今から「面接」? なら、スマホじゃなくてこの本読んだ方がいいよ。「面接は商取引だ!」その心とは!?

ビジネス

2016/11/9

「見ず知らずの3人の女性から急に『あなたの指輪と、私の指輪を交換して』と頼まれました。さて、あなたはどの人の話に対して『取り替える気持ち』が起きますか?」

(1)「私はその指輪がとても欲しいんです。これ以上ないくらいに気に入っています。ぜひ、手に入れたい」と、その指輪が「好きである」ということを熱意で訴えてくるAさん。
(2)「私はそういう指輪をずっと探していました。というのは、同じような指輪を持っていたのですが、失くしてしまい、それ以来……」と、「自分がなぜその指輪が欲しいか」その理由を懇切ていねいに話してくるBさん。
(3)「あなたなら、私の持っている指輪の価値もおわかりいただけるでしょう。値段は250万円は下らないはずです」と自分の指輪の価値を、鑑定書やオークションの取引実績などで示してくるCさん。

※指輪は150万円する高価なもの。
※Aさん、Bさん、Cさん、共に信用のおける女性(見た目、服装などに相違がない)……とのこと。

「就活対策本」を買ったはずなのに、最初に書かれているのは、就活とも面接とも全く関係のない質問から始まる本書『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと – 会場に行く電車の中でも「挽回」できる!』(海老原嗣生/プレジデント社)。

 正直最初は「こういうのめんどくさいから、早く面接に役立つ要点だけ教えて」と渋々、いまいち当たらない心理テストでもやっている気分で選択肢を選んだが、読み進めていくうちに、「この本、すごくない?」と思い始めた。

 何が「すごい」かというと、面接官の気持ちに「心の底から」なれること。学生はもちろん、社会人経験者でも、人事の仕事をしていたり、就職面接に深く関わっていたりしなければ到底理解できない「面接官の立場」に、限りなく近づけること。「この本、就活生の時に出会っていたら、人生変わっていたんじゃ?」と思わせてくれるほどの破壊力を持った一冊だった。

「面接は商取引と心得よ」と文章だけで言われても、「ふーん」と思うくらいだろう。意識はしても、実際に行動で表すことは難しいはず。しかし、冒頭でご紹介した質問を読み、選択肢を選ぶと、しっかりと「理解」ができ、行動で表すためにはどうすればいいかを考えられるようになるのだ。

 前置きが長くなったが、指輪を求める女性Aさん、Bさん、Cさんの違いは、話している内容が「自分の都合か、相手の利益か」ということ。AさんとBさんは「熱意」や「理由」を語っているが、それはあくまで「自分の都合」。Cさんだけが、「相手の利益」をベースに話をしているのだ。

 そしてこの「情熱」Aさんタイプと「理由説明」Bさんタイプが、面接でよく見かける「落ちる」タイプだという。

「あなたの指輪」を「企業が募集している仕事」とし、「三人の女性の持っている指輪」を「応募しているあなた」に置き換えてみると、どうだろうか。

 例えば指輪が500円程度の安価なものなら「熱意」や「情」だけで、交換してあげようと思うかもしれないが、150万円という高価な場合、「自分都合」の「情」だけで、あなたは指輪を交換しようと思うだろうか。

 企業の面接でも、同じことが言えるのだ。面接は「個人の能力やキャラクター」が「仕事」に釣り合うかどうか、そして「採用した側にメリットがあるかどうか」を見ている「商取引の場」。そんな場所で、いくら「熱意」を訴え、「どうして入社したいのか」を述べられても、「で、うちにメリットはあるの?」と思われてしまう。こんなことは、「自分が面接官の立場」になり、ちょっと考えればわかりそうなことだが、実際の面接の場では、圧倒的にAさん、Bさんタイプが多いそうだ。(かくいう私も、Bさんを選んだ。そして面接の時、確かにBさんのような「入社したい理由」ばかり述べていたような気がする……)。

 本書は、このような一見関係のない質問を重ね、「重大な気づき」をいくつも与えてくれており、また、面接までの各々の「猶予時間」が異なることを考え、10分前、1日前、1週間前でそれぞれ違ったアプローチの仕方を教えてくれている。

 社会人経験のない学生が読んでも有益だと思うが、「後ろ向きな退職理由を言う場合」「心機一転を転職理由にする場合」など、転職者に向けたアドバイスも掲載されている。さらに「会社選びを間違っていないか」など、面接に至る以前の問題に言及している点も心強い。

 2010年に発売されている本書。読み続けられて約6年……。新刊ばかりに目が行きがちだが、「読まれ続けている」ことには意味がある。そう実感させられた面接本の良書だった。

文=雨野裾