社会

メディアのタブーに密着取材!「ヤクザ」の世界に“居場所”を求めた理由とは?

 映画『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』が全国公開され、話題を呼んでいる。近年、こういったアウトローを題材にした作品が増えたようだ。そんな闇社会の代名詞といえばヤクザだが、最近では、この「ヤクザ」というワードもタブー視される風潮にあり、ニュースや警視庁の発表では、しばし「暴力団」という言葉が使われる。

 1992年に暴力団対策法(暴対法)、2011年に東京都と沖縄県を皮切りに暴力団排除条例(暴排条例)が施行されて以降、ヤクザ関係者への取り締まりが厳しくなった。彼らに対して、徹底的に社会悪としてのイメージ付けがなされるようになったのだ。

 10月29日に発売された東海テレビ取材班著『ヤクザと憲法―「暴排条例」は何を守るのか』(岩波書店)では、そんなヤクザが今の日本社会でどのように暮らしているのかにフォーカスしている。元々ドキュメンタリー映画だった本作は、ヤクザという放送業界のタブーを真正面から撮影し、メディアの中立性を一貫して守り続ける姿勢が高く評価された。

 この記事では、作中に登場する、会長、見習い2名のエピソードを紹介する。

会長が語る、ヤクザの人権

 川口和秀氏は、大阪府に拠点を置くヤクザ「2代目東組」の 二次団体「2代目清勇会」の会長だ。記者が「私たちはヤクザの存在を肯定しませんよ」と切り込むや、「それはそうや。私もないほうがいいと思います。それでええです」と同会長に肩すかしされるところから、取材は始まる。

 自分たちが暴力団と呼ばれることに対して、「僕らが暴力団って名乗っているわけじゃないですよ。警察がそう言っているだけ。暴力団や反社会的勢力やて……」「誰が自分のこと暴力団って言いますか」と不満もあるようだ。

 しかし、川口会長自身も語るように、彼らが違法行為に手を染めているのは事実だ。

「(警察は)うちの組はクスリばっかりと思うてんのかしらんけども、それで大体目付けられる。してるで。してるもんしてるで。どこでもしてんのや」

 一方で、会長が最も頭を悩ませているのが、「親がヤクザ」という理由で子どもの幼稚園や保育園の通園を拒否される実情だという。

「本人と嫁の第一、第二の差別までは覚悟の上。でも子どもは関係ない」

 本書が主張している「暴力団だから懲らしめられるのは当然だし、家族のためを思うなら暴力団をやめればいい」という原則論にもうなずける一方で、ヤクザの子どもの人権までもが疎かにされている現実があるのだ。

ナオト君が語る、ヤクザの居場所

 組員から“ナオト君”と呼ばれる彼は、一日中事務所前の防犯カメラを監視する仕事をしている。歳は二十そこそこの部屋住み(見習い)だ。

 取材班が、防犯カメラはずっと見ていないといけないのか? と質問する。

「はい。いや、あの、カシラ(若頭)も来られるようになったんで、あのその……こういう1番下っ端の立場やから、すぐ降りていって挨拶し、しなダメなんで。こういうふうにカメラを見て、見たりしているわけです、はい。ええ」

 若干、変わった子という印象を受けるナオト君だが、ノンフィクション作家・宮崎学の大ファンだという。その理由は「いやまぁ、それなりにこの人が社会の心理みたいなもんを、まぁ知っとる人なんじゃないかと思いまして」ということらしい。

 彼がヤクザになった経緯だが、19歳の時に「ヤクザにしてください」と事務所をノックしたのが始まり。組員の話によれば、学校ではいじめられていたようで、中学2年の頃から引きこもり状態だったとか。

 自分の部屋で引きこもっていた頃を、人間に対して「怨念というか、それを通り越した憎しみというのがありましたね、はい」と回想する。

 社会に馴染むことが出来ず、異端としての扱いを受け、人を憎んできたナオト君。彼が“居場所”としてヤクザの世界を選んだのは必然なのかも知れない。

 また、本書には山口組元顧問弁護士として知られる山之内幸夫氏も登場するが、なんと彼は“現役”の同組顧問弁護士であることが取材で発覚。山之内氏は、「ヤクザに同情したり共感したりするのが僕の中にある」から弁護するのだと語るが、一方で冷静に今の滅びゆくヤクザを見ている印象にもとれる。絶滅危惧種である彼らが淘汰されていくのは、ある意味自然の摂理として仕方のないことなのだろう。

文=岡田光雄(清談社)

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