江戸時代のコメ相場の情報戦から日本酒造りまで! 今ホットな話題は? ホリエモン×成毛眞対談【後編】

ビジネス

2018/6/16

【前編】 堀江貴文「遊び暮らしても食べていける」成毛眞「すべては“逆張り”が基本」 ホリエモン×成毛眞対談

――最近、お二人が面白いと思っていることは何でしょうか。

堀江 最近、ファンドマネージャーの藤野英人さんと対談していて、その内容を経済歴史マンガとしてどんどんデジタル出版していく予定なんです。そのなかでも今一番ホットなテーマは、世界ではじめて先物取引した大坂堂島のコメ相場ができるまでの話と、その後、米相場の情報戦をめぐる商人と幕府の知恵比べですね。藤野英人さんは、『ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義』という著書で未来の経済の法則を読み解いている人で、そういう話にものすごく詳しいんです。

成毛 へえ、そうなんだ。

堀江 世界が貨幣経済に移行することになったきっかけは、羅針盤や時計を使った航海技術の発達なんですよね。それによって遠洋漁業が広がってグローバル経済になったときに、小麦や米のような重いものをやりとりするより貨幣を使うことが求められた。一方で、日本は戦国時代までは石見銀山で銀が大量に採れたので、銀で有利な貿易をしていたわけです。でもコロンブスがアメリカ大陸を発見して、ペルーに世界最大の銀山を見つけてから、銀の価値が暴落したので、銀を守るために鎖国せざるをえなかった。もちろんキリスト教の布教を防ぐ目的もあったんでしょうけど、経済的側面が大きかったんですよね。

成毛 うんうん。

堀江 米本位制から貨幣経済になって、何が困ったかというと、武士が一番困ったんです。米が豊作になると価格が暴落するので、経済的に困窮した武士が借金して首が回らなくなるんですね。そうすると、金貸しが借金を相殺するかわりに他の武士の借金を取り立てさせたので、斬り合いをする武士が爆発的に増えた。それで幕府が、これは大変だと、米の価格を平準化するために堂島に米取引所を開設したわけです。で、ここからが面白くて……。

成毛 え、今までは前段だったんだ? 今日この話、終わる?(笑)

堀江 はい。そのあと、裁定取引が出てくるんですよ。米相場の価格をいち早く得た者が、より有利な裁定取引ができるようになった。同時に、商人と幕府の情報戦がはじまるわけです。最初、幕府公認の米価格を伝えるのは飛脚だったんですけど、商人たちは頭がいいので、それを出し抜くために狼煙を使うんです。でも狼煙も天候に左右されるから、次は手旗信号を使うようになった。

成毛 そうだね。

堀江 しかもその手旗信号を遠くから確認するために、わざわざオランダから望遠鏡を取り寄せるんです。その手旗信号を送っていた山は旗振り山と言われて、全国にあります。そしたら幕府が、軍勢を使って手旗信号を取り締まったので、商人たちは次に伝書鳩を使うんです。すると今度、幕府はハヤブサを放って鳩をつかまえるんですけど、商人たちも鳩を訓練してハヤブサから逃れるようにしたんです。それが明治時代になるまでずっと続いたんですよ。

成毛 すごい話だなぁ。世界史のほうはまだ話してないの?

堀江 まだです。

成毛 堂島の先物取引と同時期、キリスト教は利子をとることを禁止していたから、当時、取引していた5つぐらいの通貨の為替差益で利益をとっていたんだよね。それを唯一やっていたのがメディチ家。それと、ワーテルローの戦いでナポレオンが負けたとき、ロンドンの株価が暴落するんだけど、それを最初に伝えた手段がまさに手旗信号だった。

堀江 ロイターの元ですよね。ロイターって通信社だと思っている人が多いですけど、当時は、為替取引の情報配信が彼らの一番の利益源でしたから。

成毛 今でも、ロイター端末というのが金融界では普通に使われていますけど。日本とヨーロッパは、いろんなことがほぼ同時期に起こるのが面白いね。

堀江 中国と日本の関係も面白いですよ。歴史上、日本の幕府や首都が転々としてきたのは、中国の政権の影響が大きい。例えば、漢民族の政権は、征服はしないけれども貢ぎ物をしなさいという、朝貢外交をするんですよね。

成毛 朝貢外交って、相手国からもらうものが多かったりするんだよね。

堀江 そうそう。「よしよし」って相手国の機嫌をとって、見返りを求めるのが中国の外交の基本ですけど、たまに異民族に征服されると変わるんです。そのとき日本はどうするかと言うと、中国が漢民族王朝時代は京都が首都で、モンゴルに支配されて「元」になったときは鎌倉に移って、漢民族が元を滅ぼして「明」になったときはまた京都に戻って日明貿易をはじめるんです。でも「明」が女真族に支配されて「清」になると江戸に移って、行ったり来たりして面白いんですよ。

成毛 なるほどね。今、中国は共産党政権じゃないですか。以前、中国人の知り合いが、「もし日本が中国共産党政権に支配されたらどうなるか?」という話をしていて、「また別の国が中国に生まれるんじゃないか? 日本という国かもしれない」と冗談で言っていましたね。「征服されたほうが得だよ」って。

堀江 ハハハハハ。 実は火薬の話も面白くて、黒色火薬が発明されたのは中国なんですよね。でも国家の最高機密だから、製法も厳密に管理されていて、朝鮮ぐらいまでしか情報が行かなかったんです。だから、日本人は何百年もの間、黒色火薬の存在を知らなくて、はじめて知ったのは、種子島に鉄砲が渡来したとき。つまり、シルクロードをめぐってヨーロッパに伝わった火薬の技術が、めぐりめぐって日本にやってきたわけです。

成毛 黒色火薬は木炭と硫黄と硝石でできていて、硫黄を産出していた日本から硫黄の輸出が急激に増えたんだけど、何のために使っているのかは日本人はまったくわからなかった(笑)。

堀江 そうなんです。

成毛 やっと火薬の作り方がわかっても、今度、材料となる硝石の作り方がわからなくて。徳川綱吉の時代に本格的に作れるようになったんだけど、戦国時代はすでに終わった後で残念でしたね、という話。

堀江 硝酸って、便所の土で作るんですよね。窒素化合物だから。チリとかに行くとデカい硝石の山があったりしますけど。

成毛 江戸時代は、トイレの板にオシッコをかけて作っていたんだよね。それが白い結晶になったあと精製するわけ。チリの硝石ももともとは糞山でしょう。だから、オシッコって大事なんですよ(笑)。

堀江 ハハハハ。

成毛 今日は、こんな話でよかったのかしらね?

■田植えから酒造りまで全部やる高校?  これからを生きるためには?

――今のリアルな面白い話もぜひお聞きしたいです(笑)。

堀江 うちで今度、高校も作りますよ。でもイチから作ると面倒くさいんで、通信制の国数英の授業をしている法人の支店みたいな感じで立ち上げるんですけど。

成毛 教育法にのっとったカリキュラムはやりたくないと?

堀江 興味ゼロですね。そんなの別に動画でいいんです。動画の先生とチューターがいて、チューターは生徒一人抱えるごとに月1万2000円ぐらいもらえるようにして、10人抱えたらそれだけで12万円なので、副業としてはいいじゃないですか。

 そっちはそういう風にお任せして、僕たちは何をやるかというと、寿司部を作って3ヶ月で握らせたりするんです。今日も、京都の「澤屋まつもと」っていう酒蔵が見習いを募集していたので、田植えから酒造りまで高校生が全部やるとか、そういうコースをどんどん作っていこうと思っています。ぜひ高校の顧問になってくださいよ。

成毛 は? ヤダよ。顧問とか面倒くさいじゃない。手伝いますよ、手伝いますけど、役職名はやめて。堀江から個人的に頼まれることは別にいいんだけど、その下のスタッフから、「成毛顧問、~してください」とか頼まれるのが嫌だからさ。

堀江 この高校、意外と学生がすごく集まる気がしていて、どうしよう? と(笑)。

成毛 相変わらず、楽観的だよなぁ(笑)。でも寿司や酒造りの修業話は面白いね。100年以上続く企業が去年だけで461件倒産したらしいけど、本当にもったいないと思う。ほとんどが造り酒屋とか旅館とか飲食店だけど、そういう企業が倒産したら200円ぐらいで買って、若い寿司職人や杜氏が引き継げば、大正時代から続く老舗の寿司屋ですとか、日本酒のラベルに「Since1869」とか書いて宣伝できるわけでしょ。それは売れますよ。

堀江 売れますね。僕たち、日本酒も造っているんです。「想定内」と「想定外」という名前の純米大吟醸なんですけど、日本酒の値段って四合瓶の純米大吟醸が3000~4000円で、すごく安くないですか? ワインで3000円だと安く感じて、コンビニで売ってもいいぐらいの値段なのに、日本酒の場合はそれが最高峰なんですよね。

成毛 一升瓶で売るからだろうね。

堀江 一升瓶は、マグナムボトルじゃないですか。だから、四合瓶がレギュラーで一升瓶がマグナムだと考えれば、もっと高い値段で売れるはずなんですけど、みんなよくわかってなくて。要は、売り方の問題なんですよね。シャンパーニュなんて、どんないいものでも原価10ドル以上かかってないのに、それを5万、10万で売るわけですから。それって、ブランドビジネスの基本なんですよね。

成毛 うんうん。

堀江 ちなみに今、日本酒って完全に科学で造られています。杜氏もいらない。酵母や麹の割合も精米方法も、全部自動化できて、温度管理してれば腐造の問題もないので。浄水器で水も作れるから、ロンドン、ニューヨーク、パリにも酒造ができているんです。東京でも、酒造とバーが一緒になったお店を作ると、絶対に流行ると思うんですよね。

成毛 僕の友達に伊勢でビールを造っている人がいて。室町時代から続いている「二軒茶屋餅」っていう餅屋の21代目で、赤福よりも古い家系なんですよ。代々、醤油造ったり味噌造ったり、いろいろやっていたらしいんだけど、その21代目は東北大で微生物を研究していたわけ。でも実家の暖簾は守らなきゃいけないからと、仕方なく帰ってコンビニやったら大失敗して。微生物に詳しいからビールでも造ろうかとやりはじめたら、世界的に有名になって、今度、大きなビール工場を作ることになったんです。

堀江 へぇ。

成毛 彼は三重大で博士号をとったあと、酒の醸造はサイエンスだと気がついたんだよね。まあ気がつくのが遅いんですけど、その結果、世界の名だたるクラフトビールのコンテストの選考委員をやるようになって、日本でもビールで最多受賞しているの。あそこの冷蔵庫に入っていますけど、すごく美味しいよ。

堀江 それ、飲ませてもらってもいいですか?

成毛 どうぞどうぞ。

堀江 (一口飲んで)結構、ドライですね。

成毛 美味しいでしょ。要するに何が言いたいかというと、サイエンスがどの領域でも圧倒的な力を持ちはじめているということです。

堀江 そうそう。だから、酒造を訪ねると、「堀江さん、よく知っていますね」って言われるんですけど、「いや、そんな難しい話はしてないですよ」と。ネットで調べればだいたい何でもわかるので。僕が生まれ育った頃って、インターネットがなかったから、調べるのが大変だったんですよ。でも今はネットがあるから、大抵のことは調べればすぐわかる。酒造りとか本当に簡単です。ロケットを作るより、全然簡単。

成毛 物作りのなかで厄介だなと思うのは、土木や建築の世界だね。

堀江 あれは厄介そうですね。

成毛 最近、土木建築まわりの取材をしていて、本も出してるんだけど、それも理由があって。鉄道も巨大構造物も、みんな当たり前に見ているじゃない。あれこそすごい技術の塊なのに、作っている人以外、誰も知らない。作っている人たちも、「ITじゃないから古いよね」と思っていたりするから、なんかおかしいよね?と。逆張り的に考えると。

堀江 新幹線とかヤバいすよね。たまに熱海の温泉に行って、駅で「こだま」とか待っていると新幹線の「のぞみ」が通過するんですよ。通過する新幹線を見ていて、「あんなのに乗っているのか」と。すごすぎて恐ろしいです(笑)。

成毛 そういう意味では、今の国立競技場も恐ろしいよね。

堀江 僕が泊まっているホテルから見えます。よく作っていますよね。

成毛 あんな巨大な構造物を、ミリ単位の精巧な技術で作っているなんて、土木建築の技術はやっぱりすごいですよ。でも、一般の人は誰も知らないし、作っている人も別に知られなくていいと思っているから、僕のアウトプットの本の話じゃないけど、ウケるコンテンツになると思っていて。見慣れた風景の中にある、まだ知られていない面白いコンテンツって結構ありますよ。

――今までお話しいただいたことも含めて、基本的にお二人はやりたいことだけやっていると?

堀江 もちろん。そのほうが精神衛生上いいですから。

成毛 やりたくないことは「即やめ」です。僕はアポをとっても、なんとなく嫌な奴だなと思ったら、1時間前でも簡単にドタキャンしますからね。ひどいもんですよ。でも秘書が全部カバーしてくれるので。

堀江 やりたくないことをやっていると、寿命が縮まりますよね。嫌われても炎上されても、やりたいことだけやって生きていったほうが幸せですよ。

取材・文=樺山美夏 写真=海山基明

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