累計400万部突破の大ヒットラブコメがアニメ化!『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』原作者・赤坂アカインタビュー

アニメ・マンガ

2019/1/11

 恋愛は戦。好きになったほうが負けなのであるッ──! 名門私立秀知院学園の生徒会を舞台に、プライド高き会長と副会長が「いかにして相手に告白させるか」の頭脳戦を繰り広げる『かぐや様は告らせたい』。累計400万部(※電子含む)突破、1月12日からテレビアニメもスタートする同作は、なぜこれほど面白いのか。原作者・赤坂アカさんのインタビューからその秘密をひもといていこう。

アニメ『かぐや様は告らせたい』キービジュアル

2019年1月12日より、MBS・TOKYO MX・BS11ほかにて毎週土曜深夜放送 
『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』
由緒ある名門校の生徒会長&副会長として、羨望のまなざしを一身に集める白銀御行と四宮かぐや。2人は互いに惹かれ合っているが、チョモランマの如きプライドが恋路を阻み、何も進展がないまま早半年。やがて彼らは、「いかに相手に告白させるか」ばかり考えるようになり……!? 高度な(?)駆け引きがアツい、頭脳派ラブコメ!
原作:赤坂アカ 監督:畠山 守 シリーズ構成:中西やすひろ キャラクターデザイン:八尋裕子 音楽:羽岡 佳 制作:A-1 Pictures
キャスト:四宮かぐや/古賀 葵 白銀御行/古川 慎 藤原千花/小原好美 石上 優:鈴木崚汰 早坂 愛/花守ゆみり ナレーション/青山 穣
(c)赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会

 

原作・赤坂アカ インタビュー

 相手から告白を引き出そうと、権謀術数の限りを尽くすかぐやと白銀。彼らはどのようにして誕生したのか、そしてこじれた恋の行く末は……?原作者・赤坂アカさんにキャラクター造形の極意、作劇術についてうかがった。

「お互いに好意を抱いているツンデレ男女が、学校からの帰り道、相手から決定的な言葉を引き出そうとしている。そんなワンシーンから、このマンガが生まれました」

 赤坂さんに作品誕生の経緯を聞くと、そんな可愛らしいシチュエーションが返ってきた。だが、完成したのは「天才たちの恋愛頭脳戦」。エッジの利いたラブコメディだった。
「目的に向かって動くけれど、何らかの思惑に阻まれてうまくいかないという密室型のシチュエーションコメディってありますよね。古くは『フルハウス』、今で言うと『ビッグバン★セオリー』のようなキャラクターの動かし方を参考にしています。脳内で思考をめぐらせる『カイジ』のような頭脳戦も、念頭にありました」

『かぐや様は告らせたい』コマ
かぐやの決めゼリフ「お可愛いこと」は1話から登場。「貴族が人を見下す時の言葉をイメージしました。繰り返し使ったのは、編集さんの提案。天丼(同じ繰り返しで笑いを生むこと)楽しいなと思うようになりました」(赤坂さん)

 天才2人が頭脳を戦わせるが、競い合うのは「いかにして相手に告白させるか」。お互いに好意を抱き合っているのに、なぜか毎回おかしな方向へと話が転がっていく。

「凄いヤツがミスをするから、笑いが生まれます。その落差をつけるために、超一流校の生徒会という舞台を用意しました。さらに、予想外の状況を引き起こす役割として投入したのが藤原です」

 キャラクターの名前からも察しがつく通り、モチーフは『竹取物語』。生徒会長の白銀は大供御行、書記の藤原は車持皇子のモデルとされる藤原不比等、会計の石上は石上麻呂に由来する。

「藤原がインチキをするキャラだったり、かぐやが石上を可愛がっていたりするのも、『竹取物語』からきています。とはいえ、最初は別の名前でした。1話の最終チェックをしている時に『この子は傲慢だしお姫様っぽいし、この子の名前はかぐやなんじゃない?』と名前をすべて変えたんです」

 かぐやに仕える早坂は、どのようにして生まれたのだろうか。

「3話で白銀とかぐやが映画館に行くとき、ちらっと登場させたんです。それを後から見て『かぐやには年齢の近いおつきの人がいるだろう。あの子がそうかも』と僕自身が考察していきました。それに、新しいキャラクターを突然ポンと出すよりも、再起用したほうが『あの時の子だ』と読者にも受け入れられやすいかなと。3巻で登場した石上もそうですが、『例のアイツが来た!』となったほうが良いと思うんです」

 巻を重ねるごとに登場人物が増えていくが、キャラクターを生み出すうえでの“ルール”とは?

「理解できない行動原理で動く人、感情移入できない人は、このマンガでは描かないように心がけています。主軸となるのは気持ち。みんなの感情が微妙なニュアンスまで伝わり、『やっぱりそうだよね』と思ってほしい。だから人間の醜い部分も描きますし、白銀もかぐやも毒づく時は毒づきます(笑)。また、例えばツンデレキャラを描く場合にも1話ですべてを描かず、10話ぐらい挟んでからデレの部分を出すようにしています。その間に『辛いモノが苦手』『実はカナヅチ』などの設定を意外性のある形で描くことで、キャラの人間性が見えてきます。キャラ造形で大事なのは無理をしないことですね」

感情の導線を作り「仕方ない」状況を生む

 キャラクターの魅力、物語が思わぬ方向にスピンする意外性、不意打ちでやってくるラブ要素が人気を集め、マンガは大ヒット。ここまで裾野が広がったのはなぜだろうか。

「女性読者が読んでくれたことは大きいと思います。女性読者は“仕方ない”という心理状況を大切にしていると感じています。『かぐや様』でもしっかり前振りをして、キャラクターの感情の導線を作るようにしています」

『かぐや様は告らせたい』コマ
例によってプライドが邪魔をして、互いの連絡先をなかなか聞けないかぐやと白銀。今もガラケーを使うかぐやで笑いを取りつつ、大財閥の令嬢であるがゆえの不自由さも垣間見える。

 影響を受けた作品には、アニメ『赤毛のアン』があるという。

「約40年前の作品ですが、笑える作品として秀逸なので今も変わらない面白さがあります。アンは、名前を呼ばれる時に『最後にeがつくアン(Anne)って呼んで』とつづりにこだわるんです。ある時おじいさんの家に養子に出されるのですが、『男の子が欲しかった』と送り返されてしまう。その間シリアスなシーンでも同じこと言うんですよ。『それ今言う?』って感じですし、言われた側も真顔で(笑)。このように、シチュエーションがハマれば普遍的な面白さが出るんです。『かぐや様』も、そこを目指しています」

そのほかに、影響を受けた作品として『天使な小生意気』や『スクールランブル』、海外ドラマを挙げる。

「『天使な小生意気』は、コミック1冊を読むのにかかる時間が長いので、キャラに愛着が湧くんですよね。西森博之先生はキャラクターの感情をリアルな流れで作られる方なので、その点も参考にしています。また、海外ドラマは劇中でカップルが付き合ったり別れたりしますよね。『こいつ童貞じゃなくなったぞ』など、キャラクターのステータスが変動するのが好きなんです。その関係性でないと描けないコメディがありますから」

 実際『かぐや様』も、白銀たちが進級し、生徒会に新メンバーが加わり……と刻々と状況が変化していく。

「ラブコメの王道として、最後は卒業して終わりかなと考えています。とはいえ、明確な着地点は考えておらず、いくつか候補があるという感じ。3年生になるあたりで、折り返しじゃないでしょうか」

 作中に仕込まれた伏線も、気になるところ。例えば、全国模試トップの四条帝はいつ登場するのだろうか。

「このキャラはいつ出しても大丈夫でしょう。もしかしたら、女子なのかもしれません」

 時折名前が出てくる「サハ部」の存在も、ファンとしては気になる。

「これこそ僕が知りたいです(笑)。中東の一小国の国王が日本に来て、高校生活を送っているというのもありそうだなって。詳細は不明ですが、マルームというものを使うみたいですね。縄と丸太を使うスポーツというところまで考えてあります。でも、本編では使わないだろうなぁ(笑)」

『かぐや様は告らせたい』コマ
ある雨の日の放課後に「どちらが相合傘に誘うか」で突如はじまった恋愛頭脳戦。天才たちの本気の駆け引きには流石にやりすぎでは……? という気もするが、その原動力が淡い恋心なところが可愛い。このキャラクターの感情の導線を大切に描いている、と赤坂さんは話す。

 最後に赤坂さんにとってこの作品はどのような位置づけかうかがった。

「僕は今まで、展開重視でマンガを見せていくタイプでした。でも『かぐや様』を通じて、キャラクターの感情、個々のポテンシャルを引き出すことがマンガにとってこれほど大事なんだとあらためて気づきました。今は、彼らの嘘のない感情をもっと引き出したい、読者が『そうだよね』と感じる気持ちを、彼らに感じさせたいと思っています。アニメに関しては、いい作品になればいいなという一点に尽きます。収録にも立ち会っていますが、しっかり笑える作品になっていると確信しています」

文=野本由起

赤坂アカ
あかさか・あか●1988年、新潟県生まれ。主な作品に『さよならピアノソナタ』(原作:杉井光)、『ib インスタントバレット』など。ボーカロイド『IA -ARIA ON THE PLANETES-』のキャラクターデザイナーとしても知られる。