問題はインプット過剰。うまい人はやっている「究極のアウトプット術」 HONZ代表・成毛眞さんインタビュー

ビジネス

2018/4/27

 元日本マイクロソフト社長で、『本は10冊同時に読め!』『大人はもっと遊びなさい』『発達障害は最強の武器である』など、挑発的なビジネス実用書を執筆している成毛眞さん。4月9日に発売された新刊『インプットした情報を「お金」に変える 黄金のアウトプット術』(成毛眞/ポプラ社)は、人気書評サイト「HONZ」の代表でもある成毛さんが、アウトプットの重要性について説いた一冊だ。なぜビジネスパーソンにアウトプットが必須なのか。著者の成毛さんにインタビューした。

■あなたのアウトプット、足りてますか?

――アウトプット術について書かれたわけは?

成毛眞氏(以下、成毛) 現代の日本人は明らかにインプット過剰です。10年前と比べても、触れている情報量は何倍にもなっている。大谷翔平の打率から芸能人の不倫まで、みんななんでもよく知っているでしょ(笑)。スマホを眺めているだけでも、相当な情報が入りこんできます。でもそれをアウトプットして、お金に繋げている人はほんの一握り。僕の実感では全体の0.1%にも満たない。このままじゃまずいよ、と読者に危機感をもってもらいたかったんです。

――特にまずいのは30代後半以上の世代、とお書きですよね。

成毛 真面目にインプットすることが正しいと教えこまれた世代ですね。10代、20代はアクティブラーニング世代だし、自分を表現することがまだうまくなっている。ユーチューバーとして活躍している人たちも、スポーツや文化で国際的な成績を挙げているのもこの世代。彼らが本格的に社会に出てきたら、30代以上は居場所がなくなっちゃいますよ。プレゼンでも企画力でも全然敵わないと思う。手遅れになる前に目を覚まして、訓練を開始してほしいですね。

――今だとツイッターやフェイスブックで情報発信している大人も多いのでは。

成毛 確かにそうです。でも流れてきた情報に「いいね!」を押すのはアウトプットとは呼べません。それは単なるリアクション。周囲を巻きこみ、行動を起こさせるような情報がアウトプット。それを継続的におこなうことで人脈が広がり、チャンスが舞い込み、お金に繋がっていく。たとえば僕がやっている「HONZ」のレビュアーも、ネット上のうまい書き手をスカウトしているんです。いくら読書量や文章力があっても、アウトプットしなければ社会に存在しないのと同じなんです。

――まず何をするべきでしょうか?

成毛 もっとも手軽なのはネットで文章を書くこと。書くのは「800字の紹介文」がいいと思います。本でも映画でも面白いと思ったものの内容を、自分の視点をまじえて紹介する。これがスムーズに書ければ、他の文章も書けるようになるはず。800字を長いと感じるなら、100字のブロックに分ければいい。100字といえばツイッターの投稿よりも短い。それを8つ並べれば800字になります。詳しいノウハウは本に書いてあるので、参考にしてください。

――ほかに文章上達のコツはありますか。

成毛 必ずオープンな場で書くことです。文章はフィードバックがあって初めて上達するもの。人目に触れるところで書き、反応がよかった点を伸ばしていくのがいいんじゃないですか。刺さる文章が書きたいなら、特定の誰かを思い浮かべるといい。僕はいつも自分の娘を思い浮かべながら書いています。彼女が面白いといった本はたいていヒットするし、反応が悪い本はやはり売れない(笑)。従来のマーケティング的なやり方では、もう対応できない時代になっていると思う。

■起業こそ究極のアウトプットだ!

――本の後半では「プレゼンは弁当だ」「新しくて安い服は、高くて古い服に勝る」「ビジュアルで自分にタグをつける」などなど、話し方、見た目にまつわるアウトプット術も公開されています。

成毛 話し方はもちろん、見た目だって重要なアウトプットです。マイクロソフトに勤めていた頃、決算報告会のステージでCFO(最高財務責任者)が人間大砲に入って撃ち出される、というパフォーマンスをしたことがありました。もちろん会場は大ウケ。決算にほとんど興味がないエンジニアたちも、その年は最後まで真剣に聞いていた(笑)。日本人にありがちな中身がよければ伝わるんだという考え方は、今すぐ捨てた方がいいですね。

――「やっぱり本は10冊同時に読め!」ともあります。インプットも大切?

成毛 量は十分に足りているんです。でもその情報をどう組み合わせるかという工夫が欠けている。本を10冊同時に読めというのはそういうこと。世界でその10冊を同時に読んでいる人はあなたしかいない。その情報をピックアップして、編集することでどこにもない新しさが生まれる。この先、人間がやっているリアクション的な作業はどんどんAIに奪われていきます。仕事をし続けたいなら、あなた独自のアウトプットをするしかないでしょう。

――この本はどんな人に向けて書きましたか?

成毛 このまま今の会社にいていいのか悩んでいる30代、40代ですね。アウトプットでお金を生みたいなら、会社をやめて起業するのが一番。起業こそがもっともリターンの大きい、「究極のアウトプット」だと思いますよ。起業して成功している人たちは、みんなアウトプットに長けているんです。そのときになって慌てずに済むように、訓練しておいて損はないでしょう。もちろん何歳になろうともアウトプットは一生ついてまわります。情報をただ消費するだけの「大衆」を脱して、人に影響を与える側になってほしいですね。

取材・文=朝宮運河 写真=岡村大輔