『ダンまち』が愛される理由とは何か――原作・大森藤ノ ロング・インタビュー(後編)

マンガ・アニメ

2019/9/14

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅡ』 毎週金曜24時30分より、TOKYO MXほかにて放送中 (C)大森藤ノ・SBクリエイティブ/ダンまち2製作委員会

 好評放送中のTVアニメ『ダンまちⅡ』特集、原作者・大森藤ノのインタビュー後編は、TVアニメ2期となる『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅡ』と原作小説の今後の構想について伺った。外伝小説、アニメ、マンガ、ゲームとさまざまな展開が並列し、『ダンまち』シリーズは大きな作品となった。そのすべての力を経て、大森氏は原作を書き続ける。はたして、その先に見えているものとは何か。

千菅さんには繊細な演技で、春姫のはかなさを演じていただきました

――いよいよTVアニメ2期が放送されています。大森先生は、この2期をどんなアニメにしたいとお考えでしたか。

大森:本編のアニメでは、TVアニメ1期で原作の第5巻までをアニメ化しました。2期は第8巻までをアニメ化しようということに、脚本会議のわりと早い段階で決まりました。原作の第1巻から第5巻までのテーマが「出会い」と「冒険」だとすれば、第6巻から第8巻は、「出会いの結実」と「ファミリアの絆」がテーマになる、と感じていました。

――脚本会議はTVアニメ1期同様参加されているんですよね。TVアニメ1期の脚本会議と2期の脚本会議の違いがあればお聞かせください。

大森: 2期の脚本にも深く関わらせていただいています。TVアニメ1期のときは、小説5冊分を1クール(全13話)にまとめるというのは大変だろうな、と思ったんです。でも、脚本家さんがうまく収めてくれたんですよね。2期は単行本3巻をたっぷり第12話を使うということだったので、たぶん入るだろうなという感覚があって。たっぷりと描いていただけるところもあったので、物足りないと思う読者さんはいらっしゃるとは思うのですが、自分としてはTVアニメ1期に比べて贅沢に尺をとっていただけたなと感じています。

――シリーズ構成について、大森先生から提案したことはありますか?

大森:基本的には脚本家さんにお任せしていますが、第1話については「ダンスパーティで終わっても良いんじゃないでしょうか」というような提案をお話しました。今回は引き、いわゆる各話の終わり方を意識した作り方になっています。原作からかなり膨らませたのは第5話ですね。第4話までの戦争遊戯(ウォーゲーム)から、第6話から始まる春姫編の間になる閑話休題の回なので、ここはオリジナル要素を入れています。

――2期は登場人物も増えましたね。

大森:そうですねえ。アニメーションの制作現場が大変になるだろうと思ったので、「カロリーが増えるところはバッサリとカットしていただいても構いません」とこちらからもお話しています。小説なら1行ですむところが、アニメでは30秒や1分かけないといけないときもあるので。原作のどこにカメラを振っていくかは、現場のプロデューサーさんやスタッフさんにお任せしています。

――2期では、ヒロインとしてサンジョウノ・春姫が登場します。大森先生からアニメのスタッフの皆さんにリクエストしたことはありましたか?

大森:自分は脚本打ち合わせのときに「とにかくかわいく描いてください」としか伝えてはいなかったと思います。収録現場にお邪魔したときに、春姫が登場するシーンはアニメにするとすごく難しそうだな、と感じましたね。小説だと地の文で説明ができるんですが、映像だとどうしても春姫自身で説明をしないといけないところがあって。導入のシーンはどうなるかなと、ドキドキハラハラしていました。

――春姫役の千菅春香さんのお芝居はどんな印象がありましたか。

大森:すごく繊細な演技で、春姫のはかなさを演じていただきました。(インタビュー前編で)ベル役の松岡(禎丞)さんと、ヘスティア役の水瀬(いのり)さんのお芝居には圧がある、というお話をしたのですが、千菅さんはその対極の演技をされている印象があって。すごく映えているな、と感じました。春姫はこれまで登場したキャラクターの中で最もつらい境遇を背負っているので、それを伝える千菅さんの演技はすごくハマっているなと感じました。

猛ダッシュしてくる松岡さんのベルに追いつかれないよう、原作のベルを描いている

――TVアニメ1期のときは「ミノタウロス戦をアニメで見たい」という期待をされていたそうですが、2期で楽しみにしていたシーンはありますか。

大森:TVアニメ1期から劇場版、2期と回を重ねるにつれて、アニメのスタッフの皆さんと映像を作る、という関わり方にシフトしていった感覚があって。TVアニメ1期のときのように「これが見たい」というよりも、「これをどうやって作るのがいいだろう」という関わり方になっているんですね。そういう意味では、どのシーンも楽しみにしています。ただ、春姫編のラストの絵コンテを見たときは、すごく感動しまして。プロデューサーに「お願いですから、どこもカットしないでください」とお願いしました。春姫編のラストって、いろいろな勢力が介入して、戦争遊戯よりも厄介なんじゃないかなと思うんです。それを上手く見事に描いてくださったという感じがあって。春姫編の着地点はすごく楽しみにしています。

――2期はたくさん曲者のキャラクターが登場しますね。大森先生がアニメになってより魅力的になったなと感じるキャラクターはいますか。

大森:素敵なキャラクターはたくさんいたんですけど、やっぱりアポロンがすごすぎて(笑)。「原作でも絶対にもう一回書くんだ!」と心に決めたくらい、逢坂(良太)さん(アポロン役)のお芝居に魅了されてしまいました。逢坂さんのお芝居は、予想通り期待を飛び越えてくれた感じがあって。悔しくもあり、嬉しくもあり、という感じでしたね。ここでも化学反応が起きたな、キャラクターを乗っ取られたな、という感じがありました。

――アニメーションでは、アポロンの表情も強烈でしたね。変顔がすごかった!

大森:そうですね。作画の力の掛け具合がすごかったです。『ダンまち』は「Ⅱ」になっても、恵まれている作品だな、と個人的に感じています。

――2期におけるベルやヘスティアの成長や変化はどのように受け止めていますか。

大森:ベルが成長するに連れ、いわゆるラノベの鈍感主人公にはなれないだろうなと、原作を執筆している段階で感じていました。2期の中でも、「神様とは何ぞや」という、ヘスティアの告白に対するベルのアンサーを明らかにしていて。それは松岡さんと水瀬さんのお芝居にも出ていると思います。水瀬さんは以前、「ここでベルを落とす、という気持ちでお芝居しました」とおっしゃっていたんです。そこで松岡さんはトボけているんですよね(笑)。松岡さんは『メモリア・フレーゼ』などでベルの背景を読み込んでくださっていて、松岡さんなりの方向性を明確にお持ちになっているので、今後も松岡さんと水瀬さんのお芝居を楽しみにしていきたいと思います。

――キャストさんのお芝居から原作が影響を受けることがあるんですね。

大森:そうですね。特に松岡さんの演技はいつもワクワクして聞いていますね。松岡さんの演技の組み立て方をよくお聞きすることがあるんですが、やはりキャストさんならではの視点をお持ちになっていて。自分にはない発想をされているんです。この松岡さんの考え方を、なんとか自分にインプットして、原作に活かすことができないかな、とチャレンジしています。原作のベルはすでに第15巻分の成長を遂げているのですが、その後ろから松岡さんのベルがあとから追いかけてくる。猛ダッシュしてくる松岡さんのベルに追いつかれないように、原作のベルを描いている感じがありますね。

――原作の『ダンまち』のお話が出ましたが、ベルたちの今後の構想はどのようにお考えになっていますか。

大森:ベルをはじめとする、主要キャラクターたちの最終巻までのストーリーラインはすでに決めているんです。でも、書いていると良い意味でキャラクターたちが暴走してしまって。思いもよらなかった展開になることが往々にしてあって。たとえば第12巻のあたりのベルを書いたことで、ベルはもっと魅力的なキャラクターになる、と確信しました。

まだまだいろいろなことにチャレンジして、いろいろな経験を積みたい

――小説を執筆されていて、最も筆が乗るキャラクターは?

大森:やっぱり書いていて、一番おもしろいのはベルなんですね。ベルが育って、巣立ってくれると、物語が盛り上がるな、という印象があります。アニメ、マンガ、ゲーム、いろいろなものの影響を受けて、自分がアウトプットするベルが成長しているんだろうなと思います。アニメ、マンガ、ゲームを経験していなければ、今のベルはいないと思います。だから、関係者の皆さんの力を借りて書いている作品が『ダンまち』なんだろうなと思っています。

――第1巻をお書きになっていたときはまだアニメ化も行われていない頃ですから、現在はずいぶん状況が変わりましたね。

大森:第1巻は担当編集さんと二人三脚で書いていたのですが、当時はまだ視野が狭かったと思います。前しか見ていなかった感じがあるんですが、いまは鳥瞰、俯瞰して全体を見ながら書くことができている感じがあります。第1巻のときは二次元で世界を見ていたけれど、いまは三次元で見ることができている感じでしょうか。

――ヘスティア・ファミリアの力があって、今のベルがいるように、いろいろなメディアの力があるから、今の『ダンまち』がある。

大森:そうですね。だから、まだまだいろいろなことにチャレンジして、いろいろな経験を積みたいと思っています。やりたいことがありすぎて、『ダンまち』シリーズで構想していることの全部を書ききれるのか、という心配もありますね。本編だけでなく、『オラトリア』『ファミリアクロニクル』でも描きたいことがあるので。先ほど、ベルのストーリーラインは最後まで決まっているという話をしましたが、ベルのストーリーが終わっても、『ダンまち』シリーズは続いていくんだろうな、という感覚があります。もちろん、状況が許せば、という前提がありますが、『ダンまち』シリーズのファンの皆さんは、まだまだ寂しい思いをすることはないんじゃないかと。

――『ダンまち』シリーズは本編小説だけでなく、『外伝』もあるし、アニメもゲームもある。大森先生の仕事は『ダンまち』漬けになりそうですね。

大森:本当は新作も書きたいんですけどね(笑)。でも、まわりの皆さんは『ダンまち』シリーズをもっと書いてほしい、と言ってくださるので、それがありがたくもあり、恐ろしくもあり、といった感じです(笑)。

――新作も楽しみにしていますが、『ダンまち』シリーズの今後も期待しています。

大森:『ダンまち』シリーズを書き始めて6年目になりますが、「歴史」だなと感じることが出てきていて。この「歴史」を途絶えさせるわけにはいかないと思っています。自分の体力が許す限り、「歴史」を続けていきたいし、発展させていきたい。たとえ新作を発表したとしても、『ダンまち』シリーズは自分にとって特別な作品だということは変わらないと思います。まだまだ、このシリーズを楽しんでいただけると嬉しいです。

取材・文=志田英邦

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