「母子共に無事」は当たり前ではない。産科ナースが描く出産のリアルとは? 命に向き合い奮闘する姿が心に響く、看護師・医師のお仕事漫画5選

マンガ

公開日:2024/12/26

 命の現場で重要な役割を担う、看護師や医師の奮闘をリアルに描いた漫画を紹介する。医療従事者だけでなく、毎日を頑張るすべての人の背中を押してくれるような作品ばかりだ。

 産科、研修医、地域医療、看護師…など普段触れられない医療従事者の実情を覗き見してみてはどうだろうか。医療現場の実情や緊張感と、そこで働く人々の人間味を同時に楽しむことができるだろう。

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コウノトリのお手伝い 産科ナースが見た命の奇跡

 命の誕生に立ち会う産科ナースの仕事は、喜びと責任が交錯する特別なものだ。『コウノトリのお手伝い 産科ナースが見た命の奇跡』は、産科ナースの現場を描いた医療エッセイ漫画だ。妊娠や出産の現実を描き、どれだけ妊婦たちが命がけで出産に臨んでいるのかを伝える。

 外科看護師として働いていたみちよは、産科への異動を命じられる。実際の現場には、喜びだけでなく悲しみや困難とも向き合わねばならない現実が待っていた。出産時の激痛に耐えきれず腕を握りしめられ傷だらけになるエピソードや、「大切なのは産み方より育て方だ」というナースたちの言葉には、経験に裏打ちされた説得力と優しさが込められている。また切迫早産や妊娠高血圧症候群に直面する妊婦の言葉からは、改めて妊娠・出産が奇跡のようなものだと実感できる。

 女性だけでなく、男性にもぜひ読んでほしい作品だ。産科ナースの奮闘や妊婦たちのリアルな物語を知ることで、妊娠への理解が深まり、妊婦に優しい社会の実現に繋がるだろう。命の奇跡をテーマにした本作は、誰の心にも響くこと間違いなしだ。

まどか26歳、研修医やってます! お医者さん修行中コミックエッセイ

2025年1月14日からテレビドラマの放送がスタートする『まどか26歳、研修医やってます!』。未だ男性中心の医療現場で奮闘する女子研修医を主人公にした作品だ。未経験の壁にぶつかりながらも奮闘する姿やその成長は、読者に勇気や元気を与えてくれる。

 外科医を目指す研修医1年生・若月まどかは、明るく負けん気が強い性格。本作は、まどかが研修期間中に直面する課題や成長をコメディタッチで描いている。点滴が上手くできなかったり、緊急時に心臓マッサージを施したりと、日常は挑戦の連続だ。未経験の壁にぶつかりながらも奮闘する姿は、多くの者に自分も頑張ろうと思わせる力を持つ。また各科の個性豊かな先輩医師たちとの、ユーモラスな関わりも見どころのひとつだ。

 医師の世界を舞台にした本作だが、男社会の中で働く女性が抱える問題や、仕事とプライベートの両立の難しさなど誰もが共感できることばかり。「あるある」と頷きながら読むうちに、日々の自分の仕事にも励みが湧いてくる。職場や立場・性別問わず、多くの人に手に取ってほしい1冊だ。

腐女医の医者道! これが私のニューノーマル編

 医師の裏側をオタク目線で描きながら、働く女性のリアルな姿を追った「腐女医の医者道!」シリーズ第4作目となる『腐女医の医者道! これが私のニューノーマル編』。医師であり母でありオタクでもある作者が、コロナ禍の医療現場や家庭、趣味についてユーモラスに綴っている。新しい時代を生き抜くヒントが詰まった本作は、仕事や育児に奮闘するすべての人にとって、希望の灯となるだろう。

 本作ではコロナ禍における医療従事者としての苦悩はもちろん、リモート学習や臨時休園といった予期せぬ事態が相次ぎ、親としての対応にも追われる様子も描かれる。一方オンライン即売会の普及など、オタク文化は柔軟に時代に適応していく。外出制限により同人誌即売会が開催されない中、デジタル化が生んだ新たな可能性をポジティブに描写している。

 本作は「不要不急」の趣味や楽しみの重要性を再確認させる1冊でもある。多忙な日常の中で自分の幸せとも向き合う大切さを伝え、働く母親や多くの読者にエールを送る。作者のパワフルな姿は、読者の背中を押してくれるはずだ。

離島で研修医やってきました。 お医者さん修行中コミックエッセイ

『離島で研修医やってきました。 お医者さん修行中コミックエッセイ』は、離島の医療現場を体験した研修医の奮闘を描いた作品だ。こちらも2025年1月14日から放送されるテレビドラマ『まどか26歳、研修医やってます!』の原作の1つ。地域医療の特異な現場をユーモアを交えながら描き、医師が直面する課題や責任感をリアルに伝えている。

 研修医・ポチは、離島唯一の医療機関である診療所で研修医生活を送る。近隣住民がお裾分けを持ち寄って診療所を訪れるほどに、患者個人との繋がりが密接で温かな環境だ。だが、高齢化や医療資源・医師の不足などの問題も山積みだ。時に専門外となる症状の診断・診療を行い、訪問診療では限られた道具で適切な治療を施し、深夜や早朝でも駆け込んでくる患者に対応する。柔軟な判断と医師としての責任が常に求められる緊張感、そして達成感は、離島医療ならではの体験といえるだろう。

 医療従事者だけでなく一般の読者にとっても、医療の本質や地域社会の在り方を改めて考えさせられる1冊だ。ぜひ本書を通じて、地域医療の現実と可能性に触れてみてほしい。

じたばたナース 4年目看護師の奮闘日記

 仕事に疲れて重くなった心を軽くしてくれる、お仕事漫画を紹介する。『じたばたナース 4年目看護師の奮闘日記』は、アラサー看護師が仕事や婚活に奮闘する姿を赤裸々に描いている。

 看護師4年目の秋野海は、未だ日々の業務に手一杯で時にミスをしたり、同期で優秀な男性看護師・白鳥と自分を比べて落ち込んだりすることも。そんな海が新人指導係を任されることになり、今どきギャルの新人・藤崎とのやり取りを通じて成長していく物語だ。藤崎への戸惑い、不安と奮闘の日々、そして患者や同僚との人間関係は、看護師でなくとも共感できる部分が多い。

 また医療現場のリアルな一面や、幼少期に主人公の海が看護師に救われた経験を思い出す場面も描かれる。看護師はハードな仕事だが、多くの人の心を支え感謝される仕事だということがわかる。仕事が辛い時、本書で海の日常を覗いてみると良い。笑いと涙が詰まった物語に元気をもらい、もう少し頑張ってみようと背中を押してもらえるはずだ。

 医療現場のリアルを描いた、看護師・医師のお仕事コミック。笑いあり涙ありの人間ドラマをぜひ堪能してほしい。

文=ネゴト / fumi