「嫉妬でぐちゃぐちゃだった」『レンタルなんもしない人』×『夫のちんぽが入らない』こだま対談

マンガ・アニメ

2019/8/7

 2018年、Twitter上に突如として現れた、“レンタルなんもしない人”。「レンタルなんもしない人というサービスを始めます。」というツイートは、たちまち拡散され、“レンタルさん”へ依頼が殺到。テレビや雑誌でも紹介されるようになり、2019年3月からは、『週刊モーニング』でレンタルさんをモデルにした漫画の連載もスタート。世は空前のレンタルさんブームです。

『レンタルなんもしない人』(レンタルなんもしない人:企画・原案、プクプク:著/講談社)

 そこでダ・ヴィンチニュースでは、7月23日に漫画『レンタルなんもしない人』(レンタルなんもしない人:企画・原案、プクプク:著/講談社)第1巻が発売されたことを記念し、レンタルさんをお呼びしての対談を行うことに。そのお相手は、『夫のちんぽが入らない』の著者、こだまさん。なんとお2人は15年来のお付き合いがあるご友人なんだとか。

 漫画化についてのお話と、お2人の意外な接点についてお聞きしました。

「嫉妬でぐちゃぐちゃだった」過去

――レンタルさんとこだまさんは、昔からのお知り合いだったんですよね。きっかけはなんだったんですか?

レンタルなんもしない人(以下、レンタル) 出会いは、ネット大喜利です。出されたお題に対して、最も面白い回答をした人が勝者になるというルールで、そのなかですごく強い人がいたんですよ。それがこだまさんでした。ネット大喜利には段位があるのですが、こだまさんは七段くらいでしたか?

こだまさん(以下、こだま 十段でした(笑)。レンタルさんこそすごく強くて、面白かったです。ネット大喜利している人なら、知らない人はいないくらいの有名人でした。

――お二人とも、トップクラスのプレイヤーだったんですね。

レンタル そうですね。でも、ネット大喜利を介しての繋がりだったので、名前は知っているけど、直接会ったことはなかったんです。

こだま 初めてお会いしたのは、2014年でしたね。私が文学フリマで同人誌即売会をしたときにレンタルさんが奥さんと一緒に、買いに来てくれたんです。

レンタル ネット大喜利界の重鎮であるこだまさんが、どんな人かを見たくて、確認するつもりで行きました。実はあのとき、心の中は嫉妬でいっぱいだったんですよ。

こだま え、なんでですか!?

レンタル ネット大喜利でずっと一緒に戦ってきたこだまさんが、いきなり売れっ子作家になったんですから、それはもう妬ましいですよ。『おとちん』(※『夫のちんぽが入らない』の通称)を買ってからも、すぐには読むことができませんでした。それくらい嫉妬心でぐちゃぐちゃだったんです。

こだま そんな風に思っていたとは、まったく知りませんでした。

――レンタルさんにも、売れたいという闘志があったんですね。なんだか意外です。

レンタル ネット大喜利をやるくらいなので、面白いことをしたい欲は人よりあると思います。そのあとも長いこと嫉妬していて、「僕はこだまさんの人生のモブキャラなんだ」と思っていました。

――ところが、「レンタルなんもしない人」というサービスが広まるきっかけを作ったのは、そんな嫉妬の対象であった、こだまさんだったんですよね?

レンタル はい。こだまさんが僕のツイートをリツイートしてくれたおかげで、広く認知されるようになったんです。それに関しては、とても感謝しています。ありがとうございます。

こだま 「レンタルなんもしない人」のツイートを最初に見たときは、ジョークだと思いました。でも、翌日もツイートをしていたので、どうやら本気らしいと。それでリツイートしました。そうしたら色んな人が「面白い」と言って、どんどん拡散されていったんです。

――こだまさんのリツイートによって、レンタルさんの知名度が一気に上がったわけですが、そこに嫉妬はありませんでしたか?

こだま 嫉妬はなかったです。私も本当に面白いと思ったので、広まってほしいなと純粋に思いました。

レンタル ……。

漫画が表現してくれた“現実の美しさ”

――今回発売された漫画『レンタルなんもしない人』は、レンタルさんのツイートを基に、漫画家のプクプクさんがストーリーを膨らませて描いていらっしゃるんですよね。

レンタル ツイートと一緒に創作のヒントになりそうなシチュエーションも、お伝えするようにしています。それ以外はなんもしないスタンスを貫こうと思っていたのですが、最近は少しだけネームに手を入れさせてもらうこともあります。ちょっとだけ、なんかしちゃってはいるのですが、大部分はプクプクさんにおまかせです。

――ツイートを基にしたフィクションということですが、たまたま、リアルと重なる部分があったとか。

レンタル 第11話「Lovely Life」で、「へそくりバーグ」という単語が出てくるんです。冷蔵庫にチルドハンバーグを隠しておくという意味なのですが、実際の依頼者も、ポテトチップスを隠すことを「隠しポテト」と呼んでたんですよ。似たような概念が登場したことに驚きました。

――それはまた、ピンポイントな部分が重なりましたね(笑)。作中、最も好きなエピソードを教えてください。

レンタル あとがきにも書いたのですが、第3話の「働かない勇気」が好きです。依頼者の希望で、夜の公園でブランコに乗りながら、シャボン玉をふいたんです。そのときの光景がすごく綺麗だったのですが、スマホの写真では美しさを伝えることができず、残念に思っていたんです。それを今回、漫画で表現していただきました。漫画すごいなって思いましたね。

2時間の大遅刻にレンタルさんは…

――こだまさんも、実際にレンタルされたことがあるとか。

こだま はい。レンタルさんがサービスを開始したその月に、「国分寺を一緒に散策してほしい」という依頼をさせていただきました。ところが当日、スマホが壊れてアラームが鳴らず、2時間も遅刻してしまったんです。結局その日は、時間を午後にずらしてもらったのですが、あのときは本当にすみませんでした…。

――そのときのレンタルさんの心境はいかがでしたか?

レンタル とにかく心配だったので、連絡が来たときは「生きててよかった」という気持ちでしたね。そのときのことで印象に残っているのは、こだまさんて意外とよく喋る方なんだなぁということです。

こだま 遅刻を取り戻そうという思いもありましたが、非日常な体験にテンションが上がっていたんだと思います。

――実際にレンタルされたこともあるこだまさんは、漫画『レンタルなんもしない人』を読んでみて、いかがでしたか?

こだま ツイートを膨らませて物語にしているのがすごいですよね。いいお話だなと思って読んでいたら、あとがきで「美化されている」とレンタルさん自身が書いているのが面白かったです。美化されすぎているから、信じないでねというメッセージが伝わってきました(笑)。

レンタル すごくいい感じのストーリーにしてくれているので、注意書きのつもりで書きました。漫画を読んで「こんな素敵な経験ができるんだ!」と、ハードルが上がっても困るので…。

明日終わるかもしれない、レンタルサービス

――レンタルさんは、今後もこのサービスを続けていくのでしょうか?

レンタル これからも続けるかどうかは、わからないですね。明日終わるかもしれないと思いながらやっています。今までと同じことを続けるのに飽きたら、何か新しいことを始めるかもしれません。

――こだまさんは、今後何かやりたいことなどありますか?

こだま 私は今まで自分の体験を基にした私小説だったので、次は小説を書きたいなと思っています。

――お2人で一緒に何かしても、面白そうですね。

こだま 実は、今年5月に同人誌を作ったのですが、それにレンタルさんも参加してくださったんですよ。でもよく考えたら、レンタルさんが何もしないことを極めようとしているのに、お願いしてはまずいですよね(笑)。

レンタル そんなことないです。こだまさんは、僕が炎上してるといつも励ましてくれるので、ありがたいなと思っています。

――最後にレンタルさんからダ・ヴィンチニュースの読者に向けてメッセージをお願いします。

レンタル できれば、漫画を読んだことがきっかけで、「レンタルしてみよう!」とは思わないでほしいですね。ハードルがかなり上がっていると思うので…。僕はひたすら、“なんもしない”だけですから。

取材・文=中村未来(清談社)