SMAPもベッキーもいない時代に新聞を飾ったニュースとは…? 三面記事に見る100年前の世相

社会

2016/3/5


『100年前の三面記事』(TBSラジオ 大沢悠里のゆうゆうワイド/KADOKAWA 角川マガジンズ)

 今年に入ってセンセーショナルなニュースが世間を騒がし続けている。国民的アイドルであるSMAPの突然の解散騒動は、前代未聞の生放送での謝罪会見が話題になった。ベッキーとゲスの極み乙女。・川谷絵音の不倫騒動が落ち着く間もなく、今度は球界のスター・清原和博が薬物所持・使用で逮捕。日々、醜聞とその続報に事欠かない。人の不幸は蜜の味という話もあるが、心持ちのよくない話ばかり聞かされるといい加減うんざりしてしまう。

 そんな中、「SMAPの解散より衝撃」と一部で話題になっている話がある。1986年から30年間放送されてきたTBSラジオの番組「大沢悠里のゆうゆうワイド」が、今年4月8日をもって終了するというものである。パーソナリティー・大沢悠里氏の軽妙なトークが日常と化していたのだろう。ラジオファンにとっては衝撃的な出来事だったようだ。この番組にはいくつもの人気コーナーがあり、そのひとつが明治中期~昭和初期の新聞の三面記事を紹介するもの。今回、2011年から2014年まで放送された138話が『100年前の三面記事』(TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」選/KADOKAWA 角川マガジンズ)として一冊にまとめられた。その内容はというと、“センセーショナル”“醜聞”とは程遠いものである。

 例えば、明治30年、富山に住む3人の娘が、いつもきれいな衣装を身にまとった花魁に憧れて遊女になることを志願するものの、親に反対されて家出。周旋屋についていったところ騙されて機織り工場に連れていかれ、警官に保護されたそうだ。また、明治44年の記事では、女学生の間で“恋愛病”なるものが流行っていることを取り上げ、リボンの色や結び方をおそろいにしたり、恋文を送り合ったり、果ては肉体関係に及ぶこともあると紹介し、恐るべしと嘆く。アイドルに憧れて家出をしても、“百合”が流行っても、今なら新聞の三面に載ることはないだろう。

 また、心がほっこりする感動的な話も。明治24年、横浜で貿易商を営む夫婦が、働き手として子どもを雇ったところ、その子は妻・おはるが結婚前に恋人との間に授かり泣く泣く里子に出した息子だった。おはるは喜んで、夫婦でこの子どもを実の子として育てることにしたという。

 ほかにも、遊女に溺れた若い奉公人が金を使い果たして、首を吊る方法を通りすがりの巡査に尋ねた話や、呉服屋で万引きを繰り返していた5人組の主犯が前科数十犯の75歳の老婆だった話など、当人たちはともかく、第三者としてはくすっと笑える話が多い。こうした話題が紙上をにぎわすのだから、この頃の人々の心は比較的穏やかだったのではと想像できる。だが、大日本帝国憲法が発布され、普通選挙が始まり、欧米諸国と肩を並べるべく近代化すると同時に、日清戦争・日露戦争が勃発、韓国を併合し、太平洋戦争へと突入していく時代だ。巷で起こったおもしろおかしい事件が三面で取り上げられる一方、一面では戦争が国民に影を落とす記事も多かったのではないかと考えると、その対比が滑稽なようにも感じる。

 戦争と隣り合わせの日常など遠い過去となったが、今だってバス事故が起きたり、いじめや虐待で子どもが命を落としたり、悲惨な事故・事件の報道が日々絶えない。一面で取り扱うべき事件などなくなって、ひと昔前の三面記事のようにちょっと笑える記事であふれたらいい。そうしたら、新聞は用済みになってしまうかもしれないが…。

文=林らいみ