「聞き流すだけでペラペラ」も「カフェ英会話」もNG!? アラフォーが英語学習をやり直す前に「しないほうがいい」40のこととは?

ビジネス

公開日:2016/4/4


『アラフォーから始めるオトナの英語学習法 「しないほうがいい」40のこと』(新評論)

 英語。それは多くの人にとって「学生時代はマジメにやらなかったけれど 、いつかは話せるようになりたいものの筆頭」ではないだろうか。はい私もです。だから急に思い立ってフィリピンにプチ留学したこともあるが、やっぱり1か月程度では復習にはなっても、「話せる英語力」は身につかなかった。フィリピンは英語が公用語とはいえ、ナゾのイントネーションもよく耳にしていたし……。しかしこのまま英語がロクに話せないまま、生涯を終えることになるのだろうか……?

 気が付きゃアラフォーになってしまったけれど 、英語への夢はいまだに手放せない。そんな往生際の悪い、私のような者の福音になってくれそうなのが『アラフォーから始めるオトナの英語学習法 「しないほうがいい」40のこと』(新評論)だ。

 著者のけんたっきぃさんは12年間、東京都内で英語と中国語の語学教室を経営していた。しかし40歳の時にクローズして、イギリスの大学院に留学。現在は台湾の台北で生活しているが、7か月経っても中国語はほとんど聞き取ることができないそうだ。しかし40を過ぎて言葉に苦労することで、「アラフォーが語学を始めるとしたら、方法は必然的にこうなる」ということがクリアに見えてきたと語っている。学生なら苦しみながらもやればやるだけ身についたが、アラフォーは仕事に家庭にと忙しいし、休日にじっくり勉強ができないことは、実は誰もがわかっている。オトナが英語を勉強しなおすなら、「すべきこと」ではなく、まずは40個の「すべきではないこと」を知っておく必要があるそうだ。

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 ページを開くと初めに、「聞き流すだけでぺらぺらに」はウソ!だとけんたっきぃさんは断言する。なぜなら日本人にとって英語は母語ではなく第二言語で、ある程度の年齢以上になると母語のように自然習得は期待できず、意図的に学習する必要がある。だから

「聞き流すだけで英語が身につく」といったたぐいの教材は、ほぼまやかしである

とバッサリ。最近流行りの「聞くだけで英語がうんぬん」系の教材を、力いっぱい全否定だ。

 さらに「英語なんて、単語を並べればなんとかなる」と、文法を軽視して単語を覚えれば会話ができるという発想に対しても、苦言を呈している。

 たとえば英語圏の国の街角で急に具合が悪くなった際、一体どうしたらいいのか?

極端な話、「ホスピタル! ホスピタル!」と叫べば、親切な人が道順を教えてくれたり、あまりに具合が悪ければもよりの病院まで連れていってくれたりするでしょう。

 しかし、多少なりともこみいった話をしようと思えば、単語の羅列では通用しません。「病院に行きたいが、今お金の持ちあわせがない。だから先に銀行に寄ってお金を下ろしたい。このあたりで一番近い銀行はどこ?」と言いたいときに、「ホスピタル、ビフォー、バンク!」と叫んでも、相手はちんぷんかんぷんでしょう。

 た、確かに! よく「単語とボディランゲージだけでOKでしょ!」と言う人がいるが、観光旅行の買い物程度なら確かになんとかなるし、店員さんもその手の客を多数相手にしているから、「この人は今こんなことを言っている」を読み取ってくれるだろう。しかし読み取る気がない相手を前にしたら、「私の言いたいことをわかってくれる」という甘えは通用しない。単語の羅列だけでは伝わらず、しっかり文章で説明しないとわかってもらえないのだ。

 ならばきちんと話せるようになるには、ネイティブが講師の大手スクールや、カフェ英会話に通う時間とお金が必要なのだろうか? そう思ってしまいそうになるが、けんたっきぃさんはそれも「やらなくていい」ことに入れている。

ネイティブ・スピーカーであるからといって、英語を教える十分なスキルを持っているとはかぎりません。

英会話産業は商売であり、とりわけ大手スクールの最大の関心は、あなたの英語力向上ではなく、あなたからいかにお金を取れるかにあります。

公共の場であるカフェで、満足なレッスンができるとは思えません。(中略)あなたは、至近距離に他人が大勢いる状況で、堂々と発音練習をしたり、恥ずかしがらずにわからないことを聞いたりすることができるでしょうか?

 と、このように「これをやれば英語が話せるようになるはず!」の幻想を、彼はすべて打ち砕いてくれるのだ。

 では一体、どうしたら英語が身につく勉強ができるのか? その具体的な方法は同書のなかでしっかり紹介されているが、個人的に響いたのが、「いつかは」と言わないことと、高い目標を設定しないことの2点だ。

 確かに40歳を過ぎたら、自由に使える時間は減っていく一方。優先順位が上のことに時間を取られてしまい、永遠に「いつか」はやってこない。そしてアラフォー世代の人生のメインは仕事や家事で、英語はサブ的なもの。だから「ほどほどでいい」けれど、「継続」が何よりも大切だから、「1日30秒でもいいから続ける」のが大事なのだそうだ。1日30秒だったらぱっと見てさっとできるから、負担に感じることはない。それを繰り返していくことで、後ろに道ができるのかもしれない。

 年齢によってライフステージは変わってくるから、受験生のように勉強にだけ打ち込むことはアラフォーには難しい。学びには、年齢や環境に合わせたやり方があるのだ。そんな当たり前のことを、この本を通してようやく気付けた気がする。だからきっとこれからの英語学習は、すべて血となり骨となるはず……と思いたい(笑)。

文=玖保樹 鈴