これぞ神の手! 樹脂粘土で作る実物そっくりのミニチュアフラワーにネット騒然。「生命を感じるほどのリアルさ」の秘密は?

暮らし

2019/6/12

 ミニチュアのパンやペストリーなどの食べ物を作る「ミニチュア・フード」、家具や動物、靴や昆虫など、さまざまなものを1/6・1/8・1/10・1/12などのスケールに小さくした「ミニチュア」が、今、再びブームになっている。

 ヨーロッパでも人気の高いドールハウスをはじめ、趣味性の高いコレクターズアイテムとして、アート性が高いアイテムを中心に日本でもファンが急増中で、イベントや展示会の来場者が増えているという。

『ミニチュアフラワーレッスン』(MiniatureRosy 宮崎由香里/主婦の友社)

 初の著書『ミニチュアフラワーレッスン』(主婦の友社)を出版し、SNS上では「神の手に違いない!」と称賛を浴びているミニチュアフラワー作家、Miniature Rosy 宮崎由香里さんにインタビュー。生花そっくりのミニチュアフラワーはどのように作り出されているのか秘訣を聞いた。

――ミニチュアフラワー制作はいつ頃から始められたのですか? そのきっかけは?

宮崎由香里氏(以下、宮崎):2002年頃、テレビCMでドールハウスを見てミニチュアに興味が湧き作りはじめました。「ドールハウスを自分で作り、そこに花を置きたい」と思い、ミニチュアで花を作りはじめました。

――ミニチュアフラワーの作り方は、どのように学ばれたのですか?

宮崎:最初は粘土で実物大の花を作るための実用書を参考にしましたが、ドールハウスに置くミニチュアの場合は、スケールが1/12なので大きさがまったく違います。実物大の花と同じ作り方では、ミニチュアにしたときに納得のいく仕上がりにならず、「すべて最初から自分で作り方を考えなくては」と、何年も試行錯誤を重ねました。

 上の画像の作品は、イングリッシュローズの‘チャールズレニー マッキントッシュ’という品種のバラをモデルに作ったミニチュアフラワーです。

 品種の特徴であるひらひらした複雑な花びらを忠実に再現するために、質感やフリルの出方にもこだわりました。ライラックピンクの花色も大きな特徴なのですが、できるだけ実物に近い色になるように、何度もやり直しました。

――SNSや展示会などでいろいろな作品を発表されていますが、これまで最も反響が大きかった作品を教えてくださいますか?

宮崎:18〜19世紀のオランダ人の画家が描いた花の絵画を、ミニチュアフラワーにした作品です。当時は「チューリップバブル」と言われるほど、チューリップが高価だった時期で、球根ひとつで家が建つほどの高値で取引されていたそうですよ。そんなに価値が高かったアレンジメントを再現できたと考えると嬉しいです。

 また、絵では正面しか見られませんが、ミニチュアにして立体化すると、「絵ではみられない裏側も見られるんですね」という感想を寄せてくださった方もいました。

――ルーブル美術館に所蔵されている絵画のひとつだそうですね。実際に制作されたときの苦労などはありましたか?

宮崎:まるで絵から飛び出したのかと思うほど、絵画をそのままの姿でミニチュアにするのが目標でした。実物の花の色よりも、絵の色使いの色彩に近づけるように、全体の色調にもこだわりました。

 平面に描かれた絵を、ミニチュアとして立体化するのは、思った以上に大変でした。花の位置関係を絵と同じになるように組み立てていく段階で、上下左右の他にも、絵には無い前後の位置を考えなければならず、「植物の仕組み上、この茎の角度はおかしい!?」とか、「あれれ? 絵と同じ位置に収めるには、茎を直角に曲げないと!」…という、思いもよらない苦労がありました。

――これまでに作られたミニチュアフラワーの作品の中で、一番気に入っていらっしゃる作品を教えてください。

宮崎:「初夏~夏の寄せ植え」です。初めてガーデニングマガジン「園芸ガイド」の取材を受けた際に制作しました。植物が好きな人が読む雑誌とあって、いつも以上に緊張しました。

 実際に自分が好きな初夏の花で寄せ植えを作って、それをモデルにしてミニチュアフラワーを作っています。本物の寄せ植えを作るように植え付けなければならないので、見えない株元のほうまできちんと実物のように作りました。

 鉢植えはアレンジメントとは違い、葉の数が多くて、個々の植物のミニチュア自体も、作るのがとても大変なんです。できるだけ実際の葉の数に近くなるように、一生懸命作りました。

――本物そっくりで、生きている植物のような作品ばかりですが、気をつけていることはなんですか?

宮崎:写真や植物図鑑を参考にすることもあるのですが、実物の花を目の前に置いてよく観察して作ることを大切にしています。

 例えば、秋から年を越して初夏まで咲き続け、あちこちで目にすることが多い花、パンジー・ビオラは、私も大好きで毎年植えているのですが、3ミリに満たない花びらの中に、どうやって色をつけるのかが難しいところです。筆先の絵の具の量や、ちょっとした水加減で全然違う花になってしまいます。

 この時も、お気に入りの花を自分で庭に植えて育て、よく観察しながら実物を写しとったようにそっくりに作ることを目指しました。品種がとてもたくさんあるのですが、ミニチュアを見ただけで、品種名までわかるくらいのリアルさを出せたと思います。

 あとは、手荒れをするとうまく作れなくなるし、爪も道具のひとつなので、手のメンテナンスも大切です!(笑)

――ミニチュアフラワーの最大の魅力と、おおまかな作り方を教えてくださいますか?

宮崎:実物の花の美しさにはかないませんが、花は生き物なので、時間が経つとともに姿が変わっていきます。でもミニチュアフラワーにすれば「この花は開きかけのこの時がいちばん好き!」「この花なら、ちょっと退色してきたこの感じが好き!」という一瞬を、ずっと見ていられるのがとても魅力的です。

 主な制作の材料は樹脂粘土、ワイヤー、絵の具。道具は細工棒、粘土用ハサミ、ボンド、まち針、ピンセット、筆…など特別なものはほとんど使っていません。これだけの材料と用具で、ほぼすべてのミニチュアフラワーが作れます。植物の花びらや茎などのパーツを作り、接着剤などを使って組み立てていくだけです。

 ミニチュアフラワーをたくさんの人に知っていただき、もっと作る人が増えてくれたら嬉しいです。