「女って怖い!」のギリ手前を攻めた幼なじみのラブバトル──『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』水瀬いのり×佐倉綾音対談
更新日:2021/5/11

いつの頃からだろう、「幼なじみ=負けヒロイン」の図式ができたのは……。子どもの頃から主人公の隣にいたのに、いつのまにか他のヒロインにかっさらわれる。ずっと彼を支えてきたのに、不遇な当て馬ポジションに追いやられる。そんな暗黒時代に終止符を打つべく、冷遇され続けた「幼なじみヒロイン」の復讐(リベンジ)が今、始まる! さあ、全国ウン千万の幼なじみラバーよ、立ち上がれ──!!
4月14日にスタートしたTVアニメ『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』(通称『おさまけ』)は、タイトルどおりだと、幼なじみが“負けない”ことが約束されたラブコメディ。と言っても、そう簡単に事は運ばない。小悪魔系幼なじみ・志田黒羽、クールビューティーな女子高生作家・可知白草、若手人気女優の桃坂真理愛の3人が、主人公の末晴をめぐって大激突! さらに、ストーリーが進むと、衝撃的事実も……!?
この特集では、そんな『おさまけ』の魅力をキャストの対談で深掘りしていく。今回は、黒羽役の水瀬いのりさん、白草役の佐倉綾音さんの対談をお届けしよう。佐倉さんが「あますことなく全部食べた」と話す、水瀬さんの演技とは? ふたりが歌うエンディングテーマも必聴!

「幼なじみは、いつも支えてくれる応援ポジション。だから恋愛対象にならないのかな」(水瀬)
──ここ数年、「幼なじみ=負けヒロイン」という風潮があります。おふたりは幼なじみにどんな印象をお持ちですか?
水瀬:「いて当たり前」という存在になりがちなのかなと思います。どんな時もそばで支えてくれるから、理想の相手との恋も頑張れる、みたいな。応援ポジションというイメージがあるので、どうしても恋愛対象として見られないのかなと個人的には思っています。近いからこそ大切さに気づけなくて、何年か経ってから「本当はもっともっと大切にしなければいけなかったのに……」と思うような存在なのかもしれませんね。過去を振り返った時に、美化される存在というイメージがあります。
佐倉:私はこの業界に入ってから、幼なじみヒロインというジャンルを知りました。私自身、男女問わず幼なじみがたくさんいて。大人になってからはなかなか友達ができないので、いまだに幼なじみとばかり一緒に遊んでいます。だからこそ、この業界における幼なじみポジションがこういうものだと知って、すごく驚きました。確かに思い返してみると、幼なじみって恋愛対象として見ることができないんですよね。性別を超越したところにいる、家族のような存在なので。「あぁ、そうか。だから敗れていくんだ」と思いました(笑)。
──やっぱりリアル幼なじみに対しては、恋愛感情を抱きにくいものなんですね。
佐倉:私の場合、幼稚園の頃から関わりがある男の子はひとりふたりしかいなくて、会うのも5年に一度くらいですけど。でも、何かあった時に「元気ですか?」「○○で佐倉さんの名前を見ました」と連絡をくれるんですね。親戚のおじさんみたいな感覚なので、本当に男性として意識したことがなくて。幼なじみというより、叔父のような存在かも(笑)。
──叔父扱いされてると知ったら、ショックを受けますよ(笑)。
佐倉:このインタビューを読まないことを祈ります(笑)。そもそも幼なじみ本人よりも、そのお母さまとのほうが仲が良かったりするんですよ。お母さまの顔がまず浮かぶので、恋愛対象になりにくいというのはあるかもしれません。
──水瀬さんは、幼なじみはいますか?
水瀬:同性の幼なじみばかりですね。転校しているので人数も少なくて、私がこの仕事をしていることを知らない人もいると思います。でも、中にはライブに足を運んでくれる人もいて。学生時代の自分と今こうして働いてる自分、両方を見てくれている存在なのでありがたいなと思います。やっぱり学校で机を並べて、期末試験がどうこうというやりとりをする時間って特別じゃないですか。かけがえのない存在ですし、多分これから大人になっていく過程でも、彼女たちにしか見せられない自分がいるんでしょうね。そう思うと、彼女たちのことを誇りに感じます。
「クロとシロはお互いにないものを持っていて、それが面白い対比になっています」(佐倉)
──水瀬さん演じる黒羽は、陽キャのようでいて意外と腹黒。佐倉さん演じる白草は、優等生ですが実はポンコツです。対照的なキャラクターだと思いますが、おふたりはお互いのキャラに対してどんな印象をお持ちですか?
水瀬:黒羽は、等身大の幼なじみポジションですよね。末晴と一緒にいるのが当たり前の存在です。いっぽう白草は、彼女にしか持てないオーラがあって。高嶺の花である彼女が見せる末晴への優しい微笑みや、他の人とは違う彼へのアプローチは、末晴にとってはすごく特別に見えるだろうなと思います。そういった特別感を振りかざせないのが黒羽の弱みですし、クロ(黒羽)とシロ(白草)の大きな違いですよね。白草はクールに見える分、ちょっと優しくするだけでもグッと心をつかまれますし、その破壊力は底が見えないなと思います。
佐倉:クロは、恋人になる前に家族のようになってしまっているんですよね。だからこそ、恋愛対象として意識してもらうのは難しそうだなぁと思います。そこに果敢に挑むクロの姿は、健気でかわいいなと思う時もあれば、考え方が女性的すぎて個人的には怖いなーと思うこともけっこうありまして(笑)。実際、クロみたいな子が周りにいたら、距離を置くんじゃないかな(笑)。私は高嶺の花的な存在に出会ったことがないので、現実にはなかなか想像がつきにくいんですけど、やっぱり難攻不落の女の子が自分にだけ心を許すというのは、とても惹かれます。私が白草を演じているからというのもありますけど、シロにはそういうところで頑張ってほしいなと思っています。クロとシロは、お互いに持っていないものを持っているので、それが面白い対比になっていますよね。
──クロとシロで、共感できるのはどちらですか? 今の話を聞いていると、佐倉さんはシロですよね?
佐倉:うーん、私は「自分が落とすなら」という考え方なので(笑)。共感できるかというと……うーーーーん。
水瀬:クロは表面上のコミュ力が高いので、腹黒さを知らないまま友達になれちゃうかも。白草はみんなに慕われているあこがれの存在なので、自分から友達になりにいくのはハードルが高いかなぁ……。でも、やっぱり難しいですね。クロのほうが一見普通にだけど、蓋を開けたら黒~い層がいっぱいあるからね(笑)。
佐倉:手段を選ばない感じがするよね。
水瀬:味方にすれば最強かも。
佐倉:敵に回したら最悪だけど。
水瀬:それは、ふたりともそうかも(笑)。白草も、何かあればあらゆる権力を使って、こっちを消してきそう(笑)。
佐倉:白草は、あんまりこっちに興味持たなそうじゃない?
水瀬:わかる。もし興味を持ってくれても、一回嫌われたら多分次がないんだろうなって思っちゃう。
佐倉:そうだね。シャッターが閉まるね。
水瀬:クロは「頼むー!」ってお願いして、何か面白いことをすれば「いいじゃん、それ」って許してくれそうなところがあるけど(笑)。でも、どうなんだろう……。
佐倉:私はもう、誰にも共感できない!!
水瀬:それはそう!
佐倉:この世界に入りたくないもん、怖すぎて。平穏に、何事もなく過ごしたいです(笑)。
──クロとシロがバチバチ火花を散らしますけど、ドロドロした展開ではないのも面白いですよね。しっかりラブコメに仕上がっているのがすごいなと思いました。
水瀬:ケンカのシーンも哲彦と末晴のやりとりも、「あんまりガチっぽくならないように」というディレクションがありました。バチバチだけど、ちゃんとコミカルさを残すというか。昼ドラのようにドロドロになって、「いつか誰かが毒を盛るんじゃ……」みたいな雰囲気ではなく、高校生が若気の至りでバチバチしてるというレベルになっています。ですから、視聴者のみなさんが本気で怖がるようなことはないと思います(笑)。
佐倉:原作が小説なので、文字で読むと少し強めに感じるかもしれませんが、アニメーションは絵柄がかわいくて、色使いもポップで、音づけもコメディに寄せているので、心が沈んでいる時でも見やすいと思います(笑)。
水瀬:「女って怖い!」のギリギリ手前みたいな。
佐倉:「でもかわいい!」に移行できる感じね。
水瀬:まだ、女の子に対して夢は見られるかなって思います(笑)。

「マイクに乗り切らないすべての音まで、あますことなく堪能しました」(佐倉)
──コロナ禍で収録ブースに入れる人数にも制限がありますが、おふたりは一緒に収録することが多いのでしょうか?
水瀬:そうですね。ほとんど一緒に録ってます。
──お互いの演技についての印象は?
水瀬:今までは仲がいいキャラしかやったことがなかったので、最初は心が……。
佐倉:え、そうだったの!?
水瀬:みんな仲がいいから、バチバチするのがキツいなって。
佐倉:そうは思わなかったよ! 黒羽、1話から全力で来るなと思ってた。
水瀬:でも、まだ黒羽の怒り方は演じやすかったかな。余裕がある怒りというか、白草を挑発して、相手が乗ってきたところで自分も「なにー!」となるタイプだから。逆にモモ(桃坂真理愛)やシロのバトル感は、自分だったら難しいかもって思いました。
佐倉:私、今回の水瀬いのりの芝居がとても好きで。今まであまり聞いたことがない感じじゃない? いろんな作品で一緒になってるけど、聞いたことのない黒さと色気があって。
水瀬:1話の時に、信長さん(島﨑信長さん)も「今回の水瀬さんはいいよね」と言ってくださって。すごく褒めていただいています。
佐倉:私はナマで聞いているので、マイクに乗り切らないすべての音を拾えている自負があるから。
水瀬:言い方(笑)! 怖いって。
佐倉:全部堪能した!
水瀬:怖いなぁ(笑)。
佐倉:あますことなく全部食べた!!
水瀬:え、私、食べられてる?(笑)
──水瀬さん自身は、いつもと違う自分を見せたという手ごたえを感じていますか?
水瀬:これまでは、極端にクールだったり、極端に明るかったり、おバカだったり、真面目だったりする役が多かったので。小悪魔、かわいい、幼なじみ、そして誘惑、みたいなピンクっぽいキャラクターは経験がなかったんです。だからこそ、最初は恥ずかしさもありました。テストと本番で少なくとも2回やるんですけど、テストの段階から黒羽にいろんなものを吸われてしまって(笑)。「このままでは私、抜け殻になる」って思いました。でも、回を重ねるごとに「あ、こんなアプローチをしてるけど、実は黒羽自身も恥じらってるんだ」というのが見え隠れしてくるんですね。それが唯一のよりどころでした。「そうだよね、あなたにも羞恥心はあるんだよね」みたいな(笑)。
──佐倉さんは、白草のようなクールな役柄は慣れていそうですね。
佐倉:引き出しにはあるキャラクターですね。ただ、こういうクールなキャラクターって、オーディションではあまり受からなくて。こういう役を演じるのは好きなのですが、なかなかメインでやらせていただく機会も少ないので、楽しく演じました。
水瀬:聡明な雰囲気は、本人のキャラにもすごい合ってる。活字、好きそう(笑)。
佐倉:でも、クールなのにポンコツっていう塩梅が難しくて。
水瀬:確かに、クールだけどかわいいところはしっかりかわいいもんね。
佐倉:私の声でかわいいに振ってしまうと、幼くなってしまうので。白草の良さを残しつつ、という調整が難しかったです。
──どういう塩梅で演じていったのでしょう。
佐倉:とりあえず自分が考える「ここまでかな」という塩梅で演じて、「もうちょっとかわいくしてください」と言われたら、もうちょっと出す。実際に聞いていただいて、判断していただくことが多いです。




「エンディング曲でもバチバチ。話すような、戦っているような気持ちで歌いました」(水瀬)

──おふたりは、アニメのエンディングテーマ「戦略的で予測不能なラブコメディのエンディング曲」も一緒に歌っています。歌でも丁々発止のやりとりをされていますが、歌ってみた感想は?
佐倉:すごく面白かったよね?
水瀬:そう! この作品だから歌える歌になっていて、すごく画期的でした。
──収録は別々でしたか?
水瀬:そうです。最初ねるさん(佐倉さん)が録って、私がそれを聴きつつ歌いました。歌の中でもバチバチするのですが、それぞれの気の強さも発揮しつつ、余裕を感じさせるようなパートもあったりして。歌うというより、しゃべっているような、戦っているような気持ちで歌いました。「白草はどう歌うんだろう」と楽しみにしていたんですが、歌声を聴いてシチュエーションがより想像しやすくなりましたね。原作小説1巻の裏表紙にクロとシロが末晴を引っ張り合っているミニキャラのイラストがあるんですけど、頭の中でそれをイメージしながら歌ってました。
──いっぽう佐倉さんは、何もない状態で歌ったわけですよね。
佐倉:なんとなく「こう来るのかな」と想像しながら歌いました。私は、実は白草のトーンでキャラソンを歌うことがほとんどなくて。「できるかな」と心配でしたが、意外とすんなり曲の世界に入ることができました。それも、曲の世界観が強いからでしょうね。途中でセリフも入りますし、声優が歌うことに特化した曲だなと思ってうれしかったです。「これぞキャラクターソング!」という感じで、とても楽しく歌わせていただきました。ただ、私たちが歌った時はまだタイトルが付いてなくて。
水瀬:そう。「曲名未定」だったよね。
佐倉:完パケで届いた時にもファイル名が「戦略的で予測不能なラブコメディのエンディング曲」だったので、仮タイトルかと思いました(笑)。
水瀬:曲ふりをするのも大変だよね。「それでは聞いてください。『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』のエンディングテーマで戦略的で予測不能なラブコメディのエンディング曲です!」って(笑)。略称が欲しい(笑)。
──どんな略称がいいでしょう。
水瀬:なんでしょうね。「エンディング曲」?(笑)
佐倉:シンプルに(笑)。
水瀬:アニメのエンディングでは、セリフは入らないんだっけ。
佐倉:そうだね、2コーラス目に入るもんね。
水瀬:テレビサイズではセリフが聴けないので、ぜひCDや音源もチェックしていただきたいですね。
──セリフからもバチバチ感があふれていますよね。
水瀬:そうなんです。私はもう白草のセリフが入ってるところに自分のセリフを入れたので、秒数がしっかり決まっていたんです。それがすごくシビアで(笑)。めちゃくちゃ早口のケンカなので、難しかったです。
佐倉:完成した曲を聴くと、私の白草のトーンといのすけ(水瀬さん)の黒羽のトーンがすごく相性よくなかった?
水瀬:確かに。ちょうど中和されてて。
佐倉:これまでのデュエット曲は、お互いに高い声が多かったじゃない? 高い声と低い声だとどうなるんだろうと思ったら、我ながら「相性いいな」って(笑)。
水瀬:だから共演が多いんですかね(笑)。
佐倉:声の波長が合うのかな。何回も聴いちゃった。
水瀬:私も! エンディングテーマも含めて、いろんな新発見がある作品なのでぜひ楽しんでほしいですね。
取材・文=野本由起 撮影=北島明(SPUTNIK)