ことばを考えることは、いったいなにを考えることなのか?―『WIRED』VOL.19「ことばの未来『自然言語』をめぐる冒険」

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/17


 いま、「ことば」という人類の発展を支えた基盤テクノロジーに、自動翻訳マシンや人工知能といった、新たなテクノロジーが干渉し始めている。ヒトをヒトたらしめていた、ことばを機械とシェアしている現在、ことばを考えることは、いったいなにを考えることなのか?

 2015年11月10日(火)に発売された雑誌『WIRED』VOL.19の特集タイトルは、「ことばの未来『自然言語』をめぐる冒険」。「自然言語」をめぐる冒険は、理論物理学者が語る「コンピューターによる世界の説明」に始まり、「絶滅しつつある言語」や2人のデザイナーが交わした「インフォグラフィック文通」、カズオ・イシグロや円城塔ら4人の作家に訊いた「文学のイノヴェイション」まで。予防医学の俊英・石川善樹は自然言語処理界の天才たちに先端研究を訊き、デザインシンカー・池田純一は映画「チャッピー」とC-3POから「ことば・知性・人間の未来」を読む。さらに、ことばの未来をとらえることで世界の行き先を考えるブックガイドも紹介。

<特集記事「ことばの未来『自然言語』をめぐる冒険」>
ことばと世界 コンピューターはいかにそれを理解するのか
意味や理由を一切考えることなく、膨大なデータを用いた統計モデルによって正解を導き出す。コンピューターによる世界を説明する方法は、人間のそれとはまったく異なるものである。翻訳サーヴィスや科学証明といったあらゆる分野に浸透し始めている「コンピューターの説明」に、ぼくらはいかに向き合っていけばいいのか。オーストラリアの物理学者マイケル・ニールセンが語る。

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読む機械 自然言語処理の新たな地平
人々が日々使う「ことば」をコンピューターに認識させるべく、世界のAI研究者がしのぎを削る。グーグル、フェイスブック、MetaMind。自然言語処理研究の先端を走る3人の若き天才は、ことばと機械の難題をいかに解こうとしているのか。予防医学の俊英・石川善樹が訊いた。

いま「ことばの未来」を考えることは「○○の未来」を考えることである
ことばがあらゆるものに意味と文脈をあたえるテクノロジーならば、ことばの変わりゆく姿をとらえることは、世界のあらゆる行き先を考えることにほかならない。5人の選者とともに探求する、言葉が指し示す未来をめぐる20冊。

たったひとりのことば 絶滅する言語と失われゆく「世界」
英語というデジタル時代の共通語がその勢力を伸ばし続ける陰で、4カ月に1つ、この世界から言語が失われている。言語の消滅が意味するのは、それを話す人々の文化とアイデンティティ、自尊心の消滅だ。50年前に消滅した言語を習得した青年、言語のテクノロジー化を試みる学者、一度絶滅した言語を復活させたコミュニティ。絶滅言語を救う人々を追ったロングストーリー。

池田純一 「ヨハネスブルクのアダムと黄金の天使 『ことば』をめぐる聖書的想像力について」
鬼才ニール・ブロムカンプ監督が生んだ学習するロボットのチャッピーと、「スター・ウォーズ」の人気者で翻訳ロボットのC-3PO。2つの人工知能プログラムは、ことば、テクノロジー、文化の関係を見事に表していた─。デザインシンカー・池田純一が読み解く、ことばをめぐる聖書的想像力と、知性と人間の未来。

データはことば、日々を綴る ステファニーとジョージアの未来の絵手紙
ロンドン在住のステファニー・ポサヴェックと、ニューヨークに暮らすジョージア・ルピ。ひょんなことから2人のデータ・ヴィジュアライゼーション・デザイナーが始めたのは、日々の暮らしをインフォグラフィックで表す風変わりな文通だった。ありふれたデータをカラフルに描いた往復書簡は、データの可能性を広げる作品となった。

文学のイノヴェイション
人は、いつの時代も文学を、物語を求め続けてきた生き物だ。時代の過渡期と呼ばれるいま、果たして文学には何ができるのだろう? 円城塔が考える小説家の仕事、カズオ・イシグロが語る物語の力、宮内悠介が見る機械と小説の未来、関口涼子が知った言語と言語をつなぐ窓。4人の作家が語る、文学の力とことばの未来。

■『WIRED』VOL.19
価格:500円(税込)
発売日:2015年11月10日(火)
出版社:コンデナスト・ジャパン