「させていただきます」を多用、優柔不断……相手をイライラさせる「損する人」とは?

暮らし

2018/12/20

 ふとしたひと言で相手を不機嫌にさせる人。「もっと話していたい」と思われる人。その違いを豊富な事例とともに解説した五百田達成さんの新刊『話し方で損する人 得する人』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が、日常会話“あるある”事典のようで面白い。「男は子どもでいたい。女は女でいたい」など男女の違いを会話例で示した同氏の著書『察しない男 説明しない女』も、男女関係のバイブルだ。

 そこで、日常会話のタブーから夫婦の会話でよくあるお悩み相談まで、五百田さんにアドバイスいただいた。物は言いよう。今すぐ使える好感度の高い話し方をさっそく身につけよう。

――話し方やコミュニケーション関係の類書はたくさんありますが、五百田さんが本を書くとき特に意識して他と差別化している点はあるのでしょうか。

五百田達成(以下、五百田) 僕は、企業の人事部で社員を面接して叱咤激励する立場ではないし、心の専門家でもありません。でもその中間で、会社員経験もありながらカウンセリングもできる現場感覚にもとづいた具体的なアドバイスが、読者のニーズに合っているのかなと思います。

 本を作るときも、編集者と打ち合わせを繰り返しながら身近な“あるある”を丁寧に拾っていて、理論とか効果とか“あるべき論”みたいなことは言いませんから。生き方とか幸福論とか成功法則のような話題には踏み込まず、言葉のひとつひとつに細心の注意を払ってコミュニケーションの話だけに徹しているのも特徴だと思います。

 また、『話し方で損する人 得する人』も『察しない男 説明しない女』もそうですが、対比的な例を出して、「あなたもこのケースに当てはまりませんか?」という見せ方をしています。それも共感を呼んでいるのかもしれません。

――脱サラしたあとカウンセラーの勉強をして気がついた、コミュニケーションにおける大事なポイントをひとつあげるとしたら?

五百田 会社員時代は、自分は論理的でテキパキとわかりやすく話ができる人間だと思い込んでいたんですね。ツルツルとよどみなく流れるように話せる、コミュニケーション上手気取りでいたんです。ところが、カウンセラーの勉強をはじめたら、自分の話し方だとコミュニケーションが成り立たなくて。実習をやってもヘタクソで、「ちょっと待ってよ!?」と。世の中には、“もうひとつのコミュニケーション”があることに気がついたんです。

■“もうひとつのコミュニケーション”とは?

 それは共感や人の話を聞くこと、結論がない話にも付き合うこと、ふんわりとわかった気になるといった、いわゆるノンバーバルな非言語コミュニケーションです。僕にとって、このことを学んだのはすごく大きかったですね。つまり、世の中には言語と非言語の2つのコミュニケーションがあって、これで完璧と言える絶対の正解はない。ですから、自分の話し方を疑ってみると、どんな人でも気づきがあると思います。人の話し方もよく観察してみて、相手に合わせて会話してみるのもおすすめです。マインドを変える必要はなくて、話し方さえ変えればうまくいくことっていっぱいありますから。

――メールの文章ひとつとっても長い人と短い人がいます。話し方となれば、それこそ千差万別なので、相手がどういう会話をしたがっているのか観察することが大事だということですね。

五百田 おっしゃる通りです。相手に合わせるってすごく基本的なことなんですね。でも大半の人は、相手の話し方なんか見ていないし興味もないので、自分のペースで話をしてしまいがちです。もし、自分は話し下手だとかコミュニケーション上手になりたいとか思っている人は、会話を録音して聞いてみるのも効果的です。自分ってこんな話し方の癖があるんだとか、全然、相手の話を聞いてないなとか、客観的にわかるので。

――ビジネスパーソンが無意識に使っている言葉で、これだけは気をつけたほうがいい、と思うものがあれば教えてください。

五百田 僕が嫌いな言葉でいうと、「〜していただくことは可能でしょうか?」という言い方ですね。相手に対する謙虚さを強調するあまりかもしれませんが、そこまでまわりくどい言い方をされると「可能じゃないですね」と言いたくなります(笑)。

『話し方で損する人 得する人』にも書きましたが、「〜したほうがいい」という言い方も要注意です。単なる自分の意見を、「あなたのためになる」というスタンスで押し付けているからです。「この本、読んだほうがいいですよ」より「この本、読んでみてください」と言われたほうが、素直に読んでみようかなという気分になりますよね。

 以前、「〜させていただきます」アレルギーだった時期もありました。メールや話し言葉で、「させていただきます」を過剰に使う人っていますよね。こういう言葉が習慣になっている人は、我慢するところからはじめてみてください。悪い癖を直すのはまず我慢、そして努力です。僕も昔、失敗したことがありますが、気持ちに余裕がないときに癖って出てしまうものです。結婚式の司会を頼まれたとき、当日は絶対に「させていただきます、は言わないぞ!」と決めていたのに、式の後半で時間がなくなって、ポロッと「そろそろケーキを下げさせていただきます」と口にしてしまって。コミュニケーションおたくの僕にとって、あれは今でも苦い思い出です。

――『話し方で損する人 得する人』には、「どう話すかで天国にも地獄にもなる」とあります。これは夫婦間にも当てはまるケースが多いと思いお悩みを募集しました。そこでぜひ、よくあるケースの相談についてアドバイスをお願いします。

●優柔不断な夫、イライラする妻

夫婦で外食することになり、「どこがいいかな?」と夫。「◯◯はどう?」と私が店名をあげ、「××がいいかもね」と決めようとすると、「あー、××ね。△△もいいよね」と、お店を決める過程を楽しんでいる夫。お腹もすいてイライラしてきた私は、「どっちでもいいから早く決めてよ!」と言ってしまい、その後、お店は決まったものの、せっかくの食事が盛り下がってしまいました。なんと言うべきだったのでしょう?(40代女性)

五百田 この夫の性格を分析すると、まず欲ばりですよね。お店をじっくり選んで、最大限いい食事をしたいという欲がある。ただ、僕も男なので彼をかばうならば、お店をああだこうだ考えて選ぶのも食事のうちだと思っているのかもしれません。でも女性はお腹が減っているからさっさと食べたくて、食事がまるで仕事のようになっている感じもする。この場合、まずひとつ目の解決策として、お腹が減るとイライラしてしまう妻は、おやつか何かで小腹を満たしてから外食に出かけるといいでしょうね。さらに、夫がメニュー選びも迷っているようならせっかくのデートを楽しむ気持ちで、「決まったら一口食べさせてね」と言ってみたり、気持ちに余裕を持って対応するといいと思います。

 もうひとつは、妻が急がなければいけない理由がある場合、スケジュールと目的を夫に明示することです。「今日はこの後、○×へ行く予定があるから早く食べて1時間後にはお店を出ようね」と伝えれば、夫も早く決めなきゃいけないと思うはずです。

 いずれにしても、「なんで私のイライラした気持ちをわかってくれないの?」と不満を募らせるだけでは何の解決にもなりません。夫(男)は察しない生き物なので、たまには妻がデートのつもりでのんびりしている夫に合わせるとか、自分たちの予定に合わせて急いでもらうとか、その時の状況に合わせた言葉を投げかけてみてください。

――ありがとうございます。似たような相談で、次のようなケースはいかがでしょうか。

●料理に不満そうな夫、イライラする妻

うちの旦那はかなり優柔不断です。何か相談してもたいてい「なんでもいいよー」のひとこと。私が「夕飯なににする?」と聞いても「なんでもいいよー」と答えます。そこで夕飯の支度をしていると「夕飯なにー?」と聞かれ「○○だよ」と答えると、少し不満そうな顔をしながら「なんだ、○○かぁ」と言われます。イヤならなにが食べたいかハッキリ言ってほしい! とイライラして、そう伝えると、「いや、イヤじゃないんだけど、気分がさ……」などと、もごもご言うのです。その態度に余計イライラ。なんで、夕飯ひとつでこんな思いをしなければいけないのか。毎度、腹が立ちます。(30代女性S)

五百田 「なんでもいいよ」と言いながら、いざ作って出すと文句を言う。「イヤじゃないんだけど」と言ってるけど、本当はイヤなんでしょうね。だから夫の「なんでもいいよ」がそもそも間違っています。イヤなものはイヤと、はっきり伝えたほうがいい。

 でもこれ、男女逆転バージョンもあるんですよ。カップル間でよく彼氏が彼女に「ご飯、なに食べたい?」って聞いて「なんでもいいよ」と言われたとき、「じゃあ近くに美味しいラーメン屋があるから食べに行こう」と誘うと、「えー、ラーメンはヤダ」と断られ、歩いて10分の所にイタリアンがあるというと、「今日は高いヒールだから歩きたくない。見ればわかるでしょ? 気が利かないんだからもう!」なんていう風にキレられる。そういうケースってありますよね。

 こういう場合、お約束の解決方法は、いくつか選択肢を出して相手に選ばせることです。「和食、洋食、中華のどれがいい?」とか「うどんとパスタとハンバーグだったらどれにする?」と提案して、本人に選ばせる。そうすると自分で決めたことには文句を言いませんから。つまり、どちらかが一方的に決めると相手が不満を持ちやすいけど、共同作業にするとお互い納得しやすい、っていうことですね。

――すごくよくわかります。夫婦の困ったお悩みはまだまだありますので、引き続きアドバイスをお願いします。

取材・文=樺山美夏