ネット依存にならないために! 「三日間だけのスマホ断食」で本当の自分を取り戻そう

暮らし

公開日:2016/8/3

『スマホ断食 ネット社会に異議があります』(藤原智美/潮出版社)

 睡眠時間を削って深夜までネットでゲームをしてしまう。現実の人間関係よりもネットの友人を優先する。ネットに繋がっていないとストレスが溜まる。ネットサーフィンを邪魔されるとイライラしてしまうなど、こうした症状に当てはまる人は、「インターネット依存症」かもしれません。

スマホ断食 ネット社会に異議があります』(藤原智美/潮出版社)では、芥川賞作家でエッセイストでもある著者・藤原智美さんが、そうしたネット依存から生まれる様々な危険性を挙げ、情報社会から逃れるための「情報断食」を提唱しています。

 情報断食といっても、「ネットを完全に断とう」という極端な意見ではなく、「三日間だけのスマホ断食」を推奨しています。

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 作家である藤原さんにとってもネットは切り離せないもの。しかしパソコンで原稿を書いている途中、メールの返信を書いたり、検索サイトで調べものをしたりするうち、いつの間にかニュースサイトや動画サイト、通販サイトを開いて、2、3時間たっていたことが頻繁にありました。

 そこで三日間の情報断食を試してみたところ、検索やネットサーフィンで無為な時間を過ごすことが減り、ネットへのアクセスをコントロールできるようになったそうです。

 知らず知らずのうちにネット漬けになっていた自分を自覚した藤原さんは、ネットが原因となる問題点を次のように考察しています。

考える力を奪う

 まずネットは個人の思索する時間を奪うといいます。ネットに繋げば、質問にはすぐに答えが返ってくる、SNSにはいつも友達がいる、無料でゲームもできる。孤立しがちな子育て中の母親や、難病に苦しむ人々にとっては仲間同士で繋がり、精神的な支えになります。便利なツールですが、常に誰かと繋がっています。

 例えば、ひとりで気ままに道を散歩し、カフェに入ってコーヒーを飲む。ぼんやりと何も考えず、世間の煩わしさを忘れ、癒しのひとときを味わう。こうした誰にも邪魔されない孤独の思索の時間が想像力を育み、思考力を鍛え、人生を豊かにするというのです。

 漢字の学習にしても、パソコンやスマホの漢字変換機能を使うのは簡単ですが、自分の手で書き取りをするという煩わしさがあってこそ、言葉が身につきます。現に昨年の全国学力調査では、メールやネットをする時間が長い生徒ほど正答率が低いという結果が出たそうです。ネットは人間の大切な能力を奪うと訴えています。

情報の真偽が曖昧に

 インターネット世代の若者は、新聞、雑誌、テレビを見なくなり、情報源はネットのみという人も少なくありません。また「情報は共有するもの」という誤った認識を抱き、著作権のある文章、画像、映像を日常的に盗用し、他人の発言を自分のメッセージであるかのように再発信しています。

 そうなると誰が最初に言い出したのか、情報元はどこなのか、責任の所在が曖昧になります。次第に真実と虚偽が混在しはじめ、デマに踊らされるようにもなります。いまもネットの匿名性によって個人の発言は無責任になりつつあります。将来、現実の出版物にもその傾向が広がるのではないかと警鐘を鳴らしています。

 愛知県刈谷市亀城小学校では、小学1、2年生の頃から生徒に国語辞典を引かせるという試みをしました。するとその生徒は中学生になっても辞典を机に置き、宿題が出れば図書室に行って図鑑や参考本を探し、自分で調べるという習慣が身についたそうです。紙の本はネット検索より不便ですが、単なるデジタル情報のコピペでは得られない深い理解を得られるのだと語ります。

情報断食で自分が蘇る

 また、著者以外にも、情報断食を体験した友人のエピソードを紹介しています。

 女性フリーライターの山口さん(仮名)は、女性らしく頻繁にSNSに書き込みをする人で、あるとき仕事で九州の山小屋で1ヶ月暮らすことになりました。スマホも15分歩いた展望台まで行かないと通じないような僻地で、ネットは諦めて大学ノートに日記をつけることにしました。

 するとネットに繋げない反動か、その日あったこと、書きたいことが溢れ出し、期間が終わるまでに余白が見当たらないほどびっしりと小さな文字でページを埋め尽くした大学ノートが3冊も溜まったそうです。もともと文章を書くのが好きだったという面もありますが、いかにインターネットやSNSが彼女の能力を抑制していたのかがわかります。

 インターネットが社会に普及しはじめた頃、多くの人々はネットが自分たちの生活を自由にすると考えていました。しかし、いまの私たちはネット上の情報に振り回されたり、ネット上の付き合いに縛られたり、それまでよりも窮屈を感じてはいないでしょうか。いまの現代人には休みの日ぐらいスマホを置いて、自分と向き合う時間が必要なのかもしれません。

文=愛咲優詩