紅白初出場決定! 新曲“unlasting”が描く「本質的な感情」はどこから生まれたか――LiSAインタビュー(前編)

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2019/12/10

 この記事はLiSAのニューシングル『unlasting』のインタビューなのだが、まずはこのことに触れないわけにはいかない。11月14日、LiSAにとって初となる、年末の紅白出場が決定した。このトピックは、発表当日ネット上を駆け巡り、「紅白歌合戦」を抑えてTwitterトレンドの世界1位に躍り出た。「LiSAの紅白出場」を一緒に喜ぶ仲間が、こんなにもたくさんいる。そのことが驚きでもあり、LiSAの歩みを長く見続けてきた身として、誇らしくもあった。僕がLiSAのライブを観て衝撃を受けたのは、2012年4月に行なわれた日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブのDVDを観たときのこと。映像を通して伝わってくる、LiSAのライブが持つ熱さ、激しさ、楽しさ、そして目の前の観客ひとりひとりに届けたいと願い、力を尽くすことで生まれる、ライブ空間に満ちた優しさ。「こんなライブ、絶対に他の誰にもできない」と思ってきたし、同じことを感じる聴き手がたくさんいたからこそ、紅白初出場のニュースに、多くの人が沸いたのだと思う。

 そんなLiSAの新曲“unlasting”は、TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』のエンディングテーマなので、すでに耳にした方も多いだろう。これまでLiSAが届けてきた楽曲の延長線上にありつつ、圧倒的に新しい、名バラードが誕生した。誰もが心の奥底に持つ本質的な感情を歌詞の中で描いてみせた“unlasting”は、どのようにして完成したのか。前後編2本立てのインタビューで、新曲“unlasting”の背景と、「今、LiSAが思うこと」に迫っていきたい。

「みんなと一緒に大人になっていきたい」って思うようになったのが、わたしの中で一番大きな変化

――“unlasting”を聴いて、ビックリしました。すっげえ曲だなあ、と。

LiSA:曲が遅いから?(笑)。

――(笑)それもあるけど、聴いた人はみんなビックリしたんじゃないかと思うんですよ。スロウで歌い上げる系の曲がなかったわけじゃないし、熱量とテンションでブチ上げたり、ポップで楽しい曲ばかりだったわけでもない。だけど、それを踏まえても、「まったく新しいLiSAの曲だな」と感じて。

LiSA:ありがとうございます。“unlasting”は、まず『ソードアート・オンライン(アリシゼーション War of Underworld)』のエンディングテーマで、『SAO』の根底にあるテーマがきっかけになっていなかったら、この曲を出す勇気が持てなかったんじゃないかなあ、と思っていて。何もないときに、それこそ突然この曲を出したら、たぶんみんなもビックリするだろうな、と思ったし。

――いや、何かがあってもビックリはする(笑)。

LiSA:(笑)ある意味、ちょっと遠くに感じてしまうような誤解が生まれないといいなあ、とは思いました。曲だけを聴いてもらったときに、「違うんだよ、これはこういう意味でね」って、直接言えるわけじゃないから。やっぱり、聴いた人にとってはファーストインパクトで感じることがすべてだと思うし、それで寂しくならないといいな、と思っていて。とはいえ、1年前くらいから薄々感じていたことですけど、ずっとマックスでやり続けて、120パーセントで進み続けてきた中で、「今までやってきたようなテンポの曲たちをずっと作っていくことが本当にできるんだろうか?」っていう不安があって。ずっと、自分の中では「いつ終わってもいい」みたいな覚悟を持ってやってきたけど、いつしか自分の中の正解というか、未来が見えるようになってきたんです。

――正解とは?

LiSA:「みんなと一緒に大人になっていきたい」って思うようになったのが、やっぱりわたしの中で一番大きな変化でした。そうなったときに、たとえば“ADAMAS”のような曲ばかりをずっとやり続けることが、わたしの大人のなり方ではないなって思って、その後に出したのが“紅蓮華”と、今回の“unlasting”なんですけど、ライブのあり方も含めて、少しずつナチュラルになれた気がします。いつの間にか自分で作っていたLiSAではなく、「LiSAにならなきゃ!」っていう方向でもなくて。自分自身がずーっと歩いていけるための正解を見つけてきて、“unlasting”はその中のひとつというか、この曲が受け入れてもらえたら、わたしはもうひとつ靴を脱いでもいいのかもしれない、みたいな気持ちです。もう1枚、LiSAとして羽織っているものを脱いで、みんなに近い曲があってもいいのかもしれない。もう一歩近く、もっと素直に、無理をしない大人――大人、という表現は正しくないかもしれないけど。

――「大人感」は、ここ何年かの活動の中でひとつのキーワードになると思うんだけど、“unlasting”という曲は、それだけでは説明できないと思うんですけども。

LiSA:うん、そうですね。

――出し尽くすメンタルでひたすら走ってきて、その側面がみんなに愛されてきたけれども、そうではない自分もちゃんと認めてもらえる、受け入れてもらえることへの信頼があるから、“unlasting”のような曲も生み出せるんじゃないかな、と。

LiSA:はい。

――だからちょっと意外だったのは、さっき「勇気」というワードが出たことで。聴いてくれる人の信頼関係はしっかりできているわけだけど、それでもこの曲を出すのは、勇気が必要な決断ではあった、と。

LiSA:それは、1回聴いただけで伝わりやすくて、わかりやすくて、「カッコいい~!」ってなる曲ではなかったからです。もっと味わってほしかったというか、何度もこっそり触れてほしかった、というか。

――ファーストインパクトで引っ張っていく曲が多かったことは事実としてあると思うけど、そうではない曲のあり方を目指して曲を作って、それを出すことに対しては勇気が必要だった?

LiSA:そうですね。毎回、挑戦ではあって、“ADAMAS”を出すときも“紅蓮華”を出すときも、“Rising Hope”や“シルシ”を出すときも、自分の中で描いてきた道筋の延長線にはいたんですよ。でも“unlasting”の場合は、一歩先のことだったというか。今までは、自分とちゃんと話し合って出していく一歩が、自分の中で確信に近かったんです。“unlasting”は、シンプルに言うと、「ロックヒロイン」っていう名前を背負ったLiSAが、このバラードをシングルとして出したときに、「ロックヒロイン」という言葉からLISAの音楽を思い描いている人が受け取ってくれるのかな?っていう不安はありました。

――音楽との向き合い方が、キャリアを重ねたり、自身のリアルと照らし合わせて変わっていく中で、「ロックヒロインであること」は今も変わっていない。

LiSA:たとえば、わたしが思い描いてる「ロックヒロイン」が大人になって、先を歩いてる人として思い浮かべるのは、YUKIさんなんです。JUDY AND MARYのときにロックの姫で、そこからYUKIになって自分の音楽のやり方を一生懸命探して。最初はずっとロックをやっていて、YUKIさんになってからも続けていたけど、その先に今のフェアリー感があるわけじゃないですか(笑)。この間会ったから名前を出すと、シンディ・ローパーもずっと進化していて――。

――シンディ・ローパーに会った!?

LiSA:会った(笑)。シンディのライブに行って、対面しました。ずっとロックヒロインだし、キュートだし、だけどサウンドもずーっと進化し続けてますよね。

――見据えてる対象がすごい(笑)。

LiSA:(笑)自分が大人になっていくときに、先を歩いて行く人にはそうやって道を作ってる人がいっぱいいるなあって思います。

見ないように、思い出さないようにしてきた傷を、もう1回開けて、深く切って、のぞいた

――なるほど。話を戻させてもらうと、“unlasting”も他の曲たちと同じように、今までの楽曲の延長線上にはありつつ、チャレンジの側面もあった、と。

LiSA:だけど、ちゃんと自信もあって。一番大事な譲れないこととして、すごくいい曲なんです。そこに、ちゃんと今までと歌ってきた曲と同じように――“best day, best way”を歌ってきたLiSAも“Rising Hope”を歌ってきたLiSAも、“ミライカゼ”を歌ったLiSAも“シルシ”を歌ったLiSAも、全部わたしの傷を切って、その中から出してきた血で書いてるような曲ばかりですけど、そういう意味では“unlasting”も自分の中の血を出して、曲に込めているから。今までの曲を好きで聴いてくれている人たちは、きっと“unlasting”もLiSAのレールの上に乗っているものとして受け取ってくれるだろうなって思ってます。

――血の話、面白いですね。“unlasting”は、どこから出た血で書かれたものなんだろう?

LiSA:どこから? 箇所のことですか?(笑)。

――(笑)いや、部位ではなくて、深さの話。“unlasting”を聴いたときに浮かんだ言葉が、「反射」と「意識」だったんですよ。LiSA楽曲は反射的であることが多いのかなと思っていて、自身が何かを感じていることは前提で、外から来た何らかの要素に反応することで生まれてきた曲がたくさんあったんじゃないかな、と。一方で“unlasting”は、「反射」の側面もありつつ、奥底から「意識的に」感情を引っ張り出してくるようなものを感じる曲だと思ったんです。

LiSA:そうです。もう閉じてるはずなのに――閉じて、何枚も何枚もターンオーバーを重ねて、傷がどんどん地層に埋まってきたんですけど(笑)。それをもう1回、奥にたどり着くまで切って、切って、開けて、「あのときのわたし、どう思ってた?」「あのときのわたし、なんで泣いた?」「わたし、なんでこのとき怒ったんだっけ」「なんでこのとき、わたしは悲しい気持ちになったの?」っていう感情を、その都度埋めて、見ないように閉じてきて。もう見ないように、思い出さないようにしてきた傷を、もう1回開けて、深く切って、のぞいたんです。

――それ、めっちゃ痛そう……(笑)。

LiSA:そうなんです(笑)。

――それは“unlasting”という曲に呼ばれてやったことなのか、自分でそうしたいと思ったのかでいうと、どっちなんでしょうね。

LiSA:自分でしようと思いました。たぶんこれを考えたきっかけは『SAO』なんですけど、物語を読んで、進んでいくにつれて、テーマは「悲しみ」だなって思ったんです。大事な人がいなくなってしまうことの物語で――わたしも、いつ今がなくなるかわからないって思っていて、だからこの感情は、自分の中にあるものだなって思いました。

――それは、パーソナルな体験の話? 歌を歌うLiSAとして、ではなく。

LiSA:どっちも、ですね。

――歌を歌うLiSAとして、大事なものをなくす、失う経験が、一番大きな傷であると。

LiSA:そうですね。

――それを今、あえて自分でえぐってみる試みをしようと思ったのはなぜ?

LiSA:自分の気持ちを振り返ってみると、いつもはすごく感覚的だから「そこに言葉がある」という感じではないんだけど、長く歌ってきて、やっぱり失ったものもわたしの中ではたくさんあるんですね。でも、自分を見てくれる人たちもたくさんいて、今ここにいるわたしが幸せだし、これでいいと思えてるから、だと思います。

――今が幸せ、今がこれでいいと思えるから、自分の傷を深くまでのぞくことができる。

LiSA:はい。

――確かに、自分が揺らいでるときに過去の傷を掘ることって、なかなかできないですしね。

LiSA:うん。“unlasting”っていうタイトルをつけたけど、やっぱり同じ人たちとずーっと一緒にいることはできないと思うんですよ。それと同じように、いい意味に考えると、悲しみや苦しいことも続いてはいかなくて、ちゃんと超えていけるし、乗り越えていけるものなんだろうなあって思います。続かないものだってわかっていても、「今がすごく幸せだなあ」って思うことも大事で、だけど続かないってわかっているからこそ悲しかったり、切ないなって感じることもある。別れの歌はたくさんあるけど、それを簡単に書いた歌にはしたくなかったんです。「自分の想いをここに入れなくちゃ」って思ったから、自分の傷を切った気がします。

――“unlasting”の歌詞って、難しい言葉を使ってないけど、だからこそ《寂しい》《悲しい》っていう言葉が、実体を伴って迫ってくるようなイメージがありますね。

LiSA:簡単な言葉を使うと、ぼやけてしまうような気がしてたんです。だから、今まではできるだけ特別な言葉をたくさん入れようと思って歌詞を書いてきたんですけど、本当に傷を切って中をのぞいてみたら、出てくるのは簡単な言葉だったんです。逆に、「この言葉の本当の意味ってこういう味わいなんだなあ」って思いました。《寂しい》の深さが違う、というか。そういう思いを込めて、深いところから掘った血で《寂しい》っていう歌詞を書きました(笑)。

――(笑)かつて潜ったことのない深さまで潜ってみた結果、今までには気づいていなかった言葉の深みを実感できた、というか。

LiSA:特に、バラードで音数が少なくて、空間や行間を感じてもらいたい曲なので、すごく効果的だったと思います。歌う側として入り込むにしても、わかりやすい言葉で伝えていくことができるので、すごく思いを込めやすいですね。今までの曲でいうと、“シルシ”や“ADAMAS”はもう少し強がってるというか、強い自分であろうとしている意識があるんだけど、“unlasting”は本当にドロドロした感情、本当の寂しさを書いてる気がします。「こういう自分であろう」としてない、というか。

――本当の「寂しい」や本当の「悲しい」に、鎧を着込んだりすることなく、ただ向き合ってる。

LiSA:そうですね。「誰かがわたしのことを心配するから、悲しいけど前向きます」「明日生きていくために前向きます」ではなくて、ポッカリ空いたまんまの空白というか、血の塊が――これです(笑)。

インタビュー後編は12月12日配信予定です。

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取材・文=清水大輔  撮影=森山将人
スタイリング=久芳俊夫 ヘアメイク=氏家恵子

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