古川雄大さんが選んだ1冊は?「天才脳外科医たちの戦い続ける姿に共感します」

あの人と本の話 and more

公開日:2022/2/9

古川雄大さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、古川雄大さん。

(取材・文=五十嵐 大)

2020年に出演したドラマ『トップナイフ―天才脳外科医の条件―』。その脚本を手掛けた林宏司さんが書き下ろした小説版は、古川さんにとって、いまでも大切な一冊だという。

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「ドラマとはまた違ったアプローチで、一人ひとりのキャラクターの悩みが描かれています。登場する天才脳外科医たちは常に孤独と戦っていて、特に家族との関係がテーマになっている黒岩健吾の章は、読んでいて思わず泣いてしまったんです。また、主人公の深山瑤子が下した決断は、胸に来ました。生きていると誰だって選択を迫られる瞬間があります。そう考えると、この作品はいろんな人に通ずるものなのかな、と思うんです」

本作に登場する人物たちは孤独と向き合い、第一線で戦い続けている。医療現場と演劇というフィールドこそ異なるが、それは古川さんにも言えることだ。

「役者の仕事もずっと戦いなのかもしれません。たとえば舞台であれば、初日を迎えるまでは常にプレッシャーがつきまとっていて、それと対峙しなければいけない。ぼくはそれを誤魔化せないタイプなので、ひたすらひとりで消化するんです。ただ、無事に上演できたときの解放感は気持ちよくもあって。だから、この仕事をしているのかなとも思います」

古川さんはまさにいま、プレッシャーの最中にいる。日本初上演となるマーティン・クリンプ脚色版『シラノ・ド・ベルジュラック』で主演を務めることになったのだ。

「シラノは感情の流れが激しめで、セリフの分量も多い。しかも劇中でラップを披露するという、舞台としては新しい見せ方にチャレンジしている作品でもあるので不安はあります。その分、これを演じ切ることができれば、きっと見える景色も変わるんだろうなと思っているんです」

主人公のシラノにはコンプレックスがあり、そことどう向き合い成長していくのかがひとつの見所だ。

「ぼくもコンプレックスが多いので、悩みを抱えるシラノが、それを他人に悟られないように振る舞うところに共感しました。これまでの役柄では、決まった動きのなかで感情を後乗せしていくことが多かった。でも今回は、感情を内側から抉り出さなければいけないと思うんです」

覚悟をもって挑む古川さん。だからこそ、多くの人に観てもらいたい。

「悩みやコンプレックスを抱えている人たちの、まるで助けになるような作品です。シラノの生き様がそっと背中を押してくれるはずなので、劇場にお越しください」

ふるかわ・ゆうた●1987年7月9日、長野県生まれ。2007年俳優デビュー。以降、さまざまな映像作品に出演し、近年は舞台の世界でも活躍する。近作にドラマ『私の正しいお兄ちゃん』『女の戦争〜バチェラー殺人事件〜』に主演、映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』、ミュージカル『モーツァルト!』『エリザベート』など。

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舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』

舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』

作:エドモン・ロスタン 脚色:マーティン・クリンプ 翻訳・演出:谷 賢一 出演:古川雄大、馬場ふみか、浜中文一、大鶴佐助、章平、堀部圭亮、銀粉蝶ほか 2月7日(月)~20日(日)東京芸術劇場 プレイハウス、2月25日(金)~27日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
●17世紀フランスに実在した詩人・シラノ・ド・ベルジュラック。コンプレックスに悩みながらもひとりの女性を愛し抜いた彼の人生。現代的で斬新な脚色を施したマーティン・クリンプ脚色版を、谷賢一の翻訳・演出により日本で初上演!