NegiccoとPerfumeが築いた現代アイドル史が音楽から浮き彫りに! 30組・200曲を網羅した一冊

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2016/11/15

『アイドルばかり聴け!』(堀埜浩二/ブリコルールパブリッシング)

 新潟から全国区へ羽ばたいたアイドル、Negiccoの曲に「アイドルばかり聴かないで」がある。アイドルに夢中な彼氏へ嫉妬する、少女の気持ちを赤裸々に描いた1曲。無論、Negiccoはゴリゴリのアイドルなのだが、そんな彼女たちがアイドルばかり聴いてると「だんだんバカになる」「身体に悪いことだらけ」なんて、どこかドルヲタに“グサッと来る”フレーズを歌うのは、むずがゆくも心地よいという複雑な心境が押し寄せる。

 一方で先月、曲名にオマージュを受けた『アイドルばかり聴け!』(堀埜浩二/ブリコルールパブリッシング)という書籍が刊行された。スタダDD(意訳すると「スターダストプロモーション所属のアイドルが“誰でも大好き”」)を自称する音楽ライターとしても活躍する著者が、女性アイドル30組、200曲を解説した渾身の一冊である。

 しかし、単なるレビュー本と侮るなかれ。本書の真なる価値は、近代アイドル史が浮き彫りにされている点。2003年結成のNegiccoから、2010年頃からの“アイドル戦国時代”を象徴するももいろクローバーZを中心としたスタダ勢の台頭、さらに、それ以降のアイドル界を取り巻く様相をアイドルソングから俯瞰している。

 音楽という視点から、じつはジャンル分けというのは難しい。筆者の思うところであれば、多くはCD販売店や配信サイトで目星を付けるためである以上の意味はなく、結局は「いいものはいいし。刺さるものは刺さるよね」なんて気楽に、自分にとってお気に入りの1曲を選んでいる。

 これに関して、アイドルというジャンルは「80年代まではなんとか言葉としての有効性を保っていたが、現在は賞味期限が切れている」と実感を述べるのが著者である。そこで引き合いに出されるのが、アイドルとガールポップという2つの区分けだ。

 かつては「アイドルは概ね他人が作った曲を歌い、ガールポップは概ね自作の曲を歌う」というイメージがあったとする著者。しかし、2000年代にさしかかると境界線は曖昧になり、アイドルからガールポップへの変化が生じたのちに、「ガールポップもテクノもアニメもバンドも含めたあらゆる要素を貪欲に呑み込んだ『女性アイドルの楽曲の進化』があった」と現在までの様相を振り返る。

 では、誰がその先駆者となったのか。いわば「女性アイドルとガールポップの、音楽的な越境者」として著者が賛辞を送るのが冒頭のNegiccoである。じつは、Negiccoが結成された2003年は、Perfumeが広島から上京した年でもある。共に時を同じくして下積みを味わった両グループの絆は、ファンの間でも語り継がれていることだ。

 そして、Negiccoは「80年代&渋谷系」、かたやPerfumeは「テクノ&エレクトロ」と、たがいの音楽的な方向性は違っていたものの「この2組のグループの活躍なくして、現在のアイドルミュージックの豊穣はなかった」と著者は力説する。

 音楽性にしろコンセプトにしろ、現代のアイドル界はとりわけ混迷をきわめている。どのグループやメンバーに惹かれるかは、自分の心に「いかにして刺さったか」がきっかけになりうるが、客観的に全体像を見渡した論考というのは稀有だ。その現状において、本書はたいへん有意義な一冊である。

文=カネコシュウヘイ