甲本ヒロト「曲作りはいつも全部デタラメ」真島昌利「結局、自分たちが楽しいと思えるかどうか」

あの人と本の話 and more

2019/10/10

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、ニューアルバム『PUNCH』のリリースを控えるザ・クロマニヨンズ甲本ヒロトさんと真島昌利さん。お気に入りの本の紹介とともに、2人が生み出す音楽制作の裏側についてお話をお聞きしました。

ザ・クロマニヨンズさん
ザ・クロマニヨンズ
ざ・くろまによんず●甲本ヒロト(Vo.)、真島昌利(G.)、小林勝(B.)、桐田勝治(Dr.)のメンバーで2006年より活動開始。ほぼ年に一度のペースでアルバムをリリースし、同時にツアーも展開。一発録りのレコーディングやモノラル録音など、ライブ感のある音作りに定評がある。10月30日より全国のライブハウス、ホールにて58公演のツアーを開催。

 お2人が今回推薦本として紹介してくれたのは『鼻行類』(甲本さん)と『オモライくん』(真島さん)。そのセレクト理由とは――?

甲本「以前、ダ・ヴィンチさんにインタビューをしていただいたことがあって。そこでは別の本を紹介したんですが、会話の途中にこの『鼻行類』が出てきて、ものすごく盛り上がったんです。そのとき、“どうしてこっちをおすすめにしなかったんだろう”って後悔して(笑)。リベンジの意味も込めて、今回真っ先にこの本を挙げました」

 1941年にハイアイアイ群島で発見された鼻で歩く哺乳類(=鼻行類)。その種類は豊富で、それぞれに特徴を持っている。残念ながらすでに絶滅してしまったが、本書はそんな鼻行類の生態を細かく記したものである。……と、実はこれらはすべてフェイク。しかし、あまりにも内容が具体的で、“本当にいるのではないか”と錯覚を起こしてしまうほどだ。

甲本「僕は普段、あまり本を読む方ではないんです。でも、これを知るきっかけになった清水義範さんの『蕎麦ときしめん』もそうですが、自分にハマるものがあると熱中してしまう。『平行植物』(レオ・レオーニ:著、宮本 淳:訳)もそうですね。2回目以降はファンタジーだってわかっていても、楽しんで読んじゃいます」

 一方、真島さんがおすすめするのは永井豪の『オモライくん』。1972年の作品で、何度か再版されたものの現在は絶版状態。しかし、古本も品薄になるほど今なお多くのファンの間で愛され続けている傑作ギャグ漫画である。

真島「主人公のオモライくんはとっても純粋な小学生で、やりたい放題なんです。それを見て、“これだけ自由に生きれたら最高だなぁ”と子供心に思ったのを覚えています(笑)。リコーダーを買うお金がないから、自分の体の垢を削り取って、それを粘土のように固めて作ったり。あるときは垢が体に溜まりすぎて、その中で蟻が巣を作っていたりもする(笑)。このぶっ飛んだ感じがたまらなく最高で。こんな素敵な作品を絶版にしちゃ絶対にダメだなって思いますね」

 実は甲本さんも無類の漫画好きだ。そこで、2人に好きな作家をうかがってみた。

甲本「コンタロウさんやとりいかずよしさんが好きですね。浮世離れしたバカバカしさがあって本当に面白いです」

真島「僕は諸星大二郎さんの作品をよく読みます。あの独特の絵のタッチが大好きで。印象深かったのが『生物都市』。子供の頃って、怖いものや不思議なものにどうしてもそそられるんですよね」

甲本「あ〜、確かにそうかもね。『恐怖新聞』(つのだじろう)とか、みんな読んでたもんなぁ。“俺んちにも幽霊が来るんじゃねぇか?”って本気で怖がってた(笑)」

真島「俺、ちょうどこの前、読み直したばかりだよ(笑)。やっぱり怖かったぁ」

 2人が好むのは王道の少年漫画とのこと。懐かしい作品が挙げられる。

真島「最近はもう雑誌で少年漫画を買って読むことはなくなりましたね」

甲本「そうだね。少年漫画の作風が僕らの思っているイメージとちょっと外れてきているからなのかなぁ。それか、僕らが歳をとっただけなのかもしれないけど。思えば、僕が最後まで読んでいた漫画雑誌は『コロコロコミック』だった。『おぼっちゃまくん』(小林よしのり)とか『ゲームセンターあらし』(すがやみつる)とか」

真島「(『ゲームセンターあらし』では)超高速でゲームのレバーを回す必殺技とかあったよね(笑)」

甲本「あった。『炎のコマ』ね(笑)。僕はああいうところにこそ、少年漫画の真髄があるような気がするんだよね。なんていうか、爆裂しててくんないと面白くない(笑)。だから、『オモライくん』や『おぼっちゃまくん』みたいに、今ではコンプライアンス的にまずそうなものばかり読み返したくなっちゃうのかも(笑)」

 漫画の話になると止まらなくなる2人。そんな彼らが、もうすぐ通算13枚目のアルバム『PUNCH』をリリースする。余分なものが一切ないエネルギッシュなサウンドと、耳を心地よくさせてくれる馴染みのいい魅力的な言葉たち。ザ・クロマニヨンズが作り出すストレートな楽曲は世代を超えて愛されている。

甲本「僕らの歌詞を好きだと言ってくださる方もいますが、歌で自分の感情を真っ直ぐ届けてやろうと思って書いたことは一度もないです。そんなカッコいいものじゃなく、曲作りはいつも全部デタラメ。たとえば、鼻歌の延長みたいなところから始まって、そこに自分の意識を持っていくこともあれば、無意識のままメロディを作っていくこともある。自分でも何が起こるかわからない感じで、それがいつしか1つの曲になっていくんです」

真島「僕もそうかな。曲を作り始めるときは何も考えてない。ワンフレーズ目が出てきたときに、そこから連鎖してメロディが生まれることもあるけれど、ほとんどが偶発的に形になっていく」

甲本「作詞もそうで。“歌詞を書いている”という意識はなくて、“歌”を作っているんです。メロディに合った心地いい言葉を自然と選んでいる感じ。だから、そこに意味なんてものはほとんどないんですよね(笑)」

 アルバムタイトルも同じだそうだ。

甲本「そりゃそうですよね。それぞれの楽曲にテーマやメッセージ性がないんだから、頑張って探したところでアルバムを総称する言葉なんてどこにもない(笑)。結果、アルバムタイトルもデタラメになる。メンバー4人で、思いついた面白そうな単語を出し合っていく。仮に、目の前に紙コップがあったら、『じゃあ、“紙コップ”なんてどう?』って。アルバム名は次のツアータイトルになるし、グッズにも使われるので、『Tシャツに“紙コップ”って書いてあったら面白いね』って(笑)。そういうテンションです」

 そうした中、今回タイトルとして採用された言葉が『PUNCH』。

甲本「なんだか70年代の少年漫画に出てくる主人公のTシャツに書いてありそうじゃないですか、『PUNCH』 って(笑)。さっき話してた『古い漫画が好き』という話題に偶然リンクしましたけど、きっと潜在的にその時代に面白さを感じているんでしょうね」

真島「うん、そうだね。結局、自分たちが楽しいと思えるかどうか、それが決め手のひとつになっていることは間違いない」

 そしてリリース後には全58公演の全国ツアーも開催される。最後に意気込みを聞いた。

甲本「ありがたいことに、全国どこに行ってもお客さんは最高です。だから、楽しみしかないです。ライブにはそのときしか聞けない音があるので、ぜひ遊びに来てください。できれば“PUNCH”と書かれたツアーTシャツも買ってほしいなぁ。これを着れば、きっとみんな70年代の漫画の主人公になれますからね(笑)」

(取材・文:倉田モトキ 写真:干川 修)

 

アルバム『PUNCH』

アルバム『PUNCH』

ザ・クロマニヨンズ 10月9日発売 アリオラジャパン 2913円(税別)
13枚目となるオリジナルアルバム。ギター、ベース、ドラム、そしてボーカルの“4つの音”だけで奏でる純粋で力強いサウンドは今回も健在。シンプルながら文学的な香りを漂わせる歌詞も聞く者の胸を打つ。初回盤は紙ジャケット仕様。また60年代のフリップバックE式盤を可能な限り再現したアナログ盤も完全生産限定で同時発売。