【実体験】花嫁は「元男子」! 性別移行してどう幸せな「花嫁」になったのか?

アニメ・マンガ

2016/4/24


『花嫁は元男子。』(ちぃ/飛鳥新社)

  LGBTs(レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、LGBTに当てはまらないセクシュアリティの人)、聞いたことはあるけれど自分とは遠い世界の話のような気がする…そんな人が多いのではないだろうか。

 本書『花嫁は元男子。』(ちぃ/飛鳥新社)では、そんなLGBTsの最新情報や、男性から女性へと性別移行をした元男子である著者と夫くん の出会いから結婚までが、漫画とエッセイでコミカルかつ赤裸々に綴られている。

 性別移行って? 
 元男子が男性と結婚ってどういうこと?

 そんな疑問に答えつつ、著者の性別移行の道筋や結婚にいたるまで、2人がリアルにぶつかった壁が疑似体験できる。

「性別移行」は幸せへのステップ

 そもそも性別移行とは何か。著者は幼少期から、自分の性別が男性であることに違和感があった。社会人になり「男らしくしなきゃ」そう思えば思うほど追い込まれ限界を感じ、性別移行を決意したという。

 まずは情報を集め、スキンケアやダイエット、ファッションチェンジ、レーザー脱毛にボイストレーニング、髪も伸ばしはじめるなど外見を変えていった。本格的な性別移行にあたり「性同一性障害」を診断してくれるクリニックを探しはじめた頃、親に「性別移行して今後は女性として生活しようと思うの…ッ!」とカミングアウト。やっぱ勘当モノかなぁと悩んだにもかかわらず「ふーんいいんじゃない?」という母の返答には肩透かしをくらったという。

 性別を変える人はみんな手術するんでしょ? そう思う人は多いのではないだろうか。著者も自分が性別移行する前はそう思っていた。だが実際、いろんな人に話を聞くとかなりの個人差があることに感動したのだとか。性別移行する人がみんな手術をしたり、戸籍の性別を変更したりするわけではない。著者の場合は身体的にも法律的にも女性となり、小学校来の友人に言われたという。「ちぃは性別移行して大成功だね! だってそんなに幸せそうなんだもん!」。

タイでの手術は不安がいっぱい

 性別移行にあたり、手術を受けるかどうか悩む人は多い。著者も「今はしたくない。手術なんとなく怖いし」と初めは思っていたが、本格的に性別移行が進むに連れて男性器がジャマだという気持ちが強くなったという。

 費用や情報面での準備は進めていたので、手術をするならタイ、と決めていた。とりあえず現地のアテンドに連絡をとったところ急遽決まった手術日程は、わずかひと月後。有休をフルに使って一緒に行こうと思っていた夫くん だったが、都合がつかず著者はひとりでタイへ飛ぶことになった。(急過ぎない?深く考えてなかったけど手術の成功率は? どうしようどうしよう…)不安に駆られた夫くん はその時「よし、結婚しよう」と著者との結婚を決意したのだとか。

 著者自身も、思い切りよく手術を決めたものの、人生初海外旅行・初手術に向け飛行機の中で不安がぐるぐると渦巻いてきた。思わず、飛行機がまだ到着しませんように、と無謀なことを願ってしまったほどだ。実際の手術は「性別適合手術」「乳房形成手術」「のど仏縮小手術」の3つを短期間で、しかも「性別適合手術」と「乳房形成手術」を同時に行うというハードスケジュールとなった。

 何とか無事に手術を終えた後も、病院ではナースさん、アテンダーさんなど絶えず人が傍にいたが、退院するとホテルの部屋にひとりになる。夫くん に電話をかけると、安心と共に寂しさがこみ上げてきて、ボロボロと泣いてしまったのだとか。電話口の温かい労わりの言葉に、こんなにも自分を待って愛してくれる人はいない。だからこの人とずっと一緒にいたい、愛おしさが募ったという。タイでの手術は2人の絆を強め、その後の結婚を決定付けた出来事だったようだ。

元男子、妻になる

 現在の法律「性同一性障害特例法」で戸籍の性別を変える方法を、本書では簡単に説明している。主な条件は3つある。ひとつは医師に性同一性障害であると認められていること。2つめは現に婚姻をしていないこと、3つめが性別適合手術を受けていることだ。変更条件の壁は高いが、学生時代にこの法律を知った著者は「性別を変えて生きることが許されるんだ!」と喜んだ。

 身体的にも法的にも性別移行が完了し、女性となった著者。結婚にあたり壁のひとつとなったのは、周囲へのカミングアウトだ。著者は近所にも職場にも元男子であることは隠していたので、どれくらいの規模の結婚式にするのか悩みどころだった。結婚前、夫くん の両親に対してはどうしたのか。カミングアウトにはしてもいいのとそうでないのがあって、その時がきたら、きちんと誤解されないように伝えたいという夫くん の意向によりカミングアウトはしなかった。結婚式でも、式でよくある新郎新婦の幼少期の映像コーナーはNG、誓いの言葉では、男性的な地声がでないようにしなくては…などなど、元男子ならではの悩みも尽きない。

 結婚後も、著者が元男子であることを知らない人から「子どもの予定は?」と聞かれることがあるが「こればかりはめぐり合わせなので」と答えるようにしているという。夫くん も両親から「孫はまだ?」と聞かれたら「めぐり合わせだから」とか「夫婦2人のことだから」と自分からちゃんと言うようにしているのだ。

 本書を読み、互いを思いやる2人の姿に、結婚願望がなかったはずの人も、ちょっとだけ結婚に憧れが芽生えるかもしれない。世界中で愛の形が多様性する今、そのことへの理解を深めるよいきっかけになるだろう。

文=トトノ うさき