『ぜんぶ女子校のせいだ!』話題沸騰のこじらせ妄想女子マンガ家・ヤマダ インタビュー

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公開日:2014/7/5

みじめになりたくないから、力技で笑わせる

ヤマダカット

 ノリの暴走。それこそが単なる〝女子校あるある〟にとどまらないこのマンガの凄みだ。なかでも見逃せないのがヤマダのふける妄想。授業中、李白と杜甫の関係性に萌えてみたり、数式をボーイズラブ(BL)に置き換えてみたり、その展開はいちいち突飛で目が離せない。

「エピソードによっては半分以上が妄想で占められていますし、これは果たしてコミックエッセイとして出版していいものだろうかとずいぶん悩みましたが、描いていてすごく楽しかったです。調理実習中に恋愛妄想をするエピソードがあるんですが、そこでは一コマごとに絵柄を変えているんですよ。古今様々なマンガのタッチをとりいれているので、何種類あるか探してみてください(笑)。もともと、マンガ家の椎名軽穂さんの『CRAZY FOR YOU』に憧れて、こんな作品が描きたい!と思っていたくらい少女マンガが好きなので」

 妄想パート以外にも、ヤマダさんの絵柄は随所で変わる。そしてその絵柄にあわせてセリフの言葉遣いやテンポも変わるため、絶妙な勢いと笑いが生まれるのだ。

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「以前、笑わせるつもりで自虐ネタを披露したら、本気で心配されたんですよ。それがものすごく悲しくて。自分でも、あとから読み返したときにみじめになりたくないので、適度にバランスをとって笑いを入れるようにしています。かなり力技でねじふせている部分もありますけどね。反対に青春系マンガを描くときは、照れ隠しでギャグを入れることもあります。あと、『ショートショートの花束』(阿刀田高/編)という短編小説シリーズをよく読むので、セリフまわしにはそういう作品も影響しているのかもしれません。歌詞を書くのも好きですし」

 本書でも、自身が軽音部でギター&ボーカルを担当していた頃のエピソードが収録されているが、Twitter上で公開した「ラブtoえんどう豆スナック」(作詞・作曲・ギター・ボーカルすべてヤマダさん)の音源は、フォロワーと読者に大きな反響を呼んだ。そんな熱狂的な読者に支えられ、『ぜんぶ女子校のせいだ!』は発売後1カ月で累計5万部を突破。2011年にWEBサイト「発狂するエラー」を立ち上げてからわずか3年。無名の個人は、驚異的なスピードで人気マンガ家となった。

「描いたものが本になるのはすごくうれしいんですけど、でも案外普通というか、私自身はなにも変わってないんですよね。空いた時間に妄想して、それをマンガで昇華して。だからきっとこれからも、そうやって普通にマンガを描いていくんだと思います。今後は電子書籍サイトの『コミックウォーカー』で、BL妄想授業の番外編など、本書に収まり切らなかったいくつかの未公開エピソードを配信予定なので、こちらも興味のある方は楽しみにしていてください」

 

編集部が選ぶ!
ヤマダ的「女子校あるある」

1 大事なのは女子力より面白さ

1 大事なのは女子力より面白さ
「誰が買うのか」と笑った毛糸のパンツを、自分の株を上げるために購入し、なおかつ堂々お披露目。これぞ女子校イズム。

2 咳ばらいも常に豪快

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一切の恥じらいを失うのが女子校の恐ろしさ。かわいこぶってちゃタンはとれません!

3 いきすぎる妄想

3 いきすぎる妄想
「ヤマダには全部……(本当の俺が)バレちまうな」なんて言われる恋のゴールを夢見た結果、相手にドン引きされる悲劇。

『ぜんぶ女子校のせいだ!』書影

『ぜんぶ女子校のせいだ!』

ヤマダ KADOKAWA 中経出版 1100円(税別)

高校受験に失敗し、地元を離れ女子校に進学したヤマダ。「もしかしたらモテるかも」なんて淡い期待はどこへやら、ヤマダを待っていたのはときめきゼロの女社会だった。料理も運動もできない、成績もよくない、そしてとことんモテない。輝けない。自意識をこじらせながら疾走する赤裸々女子校ライフを描いたコミックエッセイ。

取材・文=立花もも ©2014 Yamada/KADOKAWA 中経出版