「SNSのキラキラ投稿を見て疲れる」「自分の投稿への反応に一喜一憂」 SNSで人と比べて落ち込むときは…

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公開日:2021/7/4

 こんにちは。臨床心理士/公認心理師の白目みさえと申します。平日は精神科でカウンセラー業務をしながら、SNSなどで漫画の連載をさせていただいております。皆さんは、SNSで他人と自分を比べて落ち込むことはありますか? 本稿では臨床心理士の視点から、「SNSで他人と比べて落ち込んでしまう現象」について私の考えをお伝えできればと思います。

 筆者が独自にフォロワーさんを対象に「SNSで他人と比べて落ち込むことはありますか? またそれはどんな時ですか?」というアンケートを実施したところ、1時間足らずで100通を超える「落ち込みエピソード」が寄せられました。

 そして落ち込むきっかけや理由、またそこに至る思いには、いくつかの共通点がありましたので私が気になったものをご紹介したいと思います。

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キラキラした投稿を見ると落ち込む

SNSで他人と比べて落ち込んでしまう現象

 最も多かったご意見は「キラキラした投稿を見たとき」というものでした。

「キラキラした投稿」というのはいわゆる「意識高い系」の投稿といわれるものです。お金をかけていたり、逆にお金がなくても質の良さにこだわっていたりするもの。投稿者本人の「頑張り」が伝わってくるような「正しい」「ちゃんとしている」という印象を受けるものがそれに当たると思います。

 たとえば、子育て中の友人の投稿で、忙しいはずなのにいつも完璧なご飯を投稿していたり、きれいに片付いた部屋の写真をアップしている。美容に気を遣っていたり、ダイエットを頑張ったりして外見も美しく保っている。そういう「育児中でもキラキラしているママ」の投稿を見ると、そうできていない自分と比較して落ち込んでしまうという意見がたくさん寄せられました。

 基本的に「自分にないもの」というのは、必要以上に魅力的に見えるものです。育児アカウントに限らず、自分ができていないことをやっていたり手に入れていたりする人の投稿を見ると、「すごいなあ」「いいなぁ」と思う反面、「それに比べて私は…」と考えてしまうことはあるのではないでしょうか。

 ではどうして「キラキラ投稿」にはそんなパワーがあるのかというと、「ちゃんとしていること」や「頑張っていること」は誰がどう見ても「おかしなこと」ではないからです。

 人の心の中には「理性」と「欲望」があります。その2つがいつもせめぎ合っているのですが、「ちゃんとしている」というのは「理性」が優勢な状態と言えます。一方で自分に甘くなることや、ルールをやぶったりサボったりするというのは「欲望」が優勢な状態と言えるでしょう。

 一応世間では「理性」が優勢な方が肯定される傾向があり、「ちゃんとしている」と基本的に責められることはありません。でも「欲望に忠実」な場合は「だらしない」「自分に甘い」などと責められてしまうことがありますよね。だから皆さんの心の中にもきっと「理性」は良くて「欲望」は悪いものというイメージがあるのではないでしょうか。

 目の前で「ちゃんとしたこと」をやられてしまうと、「ちゃんとしていない」自分の中にある「欲望に忠実な気持ち」が浮き彫りになり、まだ誰にも責められていないのに責められたような気持ちになって、落ち込んでしまうのだと思われます。

 でもこの「ちゃんと」ってそもそも誰が決めたのでしょう? スムージーを飲んでいれば「ちゃんと」していて、スナック菓子を食べていれば「ちゃんと」していないという謎の基準。「ちゃんと働いている」「ちゃんと食生活に気をつけている」「ちゃんと育児をしている」「ちゃんと余暇を楽しんでいる」。そんなものは、人それぞれで絶対的な基準はないはずなんですけれどね。

 自信のなさやコンプレックスなど、落ち込むのにはさまざまな要因があり「これをすれば落ち込まなくなる!」というものがあるとは言えません。

 もし、他人と比較して落ち込んでしまった場合、「キラキラしている人」ではなく「キラキラしている投稿」という視点を持つのがおすすめです。「キラキラした投稿」を投稿している人が、あたかも崇高な人間かのように見えてしまうことがあるかもしれませんが、そうではありません。もちろん一部「付け入る隙がないぜ」という完璧人間もいるかもしれませんが、だとしたらSNS界隈にどんだけ完璧な人間がおんねんという話です。

 人は「見栄を張る」ものです。料理はたしかに完璧だけど子どもには怒鳴ってばかりだと悩んでいるかもしれない、ダイエットを頑張っておしゃれを楽しんでいてもお部屋はめちゃくちゃ汚いかもしれない、そんな実態があったとしても「きれいな部分を見せたい」という「欲望」で投稿している可能性もあるのです。

「キラキラ投稿」をすることは悪いことではありません。それを見て落ち込むことも悪いことではありません。みんながみんな、自分の「欲望」に反応して動いているだけです。つまり投稿している側も見ている側も根っこは同じなのです。

 人の一部を見て悪く捉える人もいれば、良く捉える人もいます。キラキラ投稿を見て落ち込んでしまう人というのは、キラキラ投稿をした人の悪い部分は見ず、きれいな部分を見てあげようと思える優しい人なのではないかとも思います。

 でもだからこそ。「それはきっと一部」という視点を持っていただきたいのです。

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