PRは北風ではなく太陽になれ! 人が動けば文化ができる

ビジネス

2016/3/22


『ブームをつくる 人がみずから動く仕組み』(殿村美樹/集英社)

 PRとは何だろうか? 知らせたいことを一方的に知らせるCMや広報を思い浮かべる人が多いかもしれない。確かに知らせたい物事を不特定多数に知らせるのがこれまでのPRのあり方だった。しかし、それだけでは一過性のブームは起こせてもその先をつくり出すことはできない。そこで、情報を受けた人が自ら次のアクションを起こし、1つの文化をつくり出していくことに着目した『ブームをつくる 人がみずから動く仕組み』(殿村美樹/集英社)という本を紹介したい。

北風ではなく太陽のやり方が大事

 PRは、情報を流す側の思いばかりが強く表れてしまうと、どうしても独りよがりなものになってしまう。無理にこうしろと言われると、それに従いたくないと思うのが人の心なのだが、伝えたい思いばかりが強くなると相手に意思があるということを忘れてしまいがちだ。

 こうした状態を著者は北風と太陽の話になぞらえて説明している。北風のようなPRをするよりも、太陽のように相手が自分から動きたくなるようなPRをする方が効果的だという話だ。これは、企業や地域のPRだけに当てはまる話ではない。普段の生活や仕事にも当てはまる方法なのだ。

 著者があるテレビ局のプロデューサーに面会を求めながらも門前払いに遭っていた頃の話にその答えがある。プロデューサーが受付の女性たちに信頼を置いていることを知った著者は、受付女性と仲良くなることで機会を作ろうとした。とは言え、著者はプロデューサーへの面会の口利きをしてもらったのではない。女同士の気安さで話しやすい相手になっただけだった。それでも最終的にはプロデューサーに会いやすい時間帯を聞き出すのにつながったのだから太陽のやり方は侮れない。

大ヒットもスタートはそれぞれ異なる!

 著者が手掛けたPRには「ひこにゃん」「うどん県」「今年の漢字」など大当たりしたものが目立つ。しかし、この3つだけでも始まり方は全て異なり、途中まで失敗していたものを引き継いだ形のものもある。

 例えば「ひこにゃん」で盛り上がった「国宝・彦根城築城400年祭」は、イベントの目標自体が曖昧だった。「誰のために」も「何のために」も無い状態でバトンを渡された著者が、「女性なら来場する際に、友人や家族、恋人などを連れてきてくれる」「きっと城以外の場所にもお金を落として行ってくれるはずだ」と考え、ターゲットを歴史マニアや城マニアから女性に移したことから始まっている。

 一方「うどん県」の場合は、県がプロモーションビデオを作った時点で予算が無くなり、CMを打てない状態で任された案件だ。県のホームページに載せただけでは見るのは県民だけで何の観光PRにもならない。そこで、著者は出演した男優を副知事に任命することを提案し、その任命記者会見にカリスマブロガー20人を招待して情報の拡散を目論んだ。本来ならマスコミ以外立ち入ることのできない場にブロガーを招待し、自発的に情報を拡散させたところが成功のポイントだ。

「今年の漢字」は日本漢字能力検定協会の受検者数を60万人から200万人に引き上げた。著者は年末の風物詩として多くの人が漢字を意識する機会を作り、しかも世界の人が注目する京都で発表するところに意味を置いた。ストレートに「漢字検定を受けましょう!」とアピールする以上の成果を上げたのはもちろん、漢字や京都への関心も生み、大きなムーブメントが1つの文化を作った例と言ってもよいだろう。

全員を相手にする必要はない!

 この本の中で著者がおもしろいことを言っている。会議などで自分の言い分をPRするとき、過半数の賛成を得られればよいのだから、全員の賛成を得ようとがんばらなくてもよいという話だ。実は、過半数どころかほんの一部の人の心を動かすだけで思った方向に話を進められるという。どんなメンバーがいるかというところを注意深く観察すると、自分の意思で物事を決定せず周りの意見に賛同するだけの人がいることがわかる。人が誰の意見に左右されるのか、人の意見を左右するキーパーソンは誰なのかということを見極められればそれで勝機が見えてくる。キーパーソンの賛同を得られるように話を進めればいいという話だ。もしかしたら、これは仕事の上だけでなく、普段の生活の上でも活かせる話なのかもしれない。そう思ったら、自治会やPTAの誰がキーパーソンなのかが妙に気になり始めてしまった。

文=大石みずき