「ゆうべは おたのしみでしたね。」で思い出すのは? 名言で振り返る『ドラゴンクエスト』30年の記憶

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公開日:2016/9/2


『ドラゴンクエスト30thアニバーサリー ドラゴンクエスト名言集 しんでしまうとは なにごとだ!』(堀井雄二:原著/スクウェア・エニックス)

 家庭用ゲーム機のRPG(ロールプレイングゲーム)では元祖とも呼ばれる名作『ドラゴンクエスト』が、今年でついに30周年。記念イヤーとして『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』というステージが7月から公演され、渋谷ヒカリエでは『ドラゴンクエストミュージアム』が催されるなど盛り上がりを見せている。

 無論、グッズや書籍も数多く製作されているが、今回取り上げるのは『ドラゴンクエスト30thアニバーサリー ドラゴンクエスト名言集 しんでしまうとは なにごとだ!』(堀井雄二:原著/スクウェア・エニックス)という書籍だ。

 本書は第1作『ドラゴンクエスト(以下DQ I)』から最新作『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』までに登場した「名言」を集めたもの。30年の間に製作された「ドラクエ」シリーズ22タイトル(派生作含む)から生まれた数々の名台詞が収められた、まさにアニバーサリーに相応しい書籍といえる。

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 さすが「名作」と謳われるシリーズだけあって、心に残る名言揃い。本書では全シリーズから55の名言をピックアップしているが、その中から特に印象深いものを紹介してみよう。

「おお (プレイヤー名)! しんでしまうとは なにごとだ!」(DQ I)

 本のタイトル名にもなった、まさに誰もが知っているであろう名言。『DQ I』ではキャラクターが戦闘で死亡すると、所持金が半分となりスタート地点の王城に戻されてしまう。その時、王様からいい放たれる言葉がこれだ。ファミリーコンピュータ(以下FC)時代のゲームは、総じて難易度が高い傾向にあった。『DQ I』も例外ではなく、多くのプレイヤーがこの言葉を浴びせられ、涙したことだろう。名言の最初を飾るに相応しいフレーズだ。

「おはよう ございます。ゆうべは おたのしみでしたね。」(DQ I )

 プレイヤーの中心はおそらく10代だったろうFC世代において、限りなく妄想を刺激したと思われる名言。『DQ I』でローラ姫を救出するクエストをクリアすると、キャラクターの絵が主人公単体から姫を抱きかかえた姿に差し替わる。その状態で宿屋に泊まるとこの名言が聞けるのだ。宿屋の主人の意味深なヒトコトに「一体、何を楽しんでたんだ!」と、悶々としたプレイヤーも多かろう。状況とテキストだけでこれだけのエロスを生み出すことができるという、非常に優れた見本といえる。

「いまは ホイミスライムだけど にんげんになるのが ゆめなんだ。」(ドラゴンクエストIV)

 ちなみにこの前にある台詞は「ぼく ホイミン。」である。そう、スクウェア・エニックスのスマホアプリ『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』のCMで、あの「可愛すぎるアイドル」橋本環奈チャンが扮しているキャラだ。シリーズで初めてモンスターが仲間になるという衝撃もさることながら、言葉通り人間になってしまったことで、強く印象に残っている人も少なくあるまい。

 本書では他にも、ゲームデザインやシナリオを担当した堀井雄二氏によるコメントが随所に挿入され、当時の苦労話などを知ることができる。また堀井氏の著書『アウトコミックス ゆう坊のでたとこまかせ』に掲載された「堀井雄二のゲームデザイナー入門」が再録されているなど、ゲームデザイナー志望者にも嬉しい内容だ。

 数々の名言をつらつら眺めていると、プレイ当時のさまざまな記憶が蘇る。『ドラゴンクエストV』で幼馴染のビアンカとお嬢様のフローラ、どちらをヨメにするかで悩んだのもいい思い出だ。きっと100人のプレイヤーがいれば100通りの思い入れがあるはずで、本書はそれを再確認させてくれるだろう。久しぶりにプレイしたくなったという人もいると思うが、今はスマホアプリで遊べるタイトルもあるので、たまには温故知新というのもアリかもしれない。

文=木谷誠