「自称28歳」の役をやるか、珍しく悩んだという高岡早紀さんが、オファーの多い“ひと癖ある役”を演じることについて

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公開日:2021/6/18

――映画は、大谷亮平さん演じる本間が山中で遺体で発見されるところから始まります。3年前、彼を誘拐して行方をくらませていたリカを、警察は再び追うことになり、市原隼人さん演じる刑事の奥山が、マッチングアプリでリカと接触するのですが……。

高岡 映画は、ドラマ以上にラブストーリー色が濃くなっていて、リカちゃんは喜んでいると思います(笑)。

――まだ見ぬ奥山の似顔絵を描いて、3Dプリンターで人形をつくるところとか、ほほえましくてちょっと笑ってしまいました。

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高岡 あれ、かわいいですよね。あんなことする人、あんまりいないだろうけど、いてもおかしくないかもなあって思わされちゃうのがリカのすごいところ。

――自分が28歳だということも含めて、愛のために歪んだ現実を信じ切っているリカのピュアさに、めちゃくちゃ説得力があって。どんなふうに演じたら、あの説得力を生み出せるんですか?

高岡 そうですね……。リカには自分だけの正義があって、思い描いている夢に向かって、常に真剣だしまっすぐ行動しているだけなんです。それはセリフにもしっかり描かれていたから、私もリカを疑うことなく、常に真剣に演じるしかない。それだけですね。

――その説得力の裏側で、映画ではかなりぶっ飛んだアクションシーンもありますが……。

高岡 すごかったでしょう?(笑) 詳しくは話せないけど、あそこまでいくとなんていうか、超人だよね。人としての領域を超えている。さすがにそれはアリなんだろうか? と何度も話し合いを重ねたんですが、最終的には「コメディ要素として笑ってもらってもいいんだ」と言われて納得しました。「サスペンスもラブもコメディもアクションも入った完璧なエンターテインメントだから」と。

――確かに、感情があらゆる方向に揺さぶられました。アクションシーンは確かに笑っちゃったんですけど、そのあとの展開がめちゃくちゃ怖いじゃないですか。

高岡 さっきまで笑っていた自分、どこ行った?って感じですよね。

――終わったあと、観た人とずっとリカについて語り合ってしまいました。ありえるとか、ありえないとか、そんなことどうでもいいな、とも思いましたし。

高岡 それはよかった。そんなふうに、誰かと語り合いたくなる作品って、なかなかないですからね。

――それはやっぱり、「ありえないけど、リカみたいな人はどこかにいるかもしれない」という、高岡さんが演じていたことで生まれた説得力ゆえとも思います。放送中のドラマ『桜の塔』でも、着物姿の高岡さんが登場するだけで場がひきしまるのを感じますが、説得力をもたせるために常に意識していることってありますか?

高岡 そうですねえ。演じる役の背景を忘れずに、その人になるってことを考えていれば、佇まいに自然と滲みでるものが絶対にあると思います。ただ最近、「貫禄でてきたね」って言われることが増えてきて、その言い方はなんかいやだなあと思って。「お局感ありますね」っていうのはちょっと……ねえ?

――素直には喜びづらいですね。

高岡 でしょう? だからちょっと前までは「いやいや、全然ですよー」なんて否定していたんだけど、気がつけば私もまあまあの年齢なわけですよ。「すっかりベテランさんね」なんて言われることの意味を、ちゃんと理解していなきゃいけないんだと反省して。自分で言うのもなんですけど、50歳を手前にして、貫禄のひとつもなかったら逆に残念じゃないですか。やっぱり、年齢にそぐう自分でいないと、ね。こんなふうに(ふんぞりかえってみる)。

――(笑)。

高岡 あ、これは違う? まちがえてる?

――ちょっと違うかもしれません(笑)。でも、年齢にそぐう自分でいるって、難しいですけど大事ですよね。誰しも「えっ、もう○歳なの? 思ってたのと違う!」ってことの繰り返しだと思うので。

高岡 ね。ステージがかわると、そのたびにびっくりしちゃうよね。50歳になることは45歳くらいから想定していたし、実際に誕生日を迎えてもまあまあ平静だと思うんだけど、あと十数年で60歳って言われると、ひえ~って思う。だって60歳って……昔話だともう完全なおばあちゃんじゃないですか。もちろん、今の60歳はみなさんお若いし、お元気だし、全然イメージとは違うんだけど、でも還暦でしょう? ちょっとはちゃんとしなきゃなって思うので、今は貫禄が出てきたねと言われても否定せず「頑張ります!」という意気込みです。こんなふうに(またふんぞりかえる)。

――(笑)。確かに『桜の塔』をはじめ、役では貫禄のある演技もされていると思うんですが、エッセイを読むと何事に対しても軽やかで、どっしり感は全然ないですよね。

高岡 まあ、プライベートでは貫禄なんか出てほしくないじゃない? だから否定はしないんだけど、「貫禄ある」って言われたときは、もしかして偉そうにしていたのかしら、と反省することはあります。逆に、私の言葉遣いはずっとラフなので、それは年齢や場にそぐうよう気をつけるようにしてみたり……。一応、ちょいちょい反省はしてるんですよ?(笑) それが軽やかでいられる秘訣かもしれないですね。

――エッセイにもありましたが、〈「オバサン」になっても「オジサン」にならないようにする〉という心構えとか。

高岡 そうそう! それは本当に、気をつけないと。貫禄も出しつつ、反省もしつつ、女優としても一個人としても、自分らしくやっていけたらいいかな、と思います。

●映画情報
/リカ ~自称28歳の純愛モンスター~
6月18日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2021映画『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』製作委員会

ヘアメイク:千吉良恵子(cheek one)スタイリスト:寳田マリ 衣装協力:MSGM

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