元ハロプロの飯窪春菜&和田彩花が対談!見ないふりをしてきた違和感を言葉にすること《コラム連載開始記念》

社会

更新日:2021/4/12

本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』5月号からの転載です

和田彩花さんと飯窪春菜さん
写真:永谷知也

16歳で「おばさん」と言われた。バカなふりをすることで、みずから下げてしまった自己肯定感。「きれいじゃなきゃいけない」という圧……。見ないふりをしてきた様々な違和感を、飯窪春菜さんが言葉にしていくダ・ヴィンチニュースの新連載「かわいげがなくてごめんね!」。その幕開けを記念して、公私ともに親しい元アンジュルムの和田彩花さんと対談していただきました。

和田 はるなんが16歳でモーニング娘。のメンバーになったとき、SNSに「おばさんが加入してきた」と書かれたっていうのを読んで、すごくびっくりした。私もアンジュルムを卒業する頃には、若さやかわいさがアイドルの価値とされがちなことなどに違和感を抱いていたけれど、10歳からハロプロ研修生だったせいか、16歳の頃は「成長しているあやちょ」として見守られている感覚があったから。

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飯窪 ね。私もびっくりした(笑)。高校生なのに若くないって言われちゃう世界があるんだ!?って。ただ、高校生は極端でも、だいたい25歳を超えると、アイドルに限らず女性はおばさん扱いされてしまうことが多いよね。

和田 賞味期限というものを意識させられる雰囲気はあるよね。仕事場以外でも、親戚に会うたび「結婚しないの?」って聞かれるみたいに、世間には〝女性の幸せ〟はこういうものだっていう既定路線があるらしいというのもだんだん感じるようになった。そういう違和感を、ジェンダーとかフェミニズムの視点を用いながら発信したいなと私は思っているんだけれど。

飯窪 少し前、さんまさんが「今、26歳か。まだそんな若いねんなあ」って言ってくださったとき、すごく救われたの。だから私も、同じように傷ついたことのある女性に向けて寄り添える言葉を発信していきたいし、誰かを傷つけてしまうことに無自覚な人たちに、少しでも伝わるものがあったらうれしい。でも……むずかしいね。書いていると、押し込めていたあれもこれもが思い出されて、つい感情が高ぶっちゃって(笑)。

和田 わかる(笑)。リアルタイムで消化できなかった悔しさや悲しさって、忘れたつもりでも心の底に燻り続けちゃうんだよね。その感情をまずは自分で乗り越えていかないと、誰かに伝えることもできない。

飯窪 私はどうしても感情的で直接的な言葉を選びがちだから、あやちょが慎重に言葉を選びながら、しっかり考えを伝えているのがカッコいいなと思う。その姿を見て「これは言葉にしていい気持ちだったんだ」って励まされている人は、私だけじゃないはず。

和田 古今東西、女性が生きることの不自由さに対して声をあげる人がいることに、私自身が励まされてきたから。歴史が味方だって思うと、怖いものがなくなるんだよね。もちろん、私の発言全部に同調してもらえるわけじゃないし、理解してもらえないこともあるだろうけど、「それでも視野が広がったから、活動を続けてほしい」ってファンの方から声が届くと、頑張ろうって思える。そういうメッセージは全部スクショして保存してます。

傷ついた自分をごまかすための自虐にさらに傷ついた

飯窪 ファンの皆さんからの言葉って、本当に胸に響くよね。連載の原稿でも書いたんだけど、私はとても自己肯定感が低くて。それでも前に進んでいけるのは、SNSを更新しない日でも欠かさずメッセージをくれたり、こんな私でも好きだと言ってくれる方々がいるから。一人でも支えてくれる方がいる限り、悲しませないために頑張ろうって思える。だから今は、どうしたら皆さんにちゃんと恩返しできるだろうって模索中。

和田 はるなんは、まず自分の話をしてくれるじゃない? 相手がしんどそうだなと思ったら、何があったか聞くんじゃなくて「こういうつらいことがあって」と自分の内側を見せて、打ち明けやすい雰囲気をつくってくれる。私も、卒業する直前とか、誰にも言えなかったことを話せて救われたし、出会ってからずっと支えられてきたから、はるなんはそのままで本当に素敵な人だよ、だからみんな好きなんだよ、ってことは強く伝えたい。でも、自信がなくなっちゃうくらい心がすり減るような経験も重ねながら、他人から求められるものに素直に返していこうと思える姿もカッコいいから、どんなはるなんでもやっぱり好きだし、そのままでいてほしいな。

飯窪 ……ありがとう。

和田 私は周囲から〝マジレッサー〟と言われるように、自分が何をしたいのか、何を思うのかってことを軸にマジレスしかできないから(笑)、はるなんみたいな柔らかい明るさがあったらいいのに、ってときどき思う。

飯窪 マジレスのほうが絶対にいいよ! これも書いたけど、私は傷ついた自分をごまかすために、おバカなふりをしたり自虐したりしちゃってた。そういうの、一回でもやると元に戻れないんだよね。他人の言葉だけじゃなくて、自分の言葉にも傷ついて、自己肯定感がどんどん低下していく。それで円滑にまわるのって結局、上辺だけのつきあいだから、信頼関係を築くためにも、やらないほうがよかったなって今は反省してる。

アプローチは違うけどめざす場所はきっと、同じ

和田 「やらないほうがよかった」って気持ちと「そうしないと乗り越えられないものがあった」って経験の両方を知ってるはるなんの言葉に、救われていく人がたくさんいると思う。はるなんとは昔から興味の対象が似ているけど、解釈の仕方が全然違うのはお互い感じてたよね。今回、連載原稿を読んで改めて、同じアイドルなのにこんなにも見えてる風景が違うのか、って驚いたし、タイプの違う私たちがそれぞれの言葉で違和感を表明することで、自分に合う乗り越え方を見つけていけるのかもしれないとも思った。

飯窪 だといいな。連載では毎回、私なりにテーマに合わせたマンガをおすすめしているんだけど、あやちょはマンガも全然読まないもんね。

和田 読み方がわからないの(笑)。

飯窪 私はあやちょの読んでるノンフィクションのほうが、どう読んでいいかわからない(笑)。でも、アプローチは違うのに同じことを学んでいたりするから、不思議だよね。

和田 私は「自分の価値は自分で決める」ことをずっと掲げてきたから、応援してくださる方々の理想に添えなかったとしても、自分のやりたいことを大事にしたいし、みんなにもそうしてほしいのね。世間的なアイドル像に対する違和感も、「求められるもの」と「やりたいこと」の狭間で生まれたものだった。でも、だからといって「自分」にばかり目が向くのも違うというか……ファンの皆さんから向けられる期待や視線があって初めて気づかされる自分らしさもあるし、自分の価値を決して他人に委ねたりはしないけれど、手をとりあってともに生きることはしていきたいと思う。起点は違うけど、はるなんが言っていた、ファンにどう恩返ししたらいいか、っていうのもきっと同じことなんだよね。

飯窪 似てるのに、違う。わからないものもあるけど、同じ。おもしろいね。あやちょが友達としてそばにいてくれることが、私にはすごく心強い。

和田 私も。はるなんの言葉がどんなふうに広がっていくのか、連載、楽しみにしてるね。

飯窪春菜コラム連載「かわいげがなくてごめんね!」(隔週土曜日更新)
飯窪春菜連載
モーニング娘。のメンバーとしてアイドルデビュー。華やかなる舞台に立ちながら、ひそかに抱えていたモヤモヤをセキララに綴る、覚悟の本音コラム!

飯窪春菜
いいくぼ・はるな●1994年、東京都生まれ。2018年、モーニング娘。’18を卒業。卒業後は女優として活動。MBSラジオ『ヤングタウン土曜日』レギュラー出演中。自宅本棚は2000冊以上の漫画で溢れている程の大の漫画好きとしても有名。「もともと人に尽くすのが好きなタイプだけど、自分の言葉で発信することも含め、これからは一人で生きる強さも身につけたいなと思っています」(飯窪)

和田彩花
わだ・あやか●1994年、群馬県生まれ。2019年、アンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。アイドル活動を続けながら、大学院で学んだ美術にも関心を寄せる。「女性としてジェンダーの問題は意識しつつ、性別にとらわれない社会のありようを考えていきたいし、公の場での発信を通じて自分を見つめなおしていくことが、今後10年の課題です」(和田)

取材・文:立花もも

ヘアメイク:前原京子