アイドルマスター 15周年の「今までとこれから」⑪(水瀬伊織編):釘宮理恵インタビュー

アニメ

公開日:2021/6/16

『アイドルマスター』のアーケードゲームがスタートしたのが、2005年7月26日。以来、765プロダクション(以下765プロ)の物語から始まった『アイドルマスター』は、『アイドルマスター シンデレラガールズ』『アイドルマスター ミリオンライブ!』など複数のブランドに広がりながら、数多くの「プロデューサー」(=ファン)と出会い、彼らのさまざまな想いを乗せて成長を続け、昨年7月に15周年を迎えた。今回は、765プロのアイドルたちをタイトルに掲げた『MASTER ARTIST 4』シリーズの発売を機に、『アイドルマスター』の15年の歩みを振り返り、未来への期待がさらに高まるような特集をお届けしたいと考え、765プロのアイドルを演じるキャスト12人全員に、ロング・インタビューをさせてもらった。彼女たちの言葉から、『アイドルマスター』の「今までとこれから」を感じてほしい。

 第11回に登場してもらったのは、水瀬伊織役の釘宮理恵。『アイドルマスター』の最初から関わってきた彼女は、『MASTER ARTIST 4』の収録にどのような意志を持って臨んでいたのだろうか。楽曲、そして伊織に対する深い思い入れを話してくれた。

水瀬伊織
(C)窪岡俊之 (C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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ライブが楽しいなって思えたのは、10周年のドームのとき。プロデューサーの皆さんへの感謝の気持ちも込めて「楽しんでるよ」っていう姿も見せたかった

――2020年の7月で『アイドルマスター』シリーズがスタートしてから、まる15年を迎えました。釘宮さんは『アイドルマスター』の最初から関わってきて、15周年はひとつの区切りであり通過点でもあると思うんですけれども、どのように感じていましたか。

釘宮:10周年を超えてから、15周年が身近になってきた気がします。10周年を超えてからの5年間は、それまでの10年とは全然違う意味合いを持っている、というか。15周年まで到達できたことは、みんな頑張ったし、嬉しいし、おめでたいし、すごいことだなあって思います。

――15周年も大事な節目でありつつ、釘宮さんにとって10周年もかなり大きなタイミングではあったんでしょうか。

釘宮:そうですね。10周年までは、「絶対に10周年はやるぞ」みたいな空気があって、10を超えたらその後続くかどうかは誰もわからない、と思っていました。もしかしたら10で永遠に終わっちゃうのかもしれない、というような、ひとつのピークに向かう感じがありました。なので、そこに向かうまでの緊張感が印象に残っています。でもそこからの5年間は、10を超えたからには15も頑張ればいけるはず、そのために頑張ろう、みたいな気持ちだったと思います。なんか、とにかく10に向かう途中って、10が近づくにつれてどんどん悲壮感を伴っていったところがあるんですけど――。

――悲壮感?

釘宮:私だけかもしれないですけど(笑)。終わってしまうかもしれないから、頑張り切らないと、出し切らないと、全力でやらないと、みたいな空気があって。実際に、10周年を境に変わったことも多かったですし。そのあとの5年間については、緊張感を持つというよりは、リラックスして楽しんで臨みたいな、みたいな気持ちでした。えっ、でもみんなは感じてなかったのかなあ? 私の中では、ピリピリしてたな、という記憶があります(笑)。

――(笑)釘宮さんが『アイドルマスター』に参加されたのが2005年、16年前になるわけですけど、当時『アイドルマスター』はどのようなプロジェクトとして見えていましたか。

釘宮:デビューしてまだ数年みたいな時期で、当時は美少女ゲームみたいなジャンルが活況を呈していたので、ひとまずオーディションに受かって嬉しいなあ、と思っていたのと、初期のアーケードゲームの収録をしているときは、神奈川新町っていうところにあるナムコさんに収録をしに行っていたので、毎回「オレンジカードめちゃ減るじゃ~ん」って思っていました(笑)。頻繁にゲームの収録があって、セリフ量も歌も膨大だったので、「大量に録るなあ」とも思っていましたね。

――膨大な量の収録で作っていった水瀬伊織という人物に最初に抱いていた印象と、伊織を演じたりステージに立って歌を披露していく中で発見していった、彼女の新たな側面について聞かせてください。

釘宮:出会った当初は、「オデコ出してるなあ」という印象でした(笑)。収録をしていく中で、当時のディレクターさんには、「子犬がキャンキャン足下でじゃれついてる感じ」って、よく言われていましたね。そのときに、なるほど、私がこんなに全力で怒ったり怒鳴ったり、「もうダメダメね」とか言ったりしても、それがみんなにはかわいく感じてもらえることもあるんだ、不思議だなあと思っていて。その後で、ライブに参加させてもらったり、長い付き合いになっていくにつれて、気持ちが前向きで頑張り屋さんで、カッコいい女の子だなあ、という印象が強くなっていきました。

――プロデューサーの皆さんには、「伊織はこういう子」っていうそれぞれのイメージがあると思うんですけれども、釘宮さんが「私はここが伊織のいいところだと思う」と感じているのは、どういう部分ですか。

釘宮:皆さんが思っているところが、一番正しいのではないかなって思います(笑)。私自身が気に入っているのは、初期のアーケードゲームのときの、伊織のセリフですね。たとえ漫才みたいなセリフたちがあって。その当時の伊織は、今よりも性格がキツくて、もっと自信満々だったんですね。とにかくプロデューサーがダメダメ過ぎちゃうときに、「ダメダメね、なんとかみたいに宇宙の果てまですっ飛んでいっちゃえばいいのに」みたいな、ちょっとよくわからないセンスのお笑い要素が入っていたんです(笑)。ほんとに初期のことなので、わかる人も少ないとは思うんですけど、変な言葉選びをする初期の伊織のセンスは好きでした。

――長く付き合ってきた中で、伊織との距離が縮まったと感じたエピソードはありましたか。

釘宮:『ぷちます!』っていう作品があるんですけど、その世界観に入ったときに――伊織って、ほんとにちゃんとし過ぎてて、私自身からは遠いなあって思っていました。語学が堪能で、海外旅行が趣味で、本当に財閥のお嬢様だし、すごく頑張り屋さんだし、優秀な人として描かれていたので。でも『ぷちます!』で演じたときに、「ここまで振り切れちゃっていいんだ?」と思って、身近に感じるようになりました。

――ライブについて、お話を伺わせてください。アイドルとしてステージに立つことには、楽しさや喜びもありつつ難しさもあると思います。釘宮さんは、どう感じていますか。

釘宮:そうですね、歌ったり踊ったりが何ひとつ得意ではないので、最初は本当に難しいなあって思っていました。最初はというか、未だにそれは毎回思います。やっていく中で、自分の心持ちが変わっていったところもあると思いますが、最初は本当に難しいなあ、と思っていて。ライブが楽しいなって思えたのは、10周年のドームのときですね。そのときは、「もう終わっちゃうかもしれないから、最後だし楽しもう」って考えていました。「ここで楽しめなかったら一生楽しめないかも」って思っていましたし、ここでひとつの区切りになると思っていて。プロデューサーの皆さんへの感謝の気持ちも込めて「楽しんでるよ」っていう姿も見せたかったので、「楽しもう!」って思いました。