セックスレスが辛いのはどうして? 漫画で学ぶ「スキンシップがなくなる原因と解消法」

恋愛・結婚

更新日:2022/5/31

スキンシップがなくなる原因と解消法

 なぜ、セックスレスは辛いのでしょう。

 もはや社会問題になっているセックスレス。日本では夫婦やカップルの半数以上がセックスレスだとも言われています。

 セックスをする・しないは当事者同士の自由です。セックスをしなくても、愛のある関係を築いている人たちはいます。一方で、セックスレスが原因で不倫や浮気、離婚をしてしまう人たちもいます。いったい、彼らの違いとは何なのでしょうか。

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 最近では多くの人の共感を集め、話題になっているセックスレスをテーマにした作品がフィクション・ノンフィクションを問わず、いくつも生み出されています。これらの作品をひもといていくと、単に性的な触れ合いがないことがセックスレスの悩みではないと分かってきます。

 本稿では、セックスレスにまつわるコミックエッセイ・漫画作品を見ながら、パートナーとの触れ合いがないことで生まれる辛さの正体や解消法を探っていきたいと思います。

夫が拒否…どうしてこんなに辛いの? 30代セックスレス夫婦を描いた漫画『あなたがしてくれなくても』

『あなたがしてくれなくても』(ハルノ晴/双葉社)は、セックスレスに苦しむ2組の30代夫婦を描いた漫画作品。

あなたがしてくれなくても
『あなたがしてくれなくても』(ハルノ晴/双葉社)

 主人公のみちは32歳、結婚5年、レス歴2年。セックスレスをどうにかしたいと悩むみちに対して、夫の陽ちゃんは「疲れてるから」「みち色気がないんだよ」と真剣に耳を傾けようとしません。セックスレスをどうにかしたいと頑張るみちに対して、陽ちゃんは「プレッシャーなんだよ」と突き放します。

 そんななかで、みちは会社の先輩、新名誠(36歳)も妻とのセックスレスに悩んでいることを知ります。拒否される側のみちと新名。まるで戦友ができたようだと、みちと新名は心の距離を縮めていきます。

セックスレスはいつから? 定義上の期間は「1カ月以上」

 そもそも具体的に「セックスレス」とは何でしょう。学術的な定義を調べると、病気や特別な事情がないにもかかわらず、1カ月以上性交渉がないことを指します。

 日本性科学会が1994年に発行した学会雑誌によると、パートナーとの性的な触れ合い(セクシュアル・コンタクト)が1カ月以上おこなわれない場合も、セックスレスに位置付けられるそうです。望んでいるのにできない状況が1カ月以上続けば、定義上はセックスレスということになります。

 本作のみちと陽ちゃんの状況は、間違いなくセックスレスです。しかし仮に1度でも挿入したという事実ができたら、みちが抱えている悩みはすべて解消されたといえるのでしょうか。

セックスレスより「心の距離感」が問題に

 みちは確かにセックスレスに悩んでいます。しかし性的な欲求を解消したくて悩んでいる、というわけではありません。みちは陽ちゃんからの愛情を実感できず、不安のなかでセックスレスという悩みをひとりで抱えています。

 一方で、陽ちゃんはどうでしょう。みちへの愛情が冷めたわけでも、性欲が消えたわけでもありません。しかしコンビニの雑誌コーナーで「妻だけED」の特集を見かけた時、彼が内心で思ったのは「病名がついたら楽なのに」。みちの悩みに向き合うのではなく、<面倒くさいことは避けたい>という心理が感じ取れます。

 本作はみちと同じく、セックスレスに悩む新名が登場することで、夫の立場、妻の立場から、その辛さや苦しみを感じられる作品です。当事者からするとあまりに生々しく、みちや新名に共感を覚えるシーンも多いでしょう。

 みちと新名を通して、セックスレスが辛いと感じられる本当の理由を探してみてはいかがでしょうか。

『あなたがしてくれなくても』を読む

40代夫婦、気づけばレス歴6年以上…フィクションコミックエッセイ『私の穴がうまらない』

『私の穴がうまらない』(おぐらなおみ/KADOKAWA)は体と心にぽっかりとあいた、満たされない「穴」を持てあます3組のレス夫婦・カップルを描いたフィクションコミックエッセイ。

『私の穴がうまらない』(おぐらなおみ/KADOKAWA)
『私の穴がうまらない』(おぐらなおみ/KADOKAWA)

 主人公でフリー編集者のハルヒは42歳。2歳上の夫・マサルとの間に中学生の娘・アラタがいます。

 ハルヒとマサルのセックスレス歴は、6年以上。毎日仕事や子育てにと忙しく過ごしているうちに、気づけば“しなくなってしまった”夫婦です。

セックスレスを同僚に相談すると…「別れちゃえばいいのに」

 ハルヒは「このまま1回もしないで死んでいくのかな」とモヤモヤとした気持ちを抱えています。一方で、夫が出張で不在の時は寂しさよりも「ラクだ」とも感じています。

 職場の同僚・ヒカリは愛情表現がない夫なら離婚してしまえばいい、とクヨクヨしているハルヒにアドバイスします。しかし悩んではいるものの、別れたいわけではないと思うハルヒ。セックスはないけどケンカもないから、自分がガマンすれば家族はうまくいく、と言いますが――。

夫が妻とセックスしなくなった理由とは

 ハルヒの夫・マサルはセックスレスを自覚しているものの、<妻が何も言ってこないから、うちは大丈夫>とやんわり問題を避けています。

 また、同僚から風俗に誘われたことをきっかけに、マサルは自分がしばらく性欲を抱いていないことに気が付きます。話し合いをすることに苦手意識のあるマサルは、タイミングを見て<できなくなっちゃった>とだけハルヒに報告します。

 それは「(機能的に)できない」のか、「(自分とは)したくない」のか。ハルヒは怖くて聞き返すことができません。

 本作の最終章タイトルは「心にぽっかりあいた穴を満たしてくれたものは」です。<できなくなっちゃった>マサルがこれから先、ハルヒの体の穴を埋めてくれることはないかもしれません。

 では、心の穴はどうでしょう。ハルヒはこのままセックスレスを受け入れて生きて、心を満たすことはできるのでしょうか。

 本作には夫の浮気が原因でセックスレスに陥ったミヤコ(29歳)や、加齢によってセックスに痛みを感じるようになったヒカリ(42歳)のエピソードも登場します。セックスレスと言っても、悩みは人それぞれ。彼女たちが選んだセックスレス問題への決着は、ひとつの答えとして、参考にしてみるといいかもしれません。

『私の穴がうまらない』を読む

拒絶する夫と満たされたい妻…“レス夫婦が再生するまで”を描く漫画『「君とはもうできない」と言われまして』

『「君とはもうできない」と言われまして』(モチ:漫画、三松真由美:監修/KADOKAWA)は、夫の目に「女」として映らなくなった妻の苦しみを描いた漫画作品。夫婦仲相談所所長である三松真由美さんが実際に受けたセックスレスの相談をもとに、1組のレス夫婦が描かれています。

『「君とはもうできない」と言われまして』(モチ:漫画、三松真由美:監修/KADOKAWA)
『「君とはもうできない」と言われまして』(モチ:漫画、三松真由美:監修/KADOKAWA)

 主人公の律子は、娘と夫と3人暮らし。小学2年生になった娘がひとり部屋で寝ることになったのを機に、7年以上もレス状態だった夫に触れ合いを求めます。しかし夫は「悪いけど、律子とはそういう気になれないんだ」と“大拒絶”。愛する夫から求められないと知った時、果たして妻はどうすればいいのでしょうか。

 本作冒頭では、律子が「家庭のために」自分のやりたい仕事をセーブし、そろそろ2人目を、と迫る義母への対応も「ひとりで」頑張る姿が描かれています。ひとりで色々なことを抱え込む律子の姿は、同じくレスに悩む女性の立場から読むと、かなり辛い気持ちにさせられるかもしれません。

満たされないなら外で恋愛してみるのもアリ? PTAが不倫の温床に…

 そんな中、律子は友人の美保から、互いに参加しているPTAが不倫の温床になっていることを教えられます。

 PTAの現状について「自分の旦那さんでは、色々と満たされないから」と割り切った風に語る美保に、律子は思い切ってセックスレスの悩みを告白。かつて自分もセックスレスに悩んでいたという美保は、律子に「満たされないなら、外で恋愛してみるのもアリ」だとアドバイスします。

 律子から見ても「最近、キレイになった」と感じられる美保は、夫以外の好きな人を作ることで、心と体を満たしていたのです。

「飢えてんの?」「怖いんですけど」なぜ夫は妻を拒絶するのか

“夫以外で満たす”という選択肢を知ったものの、律子はやはり夫とセックスがしたいのだという考えに至ります。そこで夫をその気にさせるムードを演出したり、ランジェリーを購入したりなど、積極的に自分から行動を起こします。

 しかし結果はどれも空回り…。そんな律子に追い打ちをかけるように、夫は「飢えてんの?」「怖いんですけど」という言葉を投げかけます。グイグイと迫る律子をたしなめる夫の言葉は、どこか的を射ているようであり、根本の問題から目を逸らさせるようなズルさも感じさせます。

 確かに、なんとかセックスレスを解決しようとする律子の行動は、その気がない夫からすると、かなりのプレッシャーであることも否めません。律子が“諦める”のが一番穏便な道のようにも思えてきます。

 本作は実際にあったケースをもとにした「レス夫婦の再生物語」としてまとめられています。この内容だけ見ると、妻の声に耳を傾けず、ただ拒絶する夫が悪者のように感じますが、セックスレスに陥る原因は意外と根深いもの。律子とその夫がなぜレスに陥り、どのように解決法を見出していくのか、ひとつのロールモデルとして参考にしてみるといいでしょう。

『「君とはもうできない」と言われまして』を読む

レス夫婦に新たな出会いが訪れたら…話題のセックスレス漫画『それでも愛を誓いますか?』

 電子書籍・コミックストアのランキングで上位をキープし続ける漫画『それでも愛を誓いますか?』(萩原ケイク/双葉社)。結婚8年、レス歴5年の夫婦の関係性を圧倒的リアリティで描いていると話題の作品です。

『それでも愛を誓いますか?』(荻原ケイク/双葉社)
『それでも愛を誓いますか?』(荻原ケイク/双葉社)

 主人公の純(35歳)とその夫・武頼(39歳)は、子どもはいないけれど仲のいい夫婦。しかし出産へのリミットを感じている純はセックスのない状況に焦っています。「子どもが欲しい」という純の訴えに、武頼は面倒くさそうな顔をするだけ。

 純はひとり、友人からの「なんで子どもを作らないの?」という何気ない言葉に傷つき、テレビで子ども関連の情報が流れると、まるでアレルギーのように避ける日々を過ごします。

元カノとの再会、片想い…セックスレスを複雑にする<他者>の存在

 セックスレスは純と武頼、ふたりの問題です。しかし本作では他者の存在がセックスレスの問題をより複雑にしていきます。

 結婚前はかなり性欲が強かった武頼。レスになってしまったのは、浮気か、自分に問題があるのでは、と悩む純。専業主婦になって、キレイに手を抜いているから悪いのかもしれないと考えた純は、再就職を決意します。しかし現実は、ふたりがますますすれ違っていく、というものでした。

 武頼は学生時代に付き合っていた元恋人・沙織と再会し、純は職場で真山という青年と仕事での接点が多くなり、彼から好意を寄せられていきます。

 ある時、純は武頼と沙織が一緒にいるのを目撃します。さらに、たまたま居合わせた真山からの「パッと見マジっぽいですよ」というひと言が、純に追い打ちをかけます。

「セックスレスでも離婚できない」非正規雇用・専業主婦の現実

 武頼の裏切りに打ちのめされる中、純にはもうひとつ、向き合わなければならない現実がありました。

 純は35歳の非正規雇用で、今月の手取り額は11万8千円。父は他界し、実家は母を老人ホームに入れるために売却。武頼と離婚したら、純には帰る家がなくなってしまうのです。

 もちろん、純が武頼と結婚したのは、お金のためでも帰る家のためでもありません。セックスレスに悩み、苦しんでいるのも、武頼のことを本気で愛しているからです。また、じつは武頼も彼なりに苦しんでおり、セックスを避ける理由があることが徐々に分かってきます。

 セックスレスはふたりの問題であり、ひとりだけが頑張っても解決には至りません。一方で、どちらかひとりが原因なのではなく、それぞれが問題と向き合う必要がありそうだ、と本作では考えさせられます。

 <それでも愛を誓いますか?>というタイトル通り、お互いが本心で向き合えた時、はじめてセックスレス問題は解決に向かうのでしょう。

『それでも愛を誓いますか?』を読む

「夫と一度もSEXしたことがない」実録エッセイ漫画『スキンシップゼロ夫婦』

「出会って6年。夫と一度もSEXしたことない」という著者が描いたコミックエッセイ『スキンシップゼロ夫婦』(まゆ/ワニブックス)。

『スキンシップゼロ夫婦』(まゆ/ワニブックス)
『スキンシップゼロ夫婦』(まゆ/ワニブックス)

 6歳上の夫・みーさんがシャイすぎるあまり、セックスはおろか、手を繋ぐといったスキンシップもゼロという、少し変わった晩婚夫婦の生活が描かれている作品です。

仲良し夫婦なのに…セックスレスどころかスキンシップゼロ

 著者のまゆさんいわく、夫のみーさんは日本で5本の指に入るレベルのシャイボーイ。

 一緒に買い物をしたり、料理をしたり、DVDを見たりなど、仲良く生活しているものの、スキンシップはゼロ。デートで出かけたネットカフェも、寝室も、新婚旅行のホテルでさえ、恥ずかしがって妻と同じ部屋に入ろうとはしません。

 友人からの応援もあり、なんとか妻である著者(以下、まゆさん)のほうから距離を縮めようと努力しますが、みーさんからセクシャルな気配は一切無し。

 勇気を出して、夫婦一緒に寝ようとしますが、なんとまゆさんはみーさんの部屋から追い出されてしまいます…。

「父親になる自信がない」からセックスはしない?

 義母からの「子どもが欲しい」というプレッシャーにひとりきりで耐えるまゆさん。ついに義母から不妊症疑惑を持たれてしまい、まゆさんは限界を感じます。

 改めて子どものことについてふたりで話し合ってみると、そもそもみーさんは子どもが欲しいと思っていませんでした。

 ショックを受けたまゆさんですが、現実問題、晩婚のふたりにとっては高齢出産のリスクや将来的にかかるお金の話を無視することはできません。まゆさんはみーさんの気持ちになんとか寄り添い、「ふたりで生きていこう」と声をかけます。

 しかし、これですべてが解決したわけではありません。

 まゆさんの悩みは、夫婦なのにスキンシップがゼロということ。夫のみーさんと触れ合いたいのに、それが叶わないことです。

 少しずつですが、みーさんはまゆさんの期待に応えようと、スキンシップをする努力をしていきます。しかし、もしかするとふたりがセックスをする日は永遠にこないんじゃないだろうか…と気が遠くなるほど、みーさんのスキンシップの道は険しいものです。

 まゆさんとみーさんの関係は、かなり特殊なケースのため、セックスレス問題の参考にはならないと感じる人も多いかもしれません。しかし、セックスレスが辛いのは体ではなく、心のつながりを感じられないためであることが多いのも事実です。

 少しずつでもお互いが納得して「これでいい」と絆を深めていくまゆさんと、みーさんの姿は、定義上はセックスレスでも<理想の夫婦>といえるかもしれません。

『スキンシップゼロ夫婦』を読む

<性欲格差>夫婦を描く実録漫画『実は私セックスレスで悩んでました』

 セックスレスだった過去を著者自らが実録漫画化した『実は私セックスレスで悩んでました』(とがめ/KADOKAWA)。本作の特徴は<心は満たされているのに、体は満たされない>ということ。極端に性欲が薄い夫に対して、妻で著者のとがめさんの性欲は馬並み。ふたりは性欲格差夫婦だったのです。

『実は私セックスレスで悩んでました』(とがめ/KADOKAWA)
『実は私セックスレスで悩んでました』(とがめ/KADOKAWA)

 夫からの愛情は十分に感じられるものの、肉体的には満たされず過ごすとがめさん。互いに子どもを作る意思はあるものの、気づけばセックスレス状態に陥っていました。

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