“働きたくない人”にも求められる「21世紀的働き方」とは?

ビジネス

2018/2/20

「働き方改革」により、制度や環境刷新に取り組む職場は増えている。でも、その効果を実感している企業って、どれくらいあるのだろう?
 むしろ制度ばかり先走りして、「時短になったところで業務量は変わらない」「家じゃ仕事に集中できない」なんていう社員の不満がたまっている方が多いのではないだろうか。
 そこで今回は『儲かるオフィス』の著書をはじめ、働き方や働く空間の課題点について研究してきた多摩大学大学院教授・紺野登先生に、「どうして働き方改革はうまくいかないのか?」「仕事場の将来像はどうなる?」という質問をストレートに投げかけてみた。

■働き方改革がうまくいかないのは当然。古い働き方のままだから

――「働き方改革」として、テレワークやフリーアドレス、在宅勤務制度などを導入している企業は増えています。でもそれが効果的に利用されているのかというと、疑問が残りますね?

紺野登(以下、紺野):そうですね。そもそも「働き方改革」の話をする前に、「働き方」についての認識を見直さなければいけない段階だと思っています。端的に言ってしまえば、古い「20世紀的働き方」のまま、制度ばかりを導入したところでうまく活用できることはないでしょう。

――20世紀的働き方、ですか。

紺野: 20世紀的な働き方というのは、高度経済成長にピークを迎えた大量生産・大量消費の時代の働き方のことです。ひとつの仕事に対してみんなでワーっと集まって分業して働く。それぞれ自分たちに割り振られた仕事をこなすと、それが会社の利益へとつながっていく。そして全体の利益が給料となって戻ってくる。20世紀にはこの循環ができていました。しかし、今はもうその働き方では企業は儲からない。つまり、社員が一生懸命働いても会社の成長につながらないんです。そこで、新しい「21世紀的働き方」が求められます。

――新しい21世紀的働き方はどういったものですか?

紺野: 21世紀は、利益のために“分業”で働くのではなく、個人が主体的に誰かとつながって仕事をしていく時代です。たとえば、社会の問題を解決するとか、環境問題に取り組むとか、「意味のあることをしたい」という欲求が強くなっていますよね? かつては食べるためにハングリー精神で働いてきましたが、今21世紀の人たちは、昔と同じ意味での貧乏ではない。食べるものは最低限足りているから、むしろ「働く意味」に関心が移る。加えて、パソコンさえあれば家でも仕事ができるので、わざわざ毎日オフィスに通って仕事をする必要性もなくなってくるわけです。

今回お話をうかがった紺野登先生

――なるほど、働くことの意味合いが大きく変わってきているんですね。

紺野: だから、20世紀的働き方をベースに働き方改革をしても、社員が困惑するんです。たとえば、「時短勤務」を推進している企業が多くあります。でも「時間を効率よく使う」という観点が、20世紀的ですよね。分業を主体としていた時から、考え方が変わっていない。
 また、フリーアドレスを「営業など外出が多い人のデスクを減らす」ために導入する風潮がありますが、それも結局、効率化だけを謳うなら、20世紀的働き方から抜け出ていないのではと思います。
 フリーアドレス制をうまく活用している例としては、カルビー株式会社があります。同社では、出社した社員がダーツで座席を決めるんです。これには、定型的な仕事をやらせないようにする、という意図があります。同じオフィスにいても、日々違う席で違う人と接することで、新たな側面が引き出される。こうやって交流の度合いを増すためのフリーアドレスであれば意味があるでしょうね。21世紀的仕事は、まだ見えていない新しい問題を発見して、それを解決することに変わっていきます。

■今の働き方が「歴史博物館」に展示されるような未来がやってくる?

――働き方改革の前に、「21世紀的働き方」を理解することが大切なんですね。

紺野: やはり企業も社員も、「個人が主体的に動く」ことを意識することが重要になるのではないでしょうか。たとえば、副業の許可の問題もそうですよね。社員が主体的に外とつながっていけるように、人材や能力を生かしていくことが企業の成長につながるはずです。
 自分らしい働き方をしたいという社員をサポートできる企業が、結果的には伸びるとも考えられます。
 逆に、20世紀的働き方というのは、社員の能力を抑制しているかもしれないわけです。

――今後は社員がもっと主体的に動いていくことが必要なんですね? 難しそうですが…。

紺野: 人がひとつの会社でずっと働き続けるということに無理が出てきていますよね。企業が必ず定年まで面倒を見てくれるわけでもない。アメリカの雑誌『アトランティック(The Atlantic)』では、サラリーマン時代の終わりが皮肉的に描かれていました。【外部リンク(英語):The Atlantic】

 この記事では固定電話やホッチキス、さらにはサラリーマンという職種もすべて歴史博物館入りしてしまったという未来を、皮肉っぽく、でもとても的確に描いています。

 すでに今GoogleやFacebookなどの先端企業で、20世紀的な分業の仕事をするサラリーマンなんていないでしょう。今自分がしている仕事が、いずれ考古博物館で展示されるような旧時代のものになってしまうかもしれないという危機感が必要ですね。

――具体的には、どのような方向を目指して改革していくべきなんでしょうか?

紺野: まず副業を認めることには重要な意味があります。それによって個人の可能性が大きく広がります。2枚目の名刺をもち、自分の役割をマルチにもつ、ということがポイントです。新しいことを学んだりネットワークを作ったりしながら生きていくのが、21世紀における良い生き方と言ってもいいかもしれません。黙々と会社のために働いて報酬を得るのが良い生き方だったのは、20世紀の話です。

――21世紀は「つながる」ということがポイントになってくるんですね。

紺野: 今はイノベーションやコラボレーションなど、外とつながることが仕事になる時代です。最近、三井不動産は「ワークスタイリング」という新しいビジネスを始めました。企業が契約すると、複数の拠点オフィスを仕事場として利用できるシステムです。社員は自宅や営業先と近い拠点を活用していいし、他社の社員と並んで仕事をすることにもなります。これは働き方改革のひとつですね。