お辞儀や挨拶、マニュアル的になっていませんか? 元ANAの客室乗務員が教える接客の本質

ビジネス

2016/5/15


『お客様に選ばれる人がやっている一生使える「接客サービスの基本」』(三上ナナエ/大和出版)

 気持ちの良い接客を受けた後は、とてもすがすがしい気分でその日一日を過ごせたりもする。機械化・自動化が進んだ昨今であっても、日々の暮らしで接客サービスを受ける機会は多々あり、接客業の種類もまた多様である。

お客様に選ばれる人がやっている一生使える「接客サービスの基本」』(三上ナナエ/大和出版)は、ANAの元客室乗務員(CA)として経験を積んだ著者が、極上の接客サービスについて説いた本である。そのタイトルから、接客についてのノウハウが詰まったマニュアル本かと思いきや、奥深い核心をついた内容に「ううむ…」と唸ってしまった。「お客様と接する時は笑顔で」とは接客の現場でよく指導されることで、心がけている人も多いだろう。しかし、この本ではもう一歩踏み込んで「目の前にいるお客様を笑顔にするにはどうしたらいいか」ということにフォーカスしている。

 たとえば何か商品をお客様に売り込む時は、ついテクニックやかけ引きに走りがちである。ノルマがあればなおさらであろう。しかし著者は、「自分たちの利益よりもお客様の喜び」を第一に考え、基準をお客様に置くことを大切にしている。確かに「ぜひこの人から買いたい」と思わせる感じの良い接客をする人は、セールストークが抜群に上手い人というわけでもない。電化製品を買う場合、A店とB店では値引き率も違っていて、より安く買える方がもちろん嬉しい。でもそれ以上に、親身になって相談に乗ってくれて、こちらの希望をくみ取ろうと一生懸命な店員さんに心が動かされるものだ。

「人として人と誠実に豊かに関わり合うコミュニケーション」-それが接客サービスの本質です。

 ひとりよがりのセールストークは、時にお客様を置いきぼりにしてしまう。「買わされてしまった…」という敗北感すら与えるかもしれない。自分目線ではなくお客様の気持ちを尊重する姿勢が、お客様に安心感を与えてより良いサービスへの提供へとつながるのであろう。

 接客業において、お辞儀や挨拶は基本である。ここでも著者は、ただマニュアル的に行うのではなく、その意味を考えることや気持ちをのせることの大切さを訴えている。お辞儀をする際の角度やスピードにも、意味がちゃんとあるのだ。挨拶にしても、ただ笑顔で言葉を発すればオーケーというわけではない。「いらっしゃいませ」には「歓迎の気持ち」、「ありがとうございました」には「感謝の気持ち」をきちんとのせてお客様に届ける。思いのこもった挨拶というのは、その場の雰囲気をあたたかなものへと変える効果がありそうだ。

 接客業についている人の中には、「これが自分の天職だ」と思えるほど自信を持って仕事をしている人もいるかもしれない。その一方、「自分に接客は向いていないのでは…」と悩みながら仕事をしている人も多いのではないだろうか。やはり接客には、向き不向きが少なからずあると思う。しかし著者は、接客サービスのスキルは特別な才能が必要ではなく、後天的に身につけられると主張している。

大切なことはたった一つ「目の前のお客様の不安と不満をまずは取り除くこと」、これに尽きる

 接客の基本は意外にもシンプルだ。接客の超プロと言われる人ほど、この基本を大切にしているらしい。接客に自信がない人も、自分の意気込みや努力次第で苦手を克服できる希望を捨ててはいけない。

 近年は、LINEをはじめ顔を合わせずに人とコミュニケーションをとれるSNSが急速に発展している。若者のコミュニケーション能力の低下が懸念されている状況だ。文面だけでのやり取りは、正しいニュアンスが伝わりにくく誤解も生まれやすい。実際に顔を合わせてのやり取りでは、言葉以外に目線やしぐさなどさまざまなところから情報を読み取れる。目の前の相手を尊重する本書の考え方は、接客業のみならず家族や友人関係においても応用可能である。そのスキルを身につければ、人生を彩り豊かに過ごすことができるであろう。

文=ハッピーピアノ