー:やりたいと思ったことを純粋にやることに注力しています。予算が合わないなんて言われたら、身銭切ってでも「絶対ウケるからやらせてほしい」って言うこともあるぐらい。あとは、“自分にとっての「神様」は誰なのか問題”と本でも紹介しているとおりで、読んでくださる読者の方が一番えらいんです。だから読者様に喜んでもらうことをを一番に考えてここまできました。

夏生:私も一緒で、読者に加えて、フォロワーさんを大事にしていると言ってもいいと思います。私のTwitterのフォロワーさんって「6割が22歳まで」かつ「女の子が7割ぐらい」で構成されているんです。私が記事を書いたあと一番に届ける読者はそこの層なので、もちろん企画にはよりますが、彼女たちに刺さるかどうかは意識しますねエンジニア向けの記事などは私がやっても意味なかったりしますので。ライターは読み手がいて初めて成り立つものなので、優先順位をつけやすいのはありますね。

ヨッピー:たしかに、フォロワーがいればなんとかなると言い切っちゃってもいいかもしれないですね。無職の人でもフォロワーが3万人いたら生活くらいは絶対なんとかなっちゃいますよ。あと、僕は“他力本願ライター”を自称してて、「今度、この人に取材するんだけど、何聞けばいいと思う?」とかTwitterでつぶやいて質問内容を募集したりしますね。質問内容考えるのもライター仕事なのに、それを丸投げするっていう。最高!

夏生:それ、私も一緒です。取材先などを探すのにSNSを使って助けてもらったり、意見を聞いたり。もし仕事がなくなったら「仕事ください」とツイートしようと思っています。そういう意味では、私も“他力本願ライター”ですね(笑)。「インターネットって最高だな!!」っていつも思ってます。

ヨッピー:そう! インターネットは完全に最高!

取材・文=田中利知