2016年人気アプリ「ポケモンGO」―世界規模でヒットした要因に迫る!

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公開日:2016/12/30

『ポケモンGOは終わらない』(西田宗千佳/朝日新聞出版)

 1年が終わり、新たな年を迎える。そこで2016年に生まれた様々な流行を振り返ってみたい。映画では新海誠監督の『君の名は。』があった。邦画興行収入で歴代2位となる大ヒットを記録。ゴジラの新しい形である『シン・ゴジラ』も記憶に新しい。スポーツでは25年ぶりにリーグ優勝を果たした広島東洋カープの勢いを表す言葉「神ってる」が新語・流行語大賞を受賞。他にも乳酸菌を摂ることができるチョコレート「乳酸菌ショコラ」、顔認識カメラでおもしろ動画が撮影できる「SNOW」というスマホアプリがヒット商品に。

 中でも世界規模で人気を博したのが「ポケモンGO」だろう。スマホアプリのマーケティング調査を手掛けるApp Annie(アップエニー)の調べによれば、全世界のダウンロード数は配信開始1か月半で約1.4億回。そんな「ポケモンGO」について書かれているのが『ポケモンGOは終わらない』(西田宗千佳/朝日新聞出版)だ。記されている内容として、アプリ誕生の背景やヒットの要因、そして「ポケモンGO」を足掛かりに、今後の技術革新について述べられている。以下に本書内容の一部を紹介しよう。

■「ポケモンGO」ヒットの要因

 世界的な大ヒットとなった理由はいくつも考えられるが、“ポケモン”というゲームの特性とポケモンGOを作り出した「ナイアンティック」が大きな理由だという。

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 ポケモンはアニメ・ゲームともに世界で人気のあるコンテンツだ。そして、ゲームの目的がポケモンを集めること。ゲーム画面の中だけで存在していたポケモンを、現実の世界で捕まえることができるというポケモンGOは多くの人に受け入れられた。

 そして、もう一つの理由となるGoogleの社内ベンチャーとして誕生した制作会社「ナイアンティック」。「イングレス」という位置情報ゲームを開発、このイングレスは世界中で熱狂的なプレイヤーがいるという知る人ぞ知るゲームなのだそう。その「イングレス」のデータをポケモンGO開発に応用することで、世界でほぼ同時に配信が可能となった。つまり、ポケモンが「集める」ことを目的としたゲームであること、位置情報ゲームの制作のノウハウがあった「ナイアンティック」が開発したということが大きな理由となっているという。

■地方活性化の可能性を握るポケモン・ツーリズム

 ポケモン捕獲のためには、歩き回ることが必要だ。そこで、何かを食べたり買ったり泊まったりと消費が生まれる。他にはなかなか登場しない珍しいポケモンが出るという地域では、観光客を呼び寄せる起爆剤の効果が期待されている。

 しかし、あくまでこの効果は一過性にすぎない。観光客を迎える側がゲームに対しての理解を持つこと。そして、訪れた人がゲームを通してその土地の魅力を知ってもらう働きかけをすることが欠かせないという。本書では「ポケモンGO」を上手く活用した横須賀市の事例が紹介されている。

 他にも運営会社ナイアンティックが基本プレイが無料であるポケモンGOから収益を得る方法、ポケモンGOで使われているAR技術などについての記載もある。これから「ポケモンGO」のブームが下火になったとしても、新しい技術開発が進み、我々を楽しませてくれる第二、第三の「ポケモンGO」が誕生するはずだ。本書を読んだ後にそんなことを感じさせられた。

文=冴島友貴