銭湯のサウナで繰り広げられる女たちの赤裸々な実情。『湯遊ワンダーランド』まんしゅうきつこにインタビュー!
更新日:2018/7/17

『週刊SPA!』で連載中の漫画『湯遊ワンダーランド』、待望の第1巻が5月20日に発売されました! 作者は『まんしゅう家の憂鬱』や『アル中ワンダーランド』でおなじみの、まんしゅうきつこ先生。本作は、銭湯のサウナで繰り広げられる女たちの赤裸々な実情を描いた日常系漫画で、「読んだ瞬間、サウナに行きたくなる」と評判なのです。作品の裏側や、気になるエピソードの真相などを、まんしゅうきつこ先生ご本人にインタビューして聞いてみました!
●今回の作品は、身近な人に向けた漫画にしたかった
――第一話から、毎週楽しみに読ませていただいています。てっきりタイトルは誌面と同じく『湯遊白書』だと思っていたのですが、『湯遊ワンダーランド』に変わっていましたね。これはやはり、冨樫先生の『幽遊白書』に配慮してということなのでしょうか?
まんしゅう:よく聞かれるんですけど、まったく関係ないんですよ。『湯遊白書』でも何の問題もなかったんです。いっそのこと、ペンネームも冨樫きつこに変えようかって提案したんですけど、それはさすがに怒られそうだと止められました。
――そうだったんですね。そんな中、『湯遊ワンダーランド』に落ち着いたのは、どういったいきさつがあったのでしょうか。
まんしゅう:『湯遊白書』というタイトルは、ノリで決めたみたいなところがあったので……。なので出版する際には私はもっと、ロマンチックなタイトルにしてもいいかなと思ってたんです。小林じんこさんの『風呂上がりの夜空に』という漫画があるんですけど、ああいうのいいんじゃないかなって。最近映画化した『恋は雨上がりのように』も素敵ですよね。
――意外性のあるタイトルですけど、それもロマンチックでいいですね。
まんしゅう:そうですよね。ところが、編集は『湯遊ワンダーランド』がいい、デザイナーは『湯遊白書』のままでいきたいという風に、3人とも意見が違ったんです。私の提案したロマンチックなタイトル案は、「そんなエモい内容じゃないですよね」と早々に却下されました。結局、前著の『アル中ワンダーランド』や、『リフォームワンダーランド』と統一しようということで、編集が推した『湯遊ワンダーランド』に落ち着いたというわけです。
――なるほど。そんな風に決まったんですね。ちなみに、その編集さんというのは、作中登場する高石さんのことですか?
まんしゅう:そうです。高石です。高石を出したときは、周りの人にも「面白かったよ!」ってすごく褒めてもらえました。何よりすごく似ていると言われます。

――高石さんの登場は、たしかに衝撃的でした。
まんしゅう:はじめて高石の顔を書いたとき、自分で笑いすぎて手が震えて描けなかったんです。その勢いが読む人にも伝わっているのかなと思います。あのカットは素材として保存してあるので、いつでも取り出して使えるんですよ。
――便利ですね! そもそも、なぜ作中に編集さんを登場させようと思ったのでしょうか。
まんしゅう:前著の『アル中ワンダーランド』は、ひとりぼっちで寂しい思いをしてる人に向けた内容になっていました。なので今回の『湯遊ワンダーランド』では、身近な人に向けて描くというのを一つのテーマにしたんです。元々、ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」を描いていたときは、身近な人が笑ってくれたらいいなという気持ちだったので、原点に戻ったような感じですね。それで、身近な存在として誰を出そうかなって思ったら、すぐそばにとんでもなくキャラが立つ編集がいたのを思い出しました。それが高石です。
――そんな裏テーマがあったんですね。それにしても巻末のおまけ漫画のラストシーンは衝撃的でした。
まんしゅう:はい。作中でも描きましたが、高石ってこの性格だから、みんなから嫌われてるんですよね。だから、おまけ漫画で殺したんです。これでみんな溜飲を下げてね! って意味で。
――あのラストシーンにはそんな意味が込められていたんですね。
●気がついていないだけで、すでに“ヌシ”に出会っている
――この漫画に欠かせない人物の一人でもあるサウナのヌシですが、私はサウナに行っても見たことがありません。きつこ先生は必ずヌシに会うんですか?
まんしゅう:はい。知人や弟にすすめられてはじめて行ったサウナで、さっそくヌシに出会いました。
――最初からサウナのヌシに出会ったんですか?
まんしゅう:そうなんですよ。行くともう、ヌシが番張ってるわけです。聞き耳を立ててると「ほくろが来たよ」とか「またあの白髪がシャワー浴びる前に風呂入りやがって」とか、ほかのお客さんにあだ名つけてるんですよ。こんな面白いこと、漫画にしないわけにはいかないと思いました。
――キャラクターが強烈すぎますよね。
まんしゅう:別に会いたいわけじゃないのに、会っちゃうんです。なんでだろうって考えてわかったのが、私、人から怒られるのがすごく嫌いなんですよ。道を歩いてても、あの人はすぐ怒りそうだなっていうのがわかったりするんです。怒られたくないあまりにすごく気にする。だからヌシにも気がつきやすいんです。きっと。つまり、本当はみんなも会ってるのに、ただ気がついてないだけかもしれない……という仮説を立てました。
――そう考えたら合点がいきますね。私たちも本当はヌシに出会っている。
まんしゅう:そういうことですね。ただ、そういうヌシがいるような昔ながらの銭湯は、今どんどん閉店しているのでヌシと出会える場所そのものが減ってきているのが現状です。かわりに、スーパー銭湯みたいなサービスのいいものが誕生してるんですけどね。銭湯ファンとしては少し寂しいものがあります。

●女性が求める“本物の聖地”とはどこなのか?
――サウナの漫画ではありますが、先生の弟のやっちゃんや、やっちゃんの奥さんが出てくるような日常回も見ていてほっこりします。
まんしゅう:やっちゃんが出てくる回は、友達からもよく褒めていただきます。私としては、もっとサウナ事情に突っ込んだ話を多く描いたほうがいいのかなと思うこともあるのですが、高石はサウナにも興味ない人に読んでもらいたいという真逆の思いを持ってたんですよね。なので、そこでかなり議論しましたね。真剣に話し合いをして険悪になったりもしました。
――でも2巻以降は結構、いろんなサウナに行く話がガッツリ入ると聞きました。
まんしゅう:そうですね。聖地と言われているサウナに、たくさん行きます。そこから女性の聖地とはどこか? という展開になっていくんです。じつはすでに最終回も決まっています。
――え! そうなんですね。
まんしゅう:この漫画の中で、女性がたどり着く聖地がどこなのかという結末を楽しみにしていただければと思っています。

文=中村未来(清談社)