誰かを幸せにする曲を、残していきたい。新たな決意を携え、LiSAは進み続ける――LiSAインタビュー(後編)

エンタメ

2019/12/11

 LiSAの前作シングルであり、TVアニメ『鬼滅の刃』オープニングテーマ“紅蓮華”のインタビューの際、「今までとは違う道を見つけるべきところに来ている。ある種のターニングポイントに立っているのでは」という話をさせてもらった。こちらが指摘するまでもなく、LiSA自身が120パーセントの力で駆け抜けてきたこれまでの道のりを振り返り、「シンガー・LiSA」のあり方に想いをめぐらせていた。そのときに語られた「身を削って頑張ってる自分が好きだった」という言葉は象徴的で、そうやって力を尽くすLiSAの姿に聴き手は共感し、彼女を支え、声援を送ってきたわけだが、現状把握と「これからも進んでいきたい」と願う気持ちの先に、LiSAはひとつの答えを見つけたようだ。それは、「残したい」ということ。自らの想いを注ぎ込んだ音楽も、まだ見ぬ誰かを幸せにする音楽も、これからの自分が残していくべきもの。表題曲“unlasting”をはじめ、今回のシングルに収められた曲たちは、LiSAの中に芽生えた新たな決意を伝えてくれる。

キリトくんが生きていること、世界がまだ終わっていないことが、アリスにとっての命綱みたいなものだと思う

――『ソードアート・オンライン』の楽曲を担当するようになって、もう7年以上になるじゃないですか。それぞれのフェイズで立ち位置が変わってきた側面があると思っていて、最初は巨大な作品に対して挑んでいくスタンス、あるときは戦友のような関係だった、という話もしていたけど、今回の“unlasting”の場合はどういう感じだったんですか。

LiSA:“ADAMAS”のときは、なんならわたしのほうがちょっと先輩だと思ってました(笑)。だから、「自分がしっかりしなくちゃ」って思っていて。だけど今回は――なんて言ったらいいかな、言葉が難しいんですけど、わたしのほうが先輩で、みんなが動かしている『SAO』を応援する気持ちというか。変なたとえになっちゃうけど、子どもたちがいっぱい頑張ってるときに、お弁当を作ってそっと優しく渡すお母さん、みたいな気持ちです(笑)。

――先輩どころか、親になった(笑)。

LiSA:(笑)そういう感じです。ちょっと年上な感じ、というか。先陣切って、「やるぞ!」っていう感じではなくて――。

――それこそ“ADAMAS”は、まさに先陣切って行く感じでしたね。

LiSA:うん。今回は、でき上がったところに、添えさせてもらうような感じ――わかった! “ADAMAS”では「うえ~い!」ってやってたんだけど、そのときのわたしは3年生だったんです。

――なんの?(笑)。

LiSA:わかんない(笑)。大学とか、高校とか。だけど、卒業してOBになりました。OBなんだけど誘ってもらったというか、入れてもらった、というか。お母さんよりも、先輩のほうが近いかな。

――おそるおそる門を叩いた“crossing field”から時を経て、OBになった(笑)。

LiSA:卒業(笑)。「部活に入れてください!」っていうところから始まって。

――『ソードアート・オンライン アリシゼーション』のラストは非常に衝撃的な展開があって、今期のストーリーではキリトが最初から廃人のようになっているし、ユージオもいなくなってしまった。物語の中心であるアリスにとっては、大事な人を同時に失ってしまった状況で、アリスの心情をどう解釈・想像していたのか、という点も、“unlasting”を制作する上で重要だったと思うんですけども。

LiSA:やっぱり、アリスはそれまで自分の過去を知らなくて、やっとそれに気づいたところで大事な人がいなくなってしまって。誰かを守るために「自分がなんとかしなきゃ」みたいな気持ちがあって――“ADAMAS”には、自分の強さを信じたり、誰かを引き連れて、「みんながいるから、わたしリーダーとして頑張るわ」みたいな感じがあったけど、今はキリトくんが生きていること、世界がまだ終わっていないことが、アリスにとっての命綱みたいなものだと思うんですね。きっと、「わたしが最後の命綱を持ってる」みたいな気持ちで、アリスは戦ってるんだろうな、と思いました。だけど、大事な人であるキリトくんは話してくれないし、どう思ってるかもわからない。もしかしたら「殺してくれ」って思ってるかもしれないし、「もうやめろ」って言いたいのかもしれない。だけど自分が信じたものを信じてやっていくしかないっていう孤独感は、すごくあるだろうな、と思いました。相手が同じ気持ちでいてくれるかどうかわからない、だけど信じるしかないから、「同じ気持ちでいてくれるはず」って思って、アリスは戦ってるんだと思うし、きっとアスナもそうだと思います。

――自分が正しいと思うことに対して、誰も「それでいい」と言ってくれない場所にアリスはいる。

LiSA:うん、そうですね。

わたしの夢をいっぱい叶えてもらって、幸せもいっぱいもらったので、次はちゃんと残していける人になりたい

――“ADAMAS”“紅蓮華”を経て、LiSAという表現者は変わらざるを得ない部分に直面してたと思うんですよ。それこそ、“紅蓮華”のときには「違う道を見つけるべきところに来ている。ターニングポイントなのではないか」みたいな話をさせてもらっていて。だけど“unlasting”は、ちゃんとひとつの答えになっている。だから、自分で傷をえぐったけど、ある意味ホッとする部分もあるんじゃないですか。ちゃんと出口があった、というか。

LiSA:そうですね。やっぱり、デジタルリリースで出したときに、みんながちゃんと理解しようと思って受け取ってくれたことは、わたしの一番の安心材料でした。それはホッとした瞬間でもあるし、「こうやって歩いていけるなら、わたしはまだできることがあるな」って思いました。

――まあ、“紅蓮華”のときにも「まだ咲きたい」とは言ってたし(笑)。

LiSA:今回は「裂いてる」ほうだけど(笑)。

――切れ味がある(笑)。結果、表現者としてしっかり前進できている感覚もあるのでは?

LiSA:はい。やっぱり、「LiSAをやらなきゃ」っていう責任はやっぱり脱ぎ切れなくて――それは脱がなくてもいいものなんですけど、「LiSAをちゃんとやらなきゃ」「今まで作ってきたLiSA像を貫かないと」とか、自分の中で勝手に固めてきた「LiSAらしさ」みたいなものに、自分自身が固められていたと思います。それは、歌い方もそうだし。でも今は、ほんとに自分の中にあったものを歌えてる感じがします。頑張らないという意味ではなくて、歩きやすくなった。LiSAを愛しやすくなった、と思います。

――LiSAを愛していたのは、もともとそうだったのでは?

LiSA:だけど、自分が固め続けてた「ならなきゃいけないLiSA」でいることに対しては、1年前までは「これをやり続けるのは大変だぞ」って思ってました。ずっと、進んでいくために「うんこらしょ」「どっこいしょ」って歩いてきたんだけど、今はもうちょっとこう、スッといけるというか、人間になった感じがしますね。身軽になった、というか。

――だけど同時に、今まで感じてきた想いも、ちゃんと自分の中にあるんだよっていう。

LiSA:うんうん。そうです。

――今回のシングルはカップリングも非常に充実しているなあ、と思います。いつにも増して、音楽的に豊かな曲たちが揃った印象がありますね。

LiSA:全部、大事な人に向けて歌ってる曲ですね。それこそ“ハウル”とかは、“ADAMAS”とも“紅蓮華”とも違って、血眼じゃない(笑)。でも、全部そうかも。全曲、血眼な曲じゃないですね。自分から「好き!」って100回言わなくても、1回大事な「好き」がちゃんと伝わるような伝え方ができたと思います。

――「LiSAの物語」があって、それにエモーショナルに共感することでついてきてくれる人が多かったわけで、それはもちろん今もそうなんだけど、それ以外の選択肢も音楽としてちゃんと提示できてるんだなあって、カップリングの曲たちを聴いてると感じるのですよ。

LiSA:そう! そうです(笑)。

――(笑)「LiSAの物語」に共感していると、音楽がめっちゃ響いてくる。それに加えて、今までの物語を知らなくても、ちゃんと愛される音楽がどんどん生まれていく。今のLiSAの音楽って、そういうものなんじゃないかな、と思います。

LiSA:それです(笑)。

――そうですか(笑)。

LiSA:だって、ほんとにそうだもん。やっぱり、自分の物語として歌詞や曲を書き続けると、歌えなくなってくる曲たちが増えてくるんですよ。『紅蓮華』ツアーの中でも、「ここに、こういう曲が足りないんだよなあ」って思ったとしても、たとえば「でも、ここは“無色透明”じゃないんだよね」って思ったりするんですね。「今の気持ち、これじゃないんだよなあ」みたいな。今やっているライブ、わたしの今のスタンスに当てはまる曲がない、と思ったときに、それってその都度濃厚な血をたくさん注いできて、その場面での自分の気持ちが強すぎたからなんだなって。だから、そういう場面になったときに、「誰かの歌」って言ったら変かもしれないけど、もうちょっと味わいやすい物語や言葉、音楽をお届けしたいと思いました。

――それが、これからの音楽への挑み方。

LiSA:そう。なんか、「残したいな」って思ったんです。“ハウル”の歌詞に、《最後の最後に答え合わせをしよう》って書いたんですけど、死ぬときにならないと正解か不正解かなんてわからないし、死ぬときにならないと後悔してるのか、してないのかもわからないなって思って。だから、自分が死んだときにしか誰かが気づけないんだったら、今のうちにいっぱい残しとこうって思いました。音楽をやらせてもらっていて、楽しく生きられるためのものをやってるんだから、後から誰かが見つけてくれて、明日から強く生きられるような、遺書をたくさん残しておきたい(笑)。せっかくだったら、誰かが見つけたときに「LiSA、苦しかったんだね」って思われるような曲じゃなくて、見つけてくれた人たちが「自分たち、こんなに愛されてたんだ。じゃあ頑張ろっ」みたいなことを思える、曲というか遺書を残したいと思いました。

――遺書って(笑)。

LiSA:遺言?(笑)。遺書って、生きているときにどんなことがあっても、やっぱり死ぬときには人の幸せを願うものなんです。あとから「あの人はすごかった」って言われることって、よくあるじゃないですか。だから、今のわたしが言ってることに説得力がなかったり、伝わらない人に対しても、わたしがいなくなったあとに曲の説得力が増すかもしれないから、そういう人たちがみんな幸せに過ごせるように、「生きてけよ。お前ら」みたいな(笑)、遺書を残したいんです。自分のことを歌った歌ばかりじゃなくて、みんながその先に生きていけるような音楽を、わたしは残していくべきだなって思います。

――なるほど。でも、今のたとえはすごくわかりやすいかも。「LiSAの物語」から生まれた曲は、最初にリスナーに触れた瞬間に最大の力が出るし、熱量もマックスになる。でもこれからは、生まれた時点の熱量に頼らない曲も作っていきたい、ということですね。

LiSA:そうです。だから時代を超えていってほしいし、「大丈夫だよ」って言いたいし、今度はわたしがちゃんと幸せを残していける人になりたい。わたしの夢をいっぱい叶えてもらって、幸せもいっぱいもらったので、次はちゃんと残していける人になりたいなって思います。

――素晴らしいじゃないですか。

LiSA:わたしも子どもの頃、いっぱい愛情を持ってやってくれてたことを愛情だって気づけなかったし、側にいるときにはわからないこともあったりするじゃないですか。でも、歳を重ねるうちに、それこそ死ぬ間際にもわかってくることはいっぱいあるのかな、と思っていて。だって、死ぬ間際になって「あ~、最後にラーメン食いたかった。バタッ」とはならないじゃないですか(笑)。最後は、「お前ら元気でやれよ~」って思うわけですよね。だから、最終的には自分の欲望じゃないんだなって思うんです。

――パーソナルな体験から行き着いている考え方なんだろうと思うけど、だからこそめちゃくちゃリアルな話ですね。だって、それはきっと誰もが同じだから。

LiSA:そう。“unlasting”も、残された人のための曲を書こうって思ったんです。大事な人をなくした側の人、悲しみを抱えた側の人の歌です。

――だから「悲しいんだぜ」っていう話をするのではなくて、「悲しい」という感情そのものを描かないといけなかった。本当の意味での悲しい、本質的な意味での寂しいを描く必要があって。

LiSA:うん。そこに、わたしの血もいっぱい混ざってます(笑)。

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取材・文=清水大輔  撮影=森山将人
スタイリング=久芳俊夫 ヘアメイク=氏家恵子