東大で1番売れた本は、刊行から29年目の文庫本!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

2014年度、東大・早大で1番読まれた文庫は、なんと29年前に刊行された『思考の整理学』(ちくま文庫)だった。文庫化から四半世紀を経て今なお現役大学生に支持されているのは極めて異例のことだ。

『思考の整理学』は、「アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには?自らの体験に則し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する、恰好の入門書」として1983年に刊行。その後、1986年に文庫化された。

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もともと2007年までの21年間で16万部のロングセラーとなっていたが、2007年に盛岡市さわや書店松本大介さんの「もっと若いときに読んでいれば……」という書店店頭のポップをきっかけにこれまで以上の注目を集め、2009年、累計発行部数が100万部を突破。その後も毎年新たな読者を増やし続け、現在は101刷、累計発行部数191万4,400部に至っている。

「グライダー人間」「朝飯前の理論」「醗酵・寝させる」「カクテル」「エディターシップ」「セレンディピティ」「忘却」「三上・三中」など、時代に左右されることのない独自の洞察を満載。ストイックに「やらなければいけない事」を並べ立てる一方通行な中身ではなく、実生活において誰もが思い当たる事柄を改めて気づかせてくれる内容となっている。

2014年度には東京大学生協、早稲田大学生協の年間文庫ランキング1位、大学生協全体での年間文庫ランキングでも1位を記録した(※東大、早大生協、全国大学生協連合会調べ)。その平易で読みやすい文章は、近年の中学入試でも頻繁に取り上げられている。

なぜ東大生が支持?東大生の感想…外山滋比古講演会「思考の整理学を語る」より
・今の時代に必要なのは、情報を手に入れることよりも「捨てる」ことなのだ。
・他分野との接触、混在が新しい思考法を生み出すという考えがとても新鮮に思えた。
・大学やその先で求められている「学び」に対する姿勢が、少し分かった気がする。
・知識に偏った勉強をしてきたからこそ、それじゃいけないんだ、と思いを新たにした。
・考えがまとまらない時、くよくよするのがいちばんいけない。
・メモをとり、整理する癖がつきました!
・根底にある理念は自ら学べ、という点だと感じた。
・高校生の時は意味が良く分からなかったけれど、大学に入って文章を書くようになり、先生の仰っていたことの重要性が良く分かった。
・今の自分を肯定して考えることの楽しさを教えてくれます。
・時を経ても変わらない価値がある。
・この本を読んでいないなんて、人生の半分を損している。

■『思考の整理学
著者:外山滋比古
価格:本体520円+税
出版:ちくま文庫

外山滋比古外山滋比古(とやま・しげひこ)
1923年生まれ。評論家、エッセイスト。東京文理科大学英文科卒業。『英語青年』編集長を経て、東京教育大学、お茶の水女子大学などで教鞭を執る。専攻の英文学に始まり、テクスト、レトリック、エディターシップ、思考、日本語論の分野で、独創的な仕事を続けている。著書に『思考の整理学』『ことわざの論理』『「読み」の整理学』(筑摩書房)『乱読のセレンディピティ』『老いの整理学』(扶桑社)などたくさんの著書がある。最新刊は1月にちくま新書より刊行された『知的生活習慣』。