松本まりかが、セックスレス夫婦を描いた漫画『それでも愛を誓いますか?』 に感じた、依存しない生き方の重要性

恋愛・結婚

更新日:2021/10/22

松本まりか

 結婚8年目、専業主婦の純(35歳)と夫・武頼(39歳)のあいだには子どもがいない。仲はいいけど、セックスレスは5年目に突入し、出産のタイムリミットも迫るなか、焦りと苛立ちを抱える純に、けれど武頼は向きあおうとしない――。“その話”さえなければ仲良し夫婦。でも、触れあうこともできず、将来のことも話しあえないなんて、夫婦って言えるの? そんな切実な葛藤を描いたマンガ『それでも愛を誓いますか?』。累計発行部数150万部突破の同作がついにドラマ化され10月2日より放送がスタート! 純役をつとめる主演の松本まりかさんにお話を伺いました。

(取材・文=立花もも 撮影=干川修)

――セックスレス、というのは夫婦にとってかなり切実なテーマですよね。純のように、子どもが欲しいと思っている女性にとっては、とくに。

『それでも愛を誓いますか?』1巻(萩原ケイク/双葉社)

松本まりか(以下、松本):“妻だけED”なんて言葉がありますけれど、こんなに悲しいことはないですよね。もちろん、女性側が拒絶するケースもあるでしょうし、どちらの立場であってもつらいと思うんですけど……。日本では、とくに女性が性について語らない空気があるじゃないですか。女優がこうしてその言葉を口にすることすら、敬遠する人は少なくない。そういう意識を、そろそろ変えていってもいいんじゃないかな、と原作を読んでいて思いました。

――純のように、誰にも打ち明けることができず、苦しんでいる女性はきっと多いと思います。

松本:セックスはするけど愛はない、という関係もときに人を苦しめるけれど、愛情だけあればセックスはいらないのかというと、そういうことでもない。純だって、子どもが欲しいという理由だけで武頼と触れあいたいわけじゃないですからね。非常にむずかしいこの問題に、萩原(ケイク)先生はとても真摯に向きあいながら描いてくださっているな、と思います。決して、わかりやすい嘘で問題をごまかしたりしない。純は、武頼にわかってもらおうと、一生懸命に頑張っている。でも、どんなに頑張ってもどうにもならない現実を、容赦なく描き、そこで何ができるのか、どうすれば夫婦の関係を……目の前にいる人との関係をよりよくしていくことができるのか、ということを読者である私たちにも問い続けているような気がします。

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――武頼に対して「逃げるなよ!」と腹が立ちますし、武頼に言い寄る元カノでシングルマザーの沙織にもイライラしますが、読み進めていくうちに2人の気持ちもわかってしまい、断罪しきれなくなってくるのがこの物語のすごいところですよね。

松本:ドラマでは、より客観的に人間関係を映し出すので、純のダメなところも浮かび上がってくるんですよ。武頼もめんどくさくなっちゃうなとか、あんなふうに嫌味ばっかり言われたら、うっかり沙織と飲みに行っちゃうのもわからなくないな、とか……。そして純のダメなところって、多くの女性には身に覚えのあることだと思うんですよね。だからこそ「この人、いやだな」とならずに、それでも共感してもらえる主人公を演じなければいけない、というところにひとつのハードルがありました。

――演じる上で、どんなことを意識されていましたか?

松本:原作の萩原先生も、ドラマの監督も、女性なんですよね。だから、ってわけではないかもしれないけれど、女性自身が自分の力で人生を切り開き、たくましく生きていくために必要なことが、原作にもドラマにも詰まっています。一人きりで生きていきたいわけじゃない。愛する人と、できることなら一生、寄り添いあっていきたい。でもそれは相手に依存することと違うんだ、って視聴者の方に伝わればいいなと思っていました。

――たしかに純も、8年ぶりに会社員として働きはじめて、武頼と切り離して“自分”を見つめられるようになってから、少しずつ強くなっていきますよね。

松本:そうですよね。私もいつか、自分と相手の境界線をなくしてしまうのではなく、芯のところで深く信頼しあって、同じ方向を見つめていれたらなと思います。相手がいなくても自分は生きていける、くらいお互いが強く自立して、はじめて、相手の弱いところも受けとめられるようになるし、共倒れになることなく支えあえるんじゃないかなと思うんですよね。

――強く自立するために、必要なことってなんだと思いますか?

松本:私の場合は、一生成長し続ける覚悟をするってことかな。年齢を重ねるにつれて、自分の中にある程度、自分なりの答えがかたまってきますよね。それを「違う」って言われた時に、受け入れられる素直な心を常にもっていたいんです。間違いを指摘されるのってすごく恥ずかしいし、プライドが傷つくけれど、ちっちゃなプライドにしがみついて、自分の考えを崩すことができなかったら、いつまでたっても成長しないまま。やっぱり自分が正しい、って結論に辿りついてもいいんだけれど、その前に一考できる素養は必要だと思います。スクラップ&ビルド、ですね。

――自分を壊して、つくりなおしていく。

松本:ふりかえってみれば、10代のころから私はずっと、自分を壊して、つくって、また壊して、のくりかえしだった気がします。もちろん若いころは「私は絶対に間違ってない!」って思ったりもしたんですけど(笑)。でも、誰かが間違ってるというなら、そういう面もあるのかもしれない、って考えるようにはしていました。その作業を重ねていくと、自分とはまるで違う価値観をもった他者を理解することもできるようになっていくんですよね。私とは違うけれど、その人にはその人なりの正義があって、生き方があって、その結果今に辿りついているのならば、一方的に責めることはできないな……って。

――純と武頼の関係を考える時にも、必要なことですね。

松本:もちろん相手にどんな事情があれ、傷ついたことが事実なら、理不尽に耐える必要はないと思います。でも純の場合、武頼を一方的に責めて、彼を平伏させたところで、問題は解決しないんですよね。武頼がどんな悲しみや痛みを背負ってその結論に至ったのか、まずは理解しないと話しあうことができない。……すごく、つらいですけどね。自分とはセックスしてくれないのに、沙織とはデートして、楽しそうに笑っているのを見たら、立ち直れないほど傷つくのはあたりまえ。でも、たとえ生涯をともにする夫婦であったとしても、自分の人生は自分だけのものだから……。悲劇のヒロインになって、自分の傷を相手にどうにかしてもらおうとするのではなく、自分の足で立ちあがる強さをもつことが、必要なんだろうなと思います。

――厳しいですね……。

松本:厳しいです。本当に、このドラマ、全然甘やかしてくれないので! ただ、純にとっての救いは、会社で出会った若手社員の真山くんで。彼はコミュニケーションが苦手そうにみえて、自分の想いに正直で、純のことが好きだとまっすぐ伝えてくれるんですよね。そういう純粋さは、何歳になっても忘れちゃいけないなと思いました。相手に伝える、というのもそうだし、自分に対しても「もうおばさんだから」みたいにネガティブな言葉を使わないのって、すごく大事。「自分はきっとおばあちゃんになるまでイイ女になり続けることができるんだ」って信じ続けることが、未来を生きる希望になって、胸を張って頑張れるのかもしれないな、って。純の姿を通じて、そんなことが視聴者の方にも伝わってくれたら、嬉しいです。

ヘアメイク:板垣美和 スタイリスト:柾木愛乃

衣装協力:トップス4万1800円、スカート5万0600円、中に着たワンピース3万3000円(SHIROMA☎︎03-6411-4779)、ピアス3万6850円(ドーラ/ロードス☎︎03-6416-1995) 靴2万8600円(ダイアナ/ダイアナ 銀座本店☎︎03-3573-4005)(全て税込)

◎放送情報
ABCテレビ(関西) 毎週日曜よる11時25分~
テレビ朝日(関東) 毎週土曜深夜2時30分~
※ほか地域でも放送。 
※ABCテレビ放送後より、TELASAで独占配信。(TVer・GYAO!を除く)

◎スタッフ&キャスト
【出演】 

純須純 松本まりか
真山篤郎 藤原季節
藤谷賢二 松澤匠
三好果歩 松岡依都美
橘野明  吉田沙世
滝中河五郎 菅原大吉
足立沙織 酒井若菜
純須武頼 池内博之 ほか

【スタッフ】
原作:萩原ケイク『それでも愛を誓いますか?』(双葉社)
脚本:兵藤るり 鈴木史子 川原杏奈
主題歌:I Don’t Like Mondays.『音楽のように』
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
監督:広瀬奈々子、森本晶一、橋本英樹、渡邉裕也
チーフプロデューサー:山崎宏太(ABCテレビ)
プロデューサー:松本太一(ABCテレビ)
       :奈良井正巳(ABCリブラ)
       :伊藤正昭
制作協力:ABCリブラ
制作著作:ABC