YOASOBIを生んだ「モノコン」が開幕! 『小説宝石』でデビューできる賞や団体戦部門も揃う「モノコン2021」の狙いを聞いた!

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公開日:2021/8/11

モノコン

 2020年、「第71回NHK紅白歌合戦」に出演し話題となった“小説を音楽にする”ユニット「YOASOBI」。彼らは、monogatary.com──運営より毎日出される「お題」に対して自由に「物語」を投稿でき、それに対して挿絵やコメントをつけるなど、さまざまなリアクションをして遊べるストーリーエンタテインメントプラットフォームにおいて行われたコンテスト「モノコン2019」をきっかけに生まれたユニットだ。

 YOASOBIの作品は、音楽のみならず、コミック、映像、オーディオドラマと、さまざまなエンタテインメント作品に発展していることはご存じのとおりだが、今年もそんな人気ユニットを生みだしたコンテスト「モノコン」が開幕した。作品エントリー受付中の「モノコン2021」では、どのような物語が求められているのだろう? monogatary.comの3人のプロデューサーに、サイトのこれまでを振り返っていただきつつ、お話を聞いた。

(取材・文=三田ゆき)

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アウトプットの形にこだわらず、作品を広げていけるのが僕たちの武器

──物語投稿サイトmonogatary.comは、どのような思いから誕生したのですか?

monogatary.comプロデューサー 屋代陽平さん(以下、屋代) monogatary.comは、2017年にサービスを開始したサイトです。monogatary.comを運営している僕たち、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントという会社は、音楽を中心に、アニメーションや実写映像作品などさまざまなコンテンツビジネスを手がけていますが、そういったビジネスを進めるなかでは、いかに原作や原案を自社で抱えるかということが、年々大きな課題になっているんですよ。monogatary.comの立ち上げ時には、このような状況でのひとつの取り組みとして、小説投稿サイトという形で原作・原案を発掘し、それを書けるクリエイターさんとより近い距離で接していこうという思いがありました。

 サイト自体は、運営が提案する「お題」に対して、ユーザーさんが作品を投稿するというシンプルなものですが、僕たちは、物語にまつわるいろいろなビジネスを手がけている会社ですから、投げこんでもらった作品を、たとえば出版社でいうところの書籍、映画会社でいうところの映画というふうに特定のアウトプットにこだわることなく、想像を超える形に広げていけます。それこそが、僕たちのおもしろみであり、武器であり、活動の場としてmonogatary.comを選んでいただく理由になるのではないかなと。さまざまな作品を作りつつ、ヒットする作品、ともに作品作りができるクリエイターさんと、長い目でご一緒していきたいですね。

──物語の投稿はもちろん、コメントや挿絵などのリアクションでも遊べるmonogatary.com。幅広いユーザーさんが楽しめそうです。

屋代 そうですね。基本的に、「物語を書く」という行動には高いハードルがある一方で、今インターネットを使いこなしていらっしゃるユーザーさんは、TwitterやInstagramなどWeb上のさまざまなプラットフォームで発言をするということ自体には、そこまで抵抗を感じない方も多いと思っています。monogatary.comは、その中間を目指すというか、「本当に軽いものでも投げこんでいいんだよ」という空気作りにこだわっていますし、そのために背中を押すひとつの材料として、毎日の「お題」を提供しています。

 お題は、運営メンバーで案を持ち寄り、シンプルなお題からちょっとトリッキーなお題まで、バランスよく編成を考えているつもりです。季節に合っているかどうか、創作意欲をくすぐるかどうかも考えあわせて編成し、「このお題であれば書けそう」という「書くきっかけ」にしていただけるかというところにもこだわっています。同じお題にほかの書き手がどのようにアプローチしたのだろうという読み方も楽しいサイトになっているはずなので、物語を通したクリエイターさん同士のコミュニケーションも、monogatary.comでは体験していただけると思いますよ。

──現在、ユーザー数はどのくらいですか?

屋代 ざっくり言うと、月間で300万人〜500万人の方に読み書きしていただいています。ここまでの規模になった理由は、やはり「モノコン2019」から生まれたYOASOBIの存在が大きいですね。2020年から2021年にかけては、彼らをきっかけに作品を読みに来てくれる方も増えましたし、「モノコン」やYOASOBIにまつわるコンテストに応募すべくサイトに登録して書くことをはじめてくださり、そのまま定着してくださったという方もたくさんいらっしゃいました。

 monogatary.comとしては、今後、作品が世に広がっていく規模感やスピード感と、サイトを日々楽しんでいただくというユーザーさんにとっての居心地のよさを両立したまま、スケールを大きくしていきたいという思いがあります。そのためにも、日々の運営やコンテストはもちろん、サイト自体の遊び方のバリエーションをもっと増やしていきたいですね。そうすることで、当初の思いを達成できるといいなと考えています。

キャッチコピーは「ユーザーさんと、こういう世界で、こういう体験を作りたい」という気持ち

──これまでに開催された「モノコン」は、毎年キャッチコピーがついていますね。

屋代 実は今でも、monogatary.comはあまりコンテストありきのサイトにはしたくないんですよね。というのも、monogatary.comでは日々お題が出ているので、毎日がコンテストみたいなものなんですよ。ただ、デイリーの運用としてそういったベースがあったとしても、「気合い入れて書くぞ!」という機会は僕らにとってもユーザーさんにとってもあったほうがいいなという話になったのが、「モノコン2018」開催の1ヶ月くらい前。決めてしまってから走るので、現場はいつも大変です……(笑)。

「モノコン」のキャッチコピーについては、毎年、monogatary.comの運営チーム一同で持っている「今回はユーザーさんと一緒に、こういう世界で、こういう体験を作りたいね」という思いを、キャッチコピーに落としこみ、世の中に対して発信している感覚があります。今年はとくに「物語の作者の一番のモチベーションは、作品を読んでもらうということに違いない」と原点に立ち返り、それを実現できるサービスを打ちだしたい思いが「その物語を、読む人の元へ。」というキャッチコピーになりました。

──今年の「モノコン」は、モノコン史上はじめて「物語部門」「モノカキ部門」「チーム戦部門」の3部門のステージが展開されるとのことですが、この3部門に焦点を当てた理由は?

屋代 「モノコン」に限らず、僕たちには、monogatary.comというサイトを通して、やりたいことが3つあります。ひとつは、作品としてのヒットを出すこと。2つめは、クリエイターさんとつながって、新しい作品をゼロから作ること。3つめは、ユーザーさん同士でコミュニケーションを深めてもらって、monogatary.comをユーザーさんの居場所にしてもらうこと。チームメンバーは、この3つを目指すことで意思統一されていて、「じゃあ今年のモノコンはどういう賞を用意しようか?」という話になったとき、自然とこの3部門に落ち着くような案が出てきました。最初から部門を設置したというよりは、立ち上がってきた企画を3つの部門にわけたというイメージですね。

“よりどりみどり”の賞がそろった「モノコン2021」

モノコン

──「モノカキ部門」は、2つの課題をクリアした大賞受賞者が、文芸誌『小説宝石』(光文社)誌面へのデビュー作掲載を目指せるという、これまでの「モノコン」にはなかったステージですね。

「モノコン2021」モノカキ部門担当 大野里枝子さん(以下、大野) 自分としては、もともと「物書きの人にスポットが当たる企画をやりたい」と考えていました。最近は、本当に書き手のみなさんのレベルが高くなっていて、そこをすくい取りたいという気持ちがあったんです。物語の正統派のようなイメージで文芸誌とのコラボをしてみたいという思いが、光文社の『小説宝石』編集部のご協力を得て、「デビュー作をプロデュース! 賞-『小説宝石』からの挑戦状-」という形で実現しました。

 第一次お題、最終お題と2段階にわけて作品を投稿していただくという形式も、『小説宝石』の方々とお話しする中で出てきたアイディアです。monogatary.comは、1行の物語からでも気軽に参加してほしいという気持ちをいつも持っているサイトです。なので、まずは誰もが広くチャレンジできる一次お題(400字詰め原稿用紙15枚以内)を設けました。

 さらに、第一次選考通過者は最終お題(400字詰め原稿用紙25~40枚)に挑戦していただくことになるのですが、これは、プロの作家さんの作品が載る文芸誌にチャレンジしていただくからには、ある程度の枚数(文字数)を書ける体力のある方であってほしいという『小説宝石』からのご要望をもとに設定しています。プロ作家になるための切符をつかみ、担当編集者と二人三脚で作品をよくしていくよろこびを味わっていただけるといいなと思います。

──「チーム戦部門」は、原作となる物語だけでなく、その展開までの企画を競うステージとなるそうですが?

「モノコン2021」チーム戦部門担当 高瀬和哉さん(以下、高瀬) monogatary.com初の試みとなる団体戦で与えられるのは、TEAM JACKPOT 賞です。そもそもmonogatary.comでは、ユーザーさんたちが日々のお題を使ってリレー小説をはじめたり、みんなで力を合わせてひとつの作品を作ったりと、自発的な共同制作が繰り返し行われていました。それがとてもユニークでおもしろいので、「モノコン」という大きなコンテストでも実施できたら、きっともっとおもしろくなるだろうと考えたんです。

モノコン

 さらに、これまでの「モノコン」では、基本的に「物語」を投稿していただいていましたが、今回は「企画」も同時に投稿していただく形式にしました。というのも、昨今のクリエイターさんは、絵を描くアカウントも小説を書くアカウントも持っているなど、ひとつの身体でたくさんの「クリエイターとしての自分」を立てることができます。YouTuberさんも、演者でありながら、映像の編集者でもあり、企画も立てていますよね。つまり、「クリエイターさんが自分で企画してなにかを作る」というコンテンツが、今の時代には合っているし、流行っている。そんななかで、小説界隈だけは、まだあまりこういった試みが行われていないような気がしたんです。

 たとえば、自分が書いた物語を実写映像にしたい人もいれば、アニメーションにしたい人もいるでしょう。キャラクターに関する情報を書いたテキストなら、そのままVtuberにできるかもしれません。monogatary.comは、書籍化以外にもいろいろな展開ができるサイトです。チームで紡いだテキストを、自分たちならではの作品にしていくための企画書+物語を競っていただくというのが、チーム戦部門です。

──「企画書」といえばちょっと難しいイメージがありますが、どんなものを書けばいいのでしょう?

高瀬 「企画書」というお題ではありますが、フォーマットの用意もありませんし、自由な形式で大丈夫です。アニメーションにするとしたら、「尺(長さ)は何分、声優さんはこの人で……」と細かく指定してくださる企画書もありですし、たとえば「声優の誰々さんに読んでほしい」という熱いメッセージがひとことだけという企画書もありです。「この物語をどうしたいか」という思いがクリアに伝わりさえすれば、ひとことでも、何千文字でもかまいません。

 また、チームのメンバーも、学校や職場、家族などのリアルなコミュニティで挑戦していただいても結構ですし、monogatary.comにはユーザーさんがたくさんいて、メンバー募集のためのお題もありますから、そのお題をご活用いただくのもいいと思います。すべて自由に、楽しんでみてください。

──受賞作がコミカライズやオーディオドラマ化される「物語部門」は、これまでの「モノコン」がより豪華になった部門という印象です。受賞のあかつきにはクリエイター集団“supercell“のコンポーザー・ryoさんとコラボできる賞(ryo (supercell)×MECRE賞)など、展開のバリエーションも豊富ですね。

屋代 monogatary.comとしては、投稿作を展開するにあたって、おおまかに4つの方向性を設けています。そのひとつは、小説や漫画といったいわゆる書籍、2つめは映像、3つめが音楽で、4つめがオーディオドラマ作品ですね。この「物語部門」は、monogatary.comが日々やろうとしている展開のバリエーションを、うまく賞の形に落としこんだ部門になったと考えています。monogatary.comがこれまでやってきたことを、今できるベストの形でアップデートして、どなたにも非常に低いハードルで参加していただけるものではないかなと思いますね。

「モノコン2021」は、全体として“よりどりみどり”のコンテストになっていると思います。複数部門でも、何作品でも投稿してよいというのは、今回も変わらない「モノコン」のルールですが、これだけ賞のバリエーションがあれば、ひとつくらいは自分が興味を持てる賞が見つかると思うんですよ。もちろんすべてに参加するという楽しみ方もありますし、どれかひとつに全力投球してみるという考え方もあります。自分に合うもの、興味が持てるものをチェックして、ひとつからでも気軽に参加してみてほしいですね。

「受賞を目指して精度を上げた作品」よりも、「自分が読みたい作品」を

──最後に、monogatary.comプロデューサーのみなさんは、「モノコン2021」それぞれの部門のご担当として、どんな物語や企画に触れたいとお考えですか。

高瀬 「チーム戦部門」は、個人戦とは違うおもしろさを生かしてほしいですね。「自分はこんなふうに意図して書いたけれど、別のメンバーが書いたものはぜんぜん違っているし、別のメンバーが書いたものもまったく違っている。けれど、俯瞰してみたらすごくいい絵になっている」というような、チームだからこその化学反応がある物語や企画を読めるといいなと思っています。

大野 「モノカキ部門」は、光文社さんでも主催されている新人賞があるなかで、なにを求められているのかなと考えると、今まで文芸系の賞に応募されてきた方とはまた違う、新しい書き手との出会いをmonogatary.comに期待していただけているのかなと想像できますし、私たちはその出会いをじゅうぶんに提供できると思っています。文芸誌だからといって気負わず、今まで自分がおもしろいと感じて書いてきたものを、力一杯書いていただきたいですね。

「モノコン2021」開催にあたり、どんな作品に出会いたいかというお話を『小説宝石』編集長の田中省吾さんにうかがった動画があるのですが、田中さんは、「第一次お題の原稿用紙15枚は、短いからこそ武器になることもある」「驚きがある作品や、『泣けるけど笑える』など相反する感情が含まれた作品を読みたい」とおっしゃっていました。応募者へのメッセージとしての「小説は嘘の話なので、じょうずに嘘をついてください」という言葉も、すごくかっこいいですし、ユーザーさんにわかりやすく伝わるものがあるのではないかなと思います。

屋代 「物語部門」は、ほかの2部門と違って、アウトプットの形が一番具体的に示されている部門です。賞を獲りたいという思いが強ければ、たとえば受賞作品がオーディオドラマ化される賞なら、朗読しやすい長さなどがあると思いますから、過去のアウトプットなどを研究していただくと、精度としてはよくなるだろうなと思います。ただ、僕たち運営スタッフが本当に出会いたいと思っている作品は、実はそういったものではなく、コンテストに乗っかった形で「自分の読みたいもの」を書いている作品なんですよね。

 今回、僕たちは、その作品がいろいろな形でアウトプットされた先で、新しい読者に読まれることを目指したいという気持ちから、キャッチコピーにも「読者に読んでもらえるコンテストだよ」と打ちだしています。「こういう人に読んでほしい」と読者の顔を想像して書かれた作品がmonogatary.comに集まると、僕たちとしてもうれしいですし、作品にとっても幸せなことになるのではないでしょうか。そんなことを考えながら、自由に書いていただければうれしいなと思いますね。

「モノコン2021」実施概要

【物語部門】
・双葉社コミカライズ賞
対象お題:未完結の物語
文字数:10,000字以上~制限なし

・ryo (supercell)×MECRE賞
対象お題:指定イラスト
文字数:制限なし

・聴くモノガタリー賞
対象お題:俺のはなし。
文字数:制限なし
設定:男性主人公1名のみの視点で展開していくストーリー。ジャンルや設定などは自由。魅力的なキャラクターと共に、何度も聴いて楽しめるようなオーディオドラマの原作を募集。

・おサイフケータイ賞
対象お題:2XXX年、日本から現金がなくなった。そして…
「キャッシュレスの進化」をテーマにした小説を募集。SF、ファンタジー、ミステリー、恋愛等、作品のジャンルは自由です。
文字数:3,000文字以上~制限なし
賞金:大賞 50万円 優秀賞 10万円

・まいにち日めくり賞
対象お題:締め切りまであと◯日!
文字数:制限なし
設定:モノカキさんの31日間の物語を自由に投稿。

【モノカキ部門】
・デビュー作をプロデュース!賞-「小説宝石」からの挑戦状ー
第一次お題:土壇場(募集期間7月20日~8月17日)
※400字詰め原稿用紙換算で15枚(6000字)以内の作品が審査対象。
※8月17日に募集を締め切り、8月24日に第一次選考通過者を発表。
最終お題:※8月24日公開(募集期間8月24~9/月21日)
※400字詰め原稿用紙換算で25枚(10000字)以上40枚(16000字)以内の作品が審査対象。

【チーム戦部門】
・TEAM JACKPOT 賞
スケジュール:応募可能期間 2021年7月20日~9月21日14時59分
最終結果発表:2021年11月19日予定
概要:https://monogatary.com/spotwrite/246585


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