窪田正孝主演の映画『初恋』――三池監督が抜擢した新人女優・小西桜子は、焦燥感も武器にする!?

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更新日:2020/2/23

“最期に出会った、最初の恋”。2019年カンヌ国際映画祭 監督週間正式出品作の三池崇史監督の映画『初恋』が2月28日に公開される。映画は、窪田正孝演じる余命わずかの天才ボクサー・レオと、小西桜子演じるヤクザに捕らわれている訳ありの少女・モニカの異色のラブストーリー。新宿歌舞伎町を舞台に、ヤクザや幻覚、銃撃戦と非日常のサスペンスからくすっと笑えるコメディまでめくるめく展開が続く。まるでジェットコースターに乗っているかのような迫力だ。

 出演者は、窪田正孝、内野聖陽、大森南朋、染谷将太、ベッキーほか豪華出演者の名前が並ぶ。『初恋』のオーディションで約3000人の中から大抜擢された小西桜子は、お芝居をはじめて3カ月目で三池監督の目に留まった期待の新人女優。オーディションから撮影現場まで、彼女の感じた思いを伺った。

■憔悴した状態でオーディションへ

――「モニカ」を演じた小西さんは、約3000人の中から大抜擢されたとのこと。どのような思いでオーディションに臨みましたか?

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小西桜子さん(以下、小西):オーディションに来たときは、芝居をはじめてまだ3カ月のころでした。たまたま、初めて撮った映画が前日にクランクアップしたばかり。『初恋』のオーディションも、頑張りたいけれど気持ちに余裕がなく、もう、“どうにでもなれ”という気持ちで臨んだので、まさか自分が受かるなんてびっくりしました。

 オーディションは、目の前に三池監督がいらしてもちろん緊張しましたが、前日までの疲れが残り、憔悴した状態でオーディションに臨んだのが逆に役に合っていたのかなと自分では思います(笑)。

――オーディションで印象的なエピソードはありますか?

小西:1人当たり5分から10分程度の時間で、質疑応答やお芝居を見ていただきました。三池監督からはパーソナルな質問も出て、たとえば「結婚願望はあるんですか?」とか「自分の人生についてどう思いますか」といったことも聞かれました。私はそのとき少し尖っていたのか、「私は今を生きているので、あまり将来のことは考えたくありません」と言った記憶があります(笑)。

■涙が出なくても心が泣いているか

――「モニカ」は薬物中毒や父親のトラウマを抱えているなど、難しい役どころだったかと思いますが、どのように「モニカ」の世界に入りましたか?

小西:参考になるような映画や作品を見るようにしましたが、考えすぎてもうまくいかないかなとも思ったんです。自分のお芝居がまっさらなところを三池監督も選んでくださったと思うので、ありのままというか、自分の中にあるものを引き出すように演じました。

 ただ、中には、泣くシーンでうまく泣けないこともあって…。それでも三池監督が「涙が出なくても実際に心が泣いていたらいいんだよ」と仰ってくださったり、モニカの感情は私にしかわからないから、それを感じるままでやっていいよ、といつも声をかけてくださいました。こうしないとダメとか細かい指導よりも、自分から湧き上がったものを尊重していただいた感じです。

――印象に残っているシーンはありましたか?

小西:窪田さん演じる「葛城レオ」と一緒に電車で移動するシーンですね。モニカは父親の幻覚が見えたり、悪党から逃げ回ったりと常に恐怖と戦っています。それでもレオのおかげで笑顔が出せて、少しずつレオに心を開いていく瞬間が「初恋」っぽい。2人の世界観が表れたシーンになっています。面白さも切なさもつまっていて、映画の見どころの一つです。

 また、予告編にも出てきますが、歌舞伎町でレオと走ってきたモニカがぶつかって出会う場面も印象的なシーンの一つです。電車で移動するシーンもそうですが、なかなかOKが出なくて何度も何度も撮り直しました。その都度、歌舞伎町の街を全力で走り回りましたが、窪田さんが「俺も若いころは散々走ったよ」とか、テイクごとに「ここはこうするといいよ」など声をかけてくださり、すごく助けられましたね。

――銃撃戦や、幻覚に逃走など、非日常のシーンにどのような気持ちで臨みましたか。

小西:普段経験したことがない緊迫感でしたが、現場の熱量も相当なものでした。私自身は少し走って心拍数を上げたり、呼吸を荒くしたりするなど、通常とは違うテンションで挑みました。いつもは明るい洋服を着ることが多いのですが、撮影期間中は暗めの地味な服を着てみたり、普段より気持ちを抑え気味で過ごしていました。

■ベッキーのバイオレンスな演技が撮影中にも話題に!?

――窪田さんをはじめ、大森南朋さん、染谷将太さん、ベッキーさんなど出演者も豪華でしたが、共演されていかがでしたか?

小西:窪田さんは、圧倒的な存在感がありますね。窪田さんがいるだけで現場の空気が変わるんですよ。お芝居に対するストイックな思いを聞かせていただいたり、窪田さんと三池監督との信頼関係にも憧れました。私もそういう役者さんになりたいなって思いますね。

 ベッキーさんは同じシーンがあまりなかったのですが、現場でもベッキーさんの演技が話題になっていて…! かなり迫力がありますし見ごたえもあると思います(笑)。撮影時期も冬だったので、温かい靴下を頂いて嬉しかったです。

 大森さんや染谷さんとは、待ち時間にヒーターの前で温まりながらよくお話をさせていただきました。趣味のお話になり、大森さんからは音楽の話を聞かせていただき、お洒落な趣味だなぁって思って。窪田さんは車の話や、デスマッチ(プロレス)の話が面白かったです。

――小西さんの趣味はいかがですか?

小西:休日は家にいることが多いのでダラダラしています。読書も好きで、最近読んだのは今日マチ子さんの漫画ですね。

『初恋』の撮影は芝居の経験がほとんどないまま現場に臨み、経験豊富な俳優陣に囲まれてプレッシャーもあったという。ただ、撮影がはじまればそれすら感じる余裕もなく、気づいたらその日が終わり、翌日になっているという日々の連続だったそうだ。映画の展開とともに、モニカの心境はどう変化していくのか。モニカも、小西さんの今後も楽しみである。

取材・文=松永怜 撮影=花村謙太朗 ヘアメイク=松田陵(Y’s C) スタイリスト=倉田強

【映画情報】

(C)2020「初恋」製作委員会

2020年2月28日(金)、全国ロードショー

窪田正孝 大森南朋 染谷将太 小西桜子 ベッキー
三浦貴大 藤岡麻美 顏正國 段鈞豪 矢島舞美 出合正幸
村上 淳 滝藤賢一 ベンガル 塩見三省・内野聖陽

監督:三池崇史
脚本:中村 雅 
音楽:遠藤浩二 
配給:東映
上映時間:115分