2018年、最注目の若手声優が登場! 悩みながらも前進を続け、その先に見据える「未来」とは――楠木ともりインタビュー(後編)

アニメ・マンガ

2018/5/9

TVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』TOKYO MXほかにて放送中 (C)2017 時雨沢恵一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/GGP Project
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 現在放送中のTVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』(以下『GGO』)で、主人公のレン/小比類巻香蓮を演じる、声優の楠木ともり。4月6日に配信したインタビュー前編に続いて、事実上の二役を演じる『GGO』のエピソードや、5月9日にリリースされるエンディング主題歌『To See The Future』のこと、そして自身のパーソナリティについて語った後編をお届けする。「頑固なところはあると思います。基本、自分の軸は曲げない」と語る彼女が、表現と向き合う上で大切にしていること、絶対に譲れないと心に決めていることとは何か。2018年、さまざまな作品を駆け抜け、アニメの世界に確かな足跡を残そうとしている期待の若手声優、楠木ともりの現在に迫ってみる。

窮地に立たされたとき、すっごくイライラしたり、怒りを感じたときのほうが力を発揮できる

――前編に続いて、『GGO』のお話から聞いていきたいと思います。2話からは、レンとともに現実世界の香蓮の役を演じていますよね。ものすごく緊張した1話を経て、事実上二役を演じることになる2話のときは、どのような気持ちで現場に臨んだのでしょうか。

楠木:1話のときほど不安な感じはあまりなくて、赤﨑(千夏・フカ次郎役)さんや日笠(陽子・ピトフーイ役)さんもいらっしゃったので、安心感がありました。ただ、2話はレンちゃんになって、香蓮になって、レンちゃんになって、みたいな感じで、演じ分けがすごく難しくて。止めずに切り替えながらレンちゃんをやって、香蓮ちゃんをやって、という録り方なので、そこが難しかったです。ただ声が変わるだけではなく、ふたりの性格は真反対な感じなので、自分の気持ちも区切りをつけていかないと、なかなかセリフに反映できなくて。そういった意味での緊張感はあったかもしれないです。

――気持ちに区切りをつけていくこと自体、全然簡単なことじゃないですよね。

楠木:そうですね。難しかったです……。

――同じことを要求されて、その通りにできる人って、そんなに多くないのでは?

楠木:わたし、小さい頃はひとり遊びがすごく好きで。幼稚園の頃とか。姉がいるんですけど、年が5歳離れてるので、一緒に遊ぶこともあまりなくて。ひとりで人形を何個も出して、ずっとやってたんですよ。わたしには演技の経験がないんですけど、原点はそこなんだろうな、と思っていて。以前、他の作品でもひとり二役をやったことがあって、すごく大変だったんですけど、楽しんでいる自分もいたので、ひとり遊びの名残が残ってるのかな(笑)。レンちゃんと香蓮ちゃんを同時に演じるのも大変ではあるし、難しくてなかなかうまくいかないこともあるけど、演じ分けはすごく楽しいです。

――自分の中で蓄積されるものが生まれるくらい、ひとり遊びをやっていた、と。

楠木:そうですね、物心ついたときには始めてました。いつまでやってたんだろう――あっ、友達がいなかったからじゃなくて、ただひとり遊びが好きだったんです(笑)。

――(笑)今でもひとりでいる時間は好き?

楠木:好きです。友達といる時間も好きなんですけど、ひとりでいる時間もほしいって感じちゃうタイプですね。けっこう、自問自答の時間が多くて。寝る前とか、お風呂に入ってるときとか。それこそアフレコの反省を長時間にわたって頭の中で無意識にしてるときがあります。自分だけの時間がほしいし、それがないと落ち着かないというか、整理がきかなくなっちゃうというか。悩みができたとして、ひとりになる時間がないと、なんで悩んでるのかもわからなくなって、ただもやもやしてきちゃうんです。自分が何に悩んでいて、どうすればそれが解消されるのかを考える時間がほしいですね。

――最初に人に相談するのではなく、見つけられるなら自分で答えを見つけたい?

楠木:そうですね。そのほうが自分自身も納得できるので、一回自分の中に落としたいです。

――頑固さがすごい(笑)。

楠木:(笑)確かに、頑固なところはあると思います。基本、自分の軸は曲げないですし、他人は他人、自分は自分、みたいなところもけっこうあると思いますね。

――こうでありたい、こうでありたくないっていう像がはっきりしてる?

楠木:はい。けっこう明確にあると思います。

――どうありたいんですか。

楠木:声優のお仕事をするにあたって、常に明確に目標を決めておきたいです。やりたいことをぼーっとやり続けるだけの時間はイヤなので、「こうなるためにこうしたい、それをするためにこうして~」みたいな目標を自分の中に置いて、それを一個一個解消していく感じです。ずっと、そうしていきたいですね。

――なんとなくはイヤだ、と。

楠木:そうですね。なんとなく過ごしていると、もしいいことがあったときに心底喜べない気がします。「たまたまそうなった」みたいな感じが強くなりそうな気がしていて。何かを成し遂げた理由がほしいというよりは、成し遂げるための段階で何かしらを得たいですね。何も得ずして何かを叶えるより、いろいろ吸収できるなら失敗しても「いろいろ吸収できたからいいか」って思えるし、叶ったら叶ったで「よかった」って思えるかな、と思います。たぶん、自分で考えてやりたいタイプなんだと思います。もちろん、家族にも相談したりはするんですけど、ほんとに行き詰まったときだけですね。

――なんでそういう人になったんでしょうね。

楠木:えー、なんででしょう? 前回お話したように、中学のときにいじめられてたことがあったんですけど、やっぱりその時期は他の人をあまり信じられなくなって――今は全然大丈夫なんですけど。たぶんそのときに、「自分で何とかしよう」っていう習慣がついたんだと思います。どうしたら自分を守れるかを考えたときに、当時は自分の中に閉じこもるしかなかったので、そこからですね。

――そういうネガティブな事態に直面したときに、一番最初に出てくる感情ってなんですか。怒りなのか、悔しいのか、悲しいのか。もちろん、楽しくはないとは思うんだけど。

楠木:まず最初は悲しい、ですね。悲しさが最初に来るんですけど、基本的には、そういう状態になったときの解決方法として怒りに持っていく癖があります。

――たぶんそうなんだろうな、と思って聞きました(笑)。

楠木:(笑)最初は悲しむんですけど、そこから怒りに変えて、ポジティブな方向に持っていって、最終的には気にしない。いつもそういう段取りです(笑)。仕事でうまくいかなかったときも、最初は悲しみがあるんですけど、そこから「なんで自分はこれができないんだ」っていう怒りに変わった後に、「どうにかしてやる」みたいな方向に持っていって、「よし、頑張ろう!」ってなりますね。

――なるほど。話を聞いてると、反発を力にする人だなっていう印象がありますね。

楠木:そうですね。変に「頑張ろう」って言われるより、窮地に立たされたときとか、すっごくイライラしたり、怒りを感じたときのほうが力を発揮できる人間なのかなっていう自覚はあります(笑)。

――だから他人に相談しないんじゃないですか。ただ怒りをアウトプットされても、まわりの人もいい気分はしない。そうではなくて、悲しみや怒りはいったん自分の中で消化するっていう。

楠木:確かに! 怒りを外に出さないようにする配慮なのかもしれないです。

――意地もあるし、頑固でもあるけど、それも他者のことを考えて行動した結果なんでしょう?

楠木:初めて言われました(笑)。いつも、「悲しみから怒りに変えて発散する、消化するタイプなんだよね」みたいなことを言うと、「ただの変人じゃん」って言われるので(笑)。でも、そう言っていただけると、今までそうしてきてよかったなって思います。

――自分の中にネガティブな感情が発生するのは誰しも避けられないじゃないですか。でも、それをちゃんと自分の力に変えてるんだなっていうことなんでしょうね。普通、ただ怒るだけでは、前向きに頑張ろうっていう思考には至れないし、次にもつながらない。でも、それを自然とやってるというか。

楠木:奥底では、時間を無駄にしたくないっていう考えがすごく強いんです。だから、ただ怒ってる時間は無駄に感じるし、怒るんだったら何かにつながる怒り方をしようと思うし。なんか理屈っぽくなっちゃうんですけど、無駄にしたくない、という意識は強いと思います。

――とはいえ、自分の中で発生した怒りや悲しみは無視できないんですよね。

楠木:そうですね、無視はできないタイプなんだと思います。寝て忘れられるような性格ではないです。何日も、何週間も、同じことについて考えていることが多いですね。

――なかなか難儀な話ですねえ。

楠木:ふふふ。結局、どっちがいいかというと自分に合ってるほうですしね。何かを残した状態で次に行きたくない、ということなんだと思います。

今だからこそ見られる未来を、すべて見つめていきたい

――『GGO』のアフレコの中で、どんなことを習得していきたいですか。

楠木:やっぱりひとり二役をやる作品なので、そこの差はしっかり出していきたいなと思うけど、といってまったく別の人間になってしまうのもどうかな、と思ってるので、ふたりの中で共通する部分もありつつ、観てる方に伝わるような差を出していきたいと思ってます。あとは、以前やっていた作品ではけっこう臆病な子を担当していて、レンちゃんとは真逆というか、どちらかというと香蓮寄りなところがあったので、ここで自分の新たな道として、思い切りのある演技、いろんな演技をちゃんとやっていきたいと思っています。わたしは演技を習ったことがなくて、基礎がないので、演技における正解もわからないし、フィーリングでやってしまっているところもあるんですけど、せっかく現場には大先輩がたくさんいらっしゃるので、常にアンテナを立てて、いろいろ吸収していきたいです。

――現場に立って収録してみると、思うようにいかないところもあったりしますよね。

楠木:そういうところだらけです。自分の中では「こうしたい」と思ってるし、頭の中で声も流れてきてはいるんですけど、それが自分でアウトプットできなくて。頭で思いついたことに、ちゃんと追いつけるようになりたいですね。台本を読んでいるときに、頭で再生できるようにはしてるんです。ただ、まだそこから演技に移せないんですね。

――それはたぶん、これからですよ。そして、「なんでできないんだ!」って自分に怒る(笑)。

楠木:怒る、こもる(笑)。

――そこからポジティブに変換して、次に向かう。

楠木:そうですね、その繰り返しだと思います。

――『GGO』では、レン(楠木ともり)としてエンディング主題歌『To see the future』もリリースするわけですが、音楽の活動をすることについて、どう考えていますか。

楠木:オーディションを受けたときって、もちろん声優にはなりたかったんですけど、未経験なので無理かな、とも思っていて、歌手希望でオーディションに応募してたんです。だから、音楽の活動に前向きな気持ちというか、やってみたい気持ちが非常に強くて、「みんなの心にあかりを灯す」という部分でも、自分はアニメだけじゃなく音楽に灯してもらうことも多いので、演技と同じようにしっかり取り組んでいけたらいいな、と思ってます。音楽は、寄り添ってくれる歌詞が好きです。「頑張れ、ファイト!」みたいな歌詞よりは、「こういうつらいこと、あるよね」みたいな感じで、一緒になって共感してくれる曲が好きなので、好きで聴いている曲を伝えたりすると、「暗い曲多いね」って言われることがよくあります(笑)。

――(笑)たとえば?

楠木:ハルカトミユキさん。けっこう、怒りの歌詞が多いですよね。あとは、さユりさんとか。

――なるほど。酸素が足りない感じで。

楠木:そう(笑)。そういう感じが好きなんです。「頑張れ」って言われると、遠ざけられている感じ、「わたしはそこまでいけないんです」みたいな感じがしちゃうので、一緒に沈んでくれる曲、一緒に怒ってくれる曲が好きです。

――“To see the future”を聴いて、「なんて堂々としているんだろう」と感じたんですよね。聴いている人に何かを与える歌声だな、とも思ったんですけど、レコーディングを振り返ってみて、自分自身の歌にどんな手応えを感じているんでしょうか。

楠木:歌詞がほんとに素敵なので、そこはしっかり伝えたいと思っていて。ディレクションもたくさんいただいたんですけど、それを全部酌み取りたいな、と思ってましたし、そういう意味では、かなりベストを尽くせたかな、今の自分にできることは出し切れたかな、と思います。

――タイトルにもあるけど、「未来」はこの曲のキーワードになってますよね。この「未来」という言葉、どんなことをイメージしながら歌ってますか?

楠木:たぶん、未来っていうと、明るいことを想像する人が多いと思うんですけど、わたし的には明るい部分も想像しつつ、つらいことがあることも、今のうちにしっかり自覚しておきたくて……。

――ははは。

楠木:ふふふ。つらいこともあるし、楽しいこともあるけど、それも全部踏まえて一緒に頑張ろうね、みたいな。「未来=明るいもの」っていうイメージはないんですけど、今だからこそ見られる未来を、すべて見つめていきたいな、と思います。それも歌に入れられるようにしたいと思って歌いました。

――そして歌詞の中で特にキモになるのが、《なりたい自分も/なれない自分も/必要とされるなら/力になる/生きてゆける》というフレーズかな、と思ったんですけども。

楠木:うんうん。そうですね、そこの部分はわたしもすごく好きです。

――今回のインタビューで話してくれたことのすべてが、この歌詞に集約されてる感じがしますね。

楠木:そうなんですよね。この歌詞は、すごく共感できます。そこの部分の歌詞は、自分にとってマイナスなこともすべて受け止めた上で、全部まとめて明るい方向に持っていけるような歌詞だと思うんです。冒頭は自分の負の部分を見つめていて、暗い部分も多いけど、サビの明るい部分に持っていくために変わっていく段階が歌詞で描かれているので、すごく好きですね。

取材・文=清水大輔 撮影=GENKI(IIZUMI OFFICE)
ヘアメイク=佐々木美香