福本莉子さんが選んだ1冊は、読むだけで心穏やかになる『日日是好日』

あの人と本の話 and more

公開日:2022/2/7

福本莉子さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、福本莉子さん。

(取材・文=河村道子 写真=諸井純二)

 花を眺め、掛け軸と向き合い、道具を愛でて。お茶の稽古に通うようになってから、移ろいゆく日々のなかに小さな楽しみを見つけることが増えてきたと語る福本さん。

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「家では母がよくお茶を点てていました。日常的に触れながら関心を高めていた茶道。お稽古に通いたいと思いながらも、なかなか実現できずにいたのですが、そんな折、出会ったこの本が背中を押してくれました」

 大学生の頃、「お茶」と出会った著者が、がんじがらめの決まり事と長い時間をかけて向き合うなかで見つけた“自由”と五感で季節を味わう歓び――。その過程のなかに、みずからを置いてみたくなったのだという。

「文章を読んでいるだけで心が落ち着くんです。本を通じ、“お茶”の空間に入り込んでいくような感覚が現れる。著者の気づき、そこに記された言葉も心に染み入ってきました」

“人間はどんな日だって楽しむことができる。そして、人間は、そのことに気づく絶好のチャンスの連続の中で生きている”――。本から得た思考は、映画『君が落とした青空』で演じた高校生・実結が気づいていくことにも重なってきたという。

「何度もタイムリープをする実結は、目の前で交通事故に遭ってしまった、付き合って2年になる修弥(松田元太)を助けるという強い気持ちを持ち、いろんなアクションを起こしていきます。それによって周りの人々も変化し、さらに自分も、自分を取り巻いていた何でもない一日もかけがえのない一日へと変わっていく。自分次第で世界は変わるという真実が、幾度も繰り返す一日を通し、映画のなかに現れてきます」

 毎月1日に一度、一緒に映画を観に行く約束をしている実結と修弥。だが実結は、本当に自分たちは付き合っているのか、自信を持てずにいる。さらに最近、修弥が何か隠していることにも気づいて……。

「実結は主人公ですが、けっして“ヒロイン”にはならないようにしたいと思いました。観てくださる方が自分を重ねられる等身大の高校生を意識し、演じ続けていました」

“まず自由に演ってみて”というYuki Saito監督のもと、共演者と自由な空気のなか臨んだ撮影。その伸びやかさが映像から伝わる。

「観た後に、“胸きゅん映画ではないんだ”ということに気づいていただけると思います。一日、一日を大事にしたいという、自分のなかで生まれてきた思いにも。大切な人と一緒に観ていただきたい映画です」

ヘアメイク:山口久勝 スタイリスト:武久真理江 衣装協力:ドレス9万7650円(パコ ラバンヌ/エドストローム オフィスTEL03-6427-5901)/ブレスレット15万5000円、イヤカフ6万9000円(ともにシャルロット シェネ/エドストローム オフィスTEL03-6427-5901)(すべて税込)/その他スタイリスト私物

ふくもと・りこ●2000年、大阪府生まれ。第8回「東宝シンデレラ」でグランプリを受賞、18年、映画『のみとり侍』でデビュー。出演作にドラマ『パパがも一度恋をした』『消えた初恋』、映画『思い、思われ、ふり、ふられ』『映像研には手を出すな!』『しあわせのマスカット』など。待機作に映画『20歳のソウル』。

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映画『君が落とした青空』

映画『君が落とした青空』

原作:櫻 いいよ(『君が落とした青空』スターツ出版) 監督:Yuki Saito 出演:福本莉子、松田元太(Travis Japan/ジャニーズJr.)、板垣瑞生、横田真悠、莉子 配給:ハピネットファントム・スタジオ 2月18日(金)公開
●付き合い始めて2年経つ修弥の気持ちがわからない実結。ある夜、目の前で彼は事故に遭う。だが目覚めると実結は、事故当日の朝に戻っていた。何度も「同じ日」を繰り返すなかで実結が知る真実とは?
(c)2022映画『君が落とした青空』製作委員会