『うる星やつら』諸星あたるには「好きだ」と絶対に言わせないと決めていた! 高橋留美子先生に聞いた“歴代人気キャラクター”にまつわる22の質問

マンガ

更新日:2023/2/10

 『うる星やつら』のアニメ化が発表され、再び注目が集まっている漫画家 高橋留美子さん。
 高橋留美子さんといえば、昨年6月にTwitterのオフィシャルアカウントをオープンした。ここで人気となっている企画が「キャラクター小話」だ。キャラクターへの高橋留美子さんの想いや裏話が不定期に公開されている。

 しかし、いかんせん1キャラにつき140字。「もっともっと自分の好きなあのキャラについて、高橋留美子先生に語ってほしい!」と考えているファンは多いはず。
 そこで、「キャラクター小話」に登場したなかでも特に反響が多かった10キャラクターについて、ダ・ヴィンチWebで改めてインタビューを実施した。

 これまで「キャラクターが当初の構想から変わり、想定外の動きをした」といったエピソードが度々語られているが、「構想時からのキャラクターの変化・成長」にフォーカスして質問を行ってみた。

 高橋留美子さんからは、一問一問、たいへん丁寧に直筆でご回答をいただいた。ここで初披露の裏話もたくさん登場する、とても貴重なインタビューになったと思う。

(取材・文=金沢俊吾)

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高橋留美子
(C)高橋留美子/小学館

【全体について】

Q、キャラクターについて「描いてるうちにこうなりました」「こういう展開になると思ったけど、なりませんでした」といったお話を度々されていますが、キャラクターが先生の想像を超えた動きをするのは、どういったタイミングで、どのような形で起こるのでしょうか?

 基本キャラの細かい性格は描きながら決めていきます。エピソードごとのリアクションやキャラ同士のからみでその都度「その人らしい」感じを探ります。特定のタイミングはありません。

『うる星やつら』
①諸星あたる

諸星あたる
(C)高橋留美子/小学館

Q3、描いていくなかで、当初の設定から変化していった部分を教えてください。

 当初は災難に巻きこまれる系でしたが、被害者っぽいのもイヤなので、自ら積極的に災難に向かっていく感じにしました。主に女がらみで。それで主人公ぽくなったかなと思っています。

Q4、最終回のラムに対する行動やセリフは、どの段階から決まっていたのでしょうか?最終回のあたるを描いたときの心境を教えてください。

 最終回を描き始めてから決めましたが、今までの行動、性格を鑑みて、素直な行動はできないだろうと。絶対に『好きだ』と言わせないと決めていて、ならばどう行動し、ラムに気持ちを伝えるのかを考えました。過去のあたるの行動言動、クセを総動員して描いたので、あたるは最後まであたるを貫いたのではないかと思っています。

②ラン

ラン
(C)高橋留美子/小学館

Q5、「A型っぽい」と仰っていましたが、キャラクターを考える際に血液型も決めるのでしょうか?ラム、あたるの血液型を考えていれば教えてください。(どちらもB型っぽいと思いました)

 描きながら段々と、この人はこうだな、と思っていく感じ。最初からハッキリ決めることはありません。ラムとあたるはBとOのミックスっぽいなと後々思いました。

Q6、「思ったより受けたのでびっくりした」と仰っていましたが、人気によって登場機会や、活躍の仕方には変化がありましたか?

 新レギュラーを出す場合読者の反応がわかるのは最短で2週間、連載当時はもっと遅いので、最初は手探りでした。人気が出たら当然登場回数は増えますし、『読者の許しを得た』訳ですから、どんどん既存のレギュラーとからめて、話を広げていけます。ランの場合はラムの他に弁天やおユキとからめる事で各人の性格の違いも描けて楽しかったです。

『めぞん一刻』
③三鷹瞬

三鷹瞬
(C)高橋留美子/小学館

Q7、過去のインタビューで「三鷹さんの終盤を丁寧に書いた」と仰っておりましたが、先生は三鷹さんのどういった所に惹かれましたか?

 かなり早い段階で出ていたライバルキャラだったので、それなりの花道を用意してあげたかったという事です。

Q8、三鷹さんが身を引く展開はスムーズに決まったのでしょうか?五代との関係性の変化や他のアイデアなど、決定するまでの経緯を教えてください。

 犬が苦手という設定が決まった段階で、「この男はいつか犬で身を滅ぼすであろう」と、担当編集者が予言してくれ、私もそれは面白いなと思いました。
 身を引くエピソードも要所要所で犬を絡めながら時間をかけて描いていきました。
 明日菜と結婚を決意する回は原稿段階で大幅に改訂しました。最初のネームは「あきらめ」みたいな感じが強めでしたが、やはり本人納得の上で前向きに生きて欲しかったので、アルバムのエピソードと明日菜のダジャレを加えて明るい感じに仕上げました。

④六本木朱美

六本木朱美
(C)高橋留美子/小学館

Q9、終盤は朱美さんの動きが展開を大きく動かしました。これは想定通りでしたか?

 朱美は1回目からのレギュラーで、五代と響子のエピソードはほぼ把握しており、色々言えるポジションだったので、響子のまあまあ理不尽な行動言動に突っこむ役割を果たしてくれました。これも物語の積み重ねに応じてなので、最初から想定していた訳ではないですが、いい感じに機能してくれたかなと思います。

Q10、本当は五代君のことを好きだったと思われますか?

 少なくとも作者は、それはないだろうと思っています。

『らんま1/2』
⑤シャンプー

シャンプー
(C)高橋留美子/小学館

Q11、シャンプーは、戦闘シーンが他の女性キャラに比べて、戦闘の動きがやわらかい印象があります。「シャンプーらしい動き」という描き分けは、どのように意識されましたか?

 錘(すい)のような重い武器を持つ時には直線的な動きも意識しましたが…。
 連載当初、拳法家の方に色々教えていただく中で、中国拳法の美しい曲線はステキだなと思い、シャンプーは女性だし、軽やかさも加えたいと思いました。

Q12、恋敵だったあかねへの態度の変化は、意図していたものだったのでしょうか。また、乱馬への想いの変化もあれば教えてください。

 あんまり変化させたという意識はないのですが、物語が進み何度もからむうちにゴリゴリの恋敵から、ある程度対話もできるようになったのではないかと。
 乱馬への想いは、表現のバリエーションは色々ありましたが、あまり変化はなかったと思っています。

⑥響良牙

響良牙
(C)高橋留美子/小学館

Q13、主人公のライバルとして、先生の作品の中でも屈指の人気キャラクターだと思います。描き続けるにあたり、イメージした他作品に登場する「ライバルキャラ」はいますか? また良牙の人気を受けて、感じたこと・作品に影響されたことがあれば教えてください。

 いません。
 良牙は早乙女親子以外で初の変身キャラだったので定着するといいなと思っていました。自分の中で乱馬の性格設定、軽め、まあまあ余裕ありみたいな感じがむしろレアで、良牙の熱血な所とかが、私の憧れる少年漫画っぽくて好きでした。なので人気が出てくれて安心しました。単なるライバルでなく時には乱馬を助ける感じとかも、他のライバルキャラと一線を画していたり、友達感もあり、楽しんで描けるキャラでした。

Q3、「方向音痴で単純」という一貫した性格ですが、思いついたけれど使わなかった設定や展開があれば教えてください。

 最初のネームでは女子とうまく話せないとかで試してみましたが動かず、やめました。結果、そういう一面も出てきたので使った事になります。ブタに変身する事も最初から決めていました。

『犬夜叉』
⑦蛮骨

蛮骨
(C)高橋留美子/小学館

Q15、短い登場期間にもかかわらず人気のキャラクターですが、蛮骨に限らず、反響を受けて延命したり、登場機会を増やすことを検討する場合もあるのでしょうか?

 七人隊はそもそも死人で、四魂の玉で甦っている以上、死ぬしかないキャラでした。なので延命はさせていませんが、それなりの花道を持たせようとは思いました。
 そして七人隊は出ていきなり2人死んでいるので、残った五人が役割分担せざるを得ず結果登場回数が増える事になりました。あとは、犬夜叉サイドの誰とからむと面白いかを考えながら描いていました。
 読者からの延命の声が多かったのは蛇骨ですが、殺さざるを得ず…。自分も蛇骨の最期を描いた時はとても寂しかったです。

Q16、「敵の軍団のリーダー」といえば、たくさんの作品に魅力的なキャラクターが存在していますが、影響を受けたキャラクターや作品があれば教えてください。

 仲間集め系の漫画は、全員揃うまでのワクワク感が好きです。逆に、リーダー格を出すにあたって読者の期待感を裏切らないように考えました。

⑧珊瑚

珊瑚
(C)高橋留美子/小学館

Q17、「あの後の酷い目は、描きながら流れ」とのことでしたが、図らずもそうした環境に身を置いた珊瑚を、どのような気持ちで描かれていましたか?

 私の中ではかなり過酷な境遇のキャラだったので、気の毒だなあと思って描いていました。しかし、そういう境遇だからこそ出てくるセリフや行動があって、弟のために仲間を裏切ろうとしたり、弥勒を置いて逃げるぐらいなら「ここで一緒に死ぬ」と言ったり、弥勒を助けるために、りんを犠牲にしようとしたり、これは珊瑚の背景がなければ成立しないもので、私の主要キャラの中では結構珍しい人で、新鮮でした。

Q18、弥勒と結ばれることは、どの段階で決まっていたか教えてください。これは先生にとって意外な展開だったのでしょうか?

 珊瑚の父と退治屋たちのお骨を集めて、「供養します」と弥勒が言った時に、珊瑚は弥勒を信用(まだ信頼ではない)し、これならうまくいくんじゃないかと私は思いました。ただ、結構命懸けの恋に発展していったので、そこは想定を越えていました。

『境界のRINNE』
⑨真宮桜

真宮桜
(C)高橋留美子/小学館

Q19、「描いてる私も「今この人、無だ」と掴み所がなかったです。桜が何を考えてるのか分からないなりに、楽しく描いてました。」とのことでしたが、心情を想像しながら言動や展開を考えられるということでしょうか?どうされているのか教えていただきたいです。

 桜を描くにあたっての楽しみは「コメント」でした。ソフト突っ込みみたいな。
 心情が出る場面は、やはりりんねに対してなので、心情はわからなくはないけれど、それを桜はどう表現するんだろうと考えながら描いていました。激しい感情の起伏がない分、そして常にどこかトボケていて欲しかったので、そういう桜らしさを探っていました。

Q20、『境界のRINNE』に限らず、「この人の気持ちは手に取るようにわかる!」というキャラクターがいたら教えてください。

 『めぞん』の五代は結構わかり易かったです。

『人魚シリーズ』
⑩真魚

真魚
(C)高橋留美子/小学館

Q21、人魚シリーズを描かれた期間に、『うる星やつら』『めぞん一刻』『らんま1/2』を連載されていましたが、真魚を描くなかで音無響子や天道あかねといったヒロインの影響はありましたか?

 ありません。真魚は真魚なので。

Q22、長い期間同じキャラクターを描かれるなかで、先生の経験や心境の変化が、キャラクターに影響を与えることはありますか?

 一応人魚シリーズはリアルタイムで、キャラが作者読者と同じ時間軸を共有している感覚で描いていました。
 スタートは湧太と真魚の出会いからなので湧太によって真魚の心がどう育っていくのかが毎回の大切な要素であったと思います。作者自身がキャラに影響するということは、あまりなかったと思います。

 高橋留美子先生の回答を見てみると、キャラクター同士の関係や、読者からの反響を受けて、キャラクターひとりひとりが当初の構想から大きく動いていることがわかる。
 こうした「作者の想像を超えた変化」が、高橋留美子作品のキャラクターを活き活きと魅力的にしているポイントのひとつなのだろう。

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