女の縮図がわかる!? 大人気マンガ家・東村アキコ作品5選!

マンガ

更新日:2016/5/16

 未婚のアラサー女子が抱く理想と現実とのギャップ、育児をナメきっていたママのテンパリ具合、美大を目指す女子高生の奮闘記……などなど、多彩な作品を発表しているマンガ家・東村アキコさん。時にはお腹を抱えるほど笑えて、時には胸が苦しくなるほど泣ける。彼女の作品には、いろんな表情がある。だからこそ、「まずはどれを読めばいいの?」と迷ってしまう人も少なくないだろう。そこで今回は、東村さんの作品が持つ魅力について解説しようと思う。東村ワールド未体験の人は、ぜひ参考に!

現代を生きる女子を痛烈に抉る「タラレバ廃止論」

 まず読んでもらいたいのが、『東京タラレバ娘』(講談社)。アラサー女子3人が「あの時こうしていたら……」「こうすればきっと……」と、“タラレバ妄想”を繰り広げ、現実逃避するさまを描いた作品だ。メインキャラは、脚本家の倫子、ネイリストの香、居酒屋店員の小雪、の3人。いずれも独身で、恋に迷走中のこじらせ女子である。後輩に追い抜かれる敗北感や二番手に甘んじてしまう体質、そしてどうしてもやめられない不倫など、テーマとなるのは現代女子が抱く切実な問題ばかり。それらについて3人はあーだこーだと女子会で愚痴り合うのだが、その様子を「ダサい」とぶった斬るのが、イケメンモデルのKEYくん。夢見がちな女子たちを木っ端微塵にする暴言っぷりは、ある種清々しい。そしてなにより、彼が口にする「正論」は、読者の心をも抉り、目を覚まさせてくれるだろう。女性が生きるとはなにか、を真正面から描いた作品である。(5巻まで発売中)

引っ込み思案なヲタク女子が生まれ変わる姿

 『東京タラレバ娘』とは、また違った意味でこじらせている女子を描いた作品もある。それが、『海月姫』(講談社)。能年玲奈主演で実写映画化もされたため、記憶に新しい人もいるのでは? 本作は、海月ヲタの主人公・月海を始めとする、ヲタ女子集団「尼~ず」が暮らすアパート・天水館が舞台となるコメディだ。尼~ずの面々は、市松人形や鉄道、三国志にBLなど、それぞれ特定のジャンルにハマっているヲタ女子たち。そんな濃いキャラクターたちに加え、なぜか女装をしている大学生・蔵之介が登場し、物語は転がっていく。自分に自信がない月海、初めての恋心、そして訪れる天水館取り壊しの危機……。自ら積極的に動き出すことができない尼~ずたちに、蔵之介が一喝するシーンは、思わず考えさせられるものがある。日陰者扱いされていたヲタ女子たちが、どのように立ち上がるのか。笑えるシーンが満載だが、気づけば彼女たちの姿から勇気が貰えているかも!
(16巻まで発売中)

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あの武将が実は女性だったとしたら……

 ラブコメ作家というイメージが強い東村さん。そんな彼女のイメージが一変するような作品もある。『雪花の虎』(小学館)である。本作は、歴史に残る武将・上杉謙信を主人公に据えた大河ロマン。とはいえ、単なる歴史マンガとは異なり、東村さんならではのエッセンスが効いている。それは、上杉謙信を女性として描いているということ。そもそも、上杉謙信が女性だったという説は根強くあり、その歴史的根拠も複数あるのだとか。東村さんは、そんな俗説を元に、女性として生まれ男性として育てられた謙信の姿を力強く描いている。そのため、本作はギャグ控えめ。家族や周辺人物との交流、そして「どうして自分は女として生まれてしまったのか」と思い悩む謙信の姿がとても印象的だ。寅年生まれの「姫武将」が、いかにして武田信玄に認められ、織田信長に恐れられるようになったのか。東村さん独自の解釈を通して、異色の歴史ストーリーが楽しめるだろう。(2巻まで発売中)

育児をナメていたママがテンパる毎日

 東村さんは、自身の日常をあけっぴろげに描く作家としても知られている。たとえば『ママはテンパリスト』(集英社)。本作では、初めての育児にテンパっている姿を公開し、多くの読者の支持を集めている。東村さん自身が「正直、育児ナメてました」と振り返る通り、息子・ごっちゃんを生んでからは、想定外の苦労の連続だったよう。Tシャツの上からも溢れでてしまう母乳の量、いつまで経っても卒乳しない息子とのバトル、キ●タク並にオレ様キャラを感じさせる息子の発言……。そのたびに、ママはテンパってしまうのだ。そして本作には、世に溢れている育児コミックエッセイとは、大きく異なる点がある。それは「ハウツー要素が皆無」というところ。新米ママに向けたメッセージなんてものは微塵も感じさせず、ただひたすら東村さんがテンパった様子が描かれているのだ。しかし、それがおもしろい。説教じみた描写もなく、純粋に読者を笑わせてくれるため、未婚者や子どもを持たない夫婦にもオススメの一作である。(全4巻完結)

マンガ家・東村アキコはいかにして誕生したのか

 上述の通り、非常に数多くの作品を生み出してきた東村さん。彼女はいかにして、現在のような人気作家になったのか。その半生を振り返るカタチで描かれたのが、自伝的マンガ『かくかくしかじか』(集英社)だ。主人公は、宮崎県の女子高生だった東村さん自身。物心ついた頃から「少女マンガ家になる」と決めていた彼女は、自分のことをとにかく天才だと思っていたそう。そんな彼女の人生設計が、東京の美大に現役合格し、在学中に華麗にマンガ家としてデビュー、その後悠々自適な生活を送る、というもの。ところが、その自信をへし折ったのが、美大受験に向けて通いだした絵画教室で出会った日高先生。彼はとにかくスパルタで、東村さんの絵を見ては「下手くそ!」と竹刀を叩きつけるほどだった。そんな日高先生に当初は反発しつつも、東村さんはそこに足かけ8年通い続けた。叩かれ、罵声を浴びせられ、それでもいまがあるのは日高先生のおかげ。本作は、東村さんの後悔や感謝の気持ちが要所要所で綴られ、ラストで待ち受ける日高先生の訃報というエピソードへと向かっていく。ヒット作を連発する背景にあった、恩師との交流。本作を読むと、東村さんという作家の見方がまたひとつ変わるだろう。(全5巻完結)

 この他にも、ぜひ読んでもらいたい作品は山ほどある。誰もが振り返るような絶世の美女ゆえに不幸に見舞われてしまう、という女性の生き様を描いた『主に泣いてます』(講談社)。宮崎を舞台に父親とのエピソードをギャグマンガに昇華させた『ひまわりっ 健一レジェンド』(講談社)。おしゃれ好きな小学生を主人公にしたナンセンスギャグ『きせかえユカちゃん』(集英社)。いずれも、東村ワールド全開なので、足を踏み入れたら抜け出せないかもしれない……!

 大人気作家・東村アキコさん。彼女の作品を読んだことがない人は、ぜひこの機会に一冊手に取ってみてほしい。

文=五十嵐 大

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