「だいたいお互い結婚生活がダメですからね(笑)」同じ家に60年の佐藤愛子さん×友人とシェア暮らしの桐島洋子さん対談【後編】

ライフスタイル

2017/1/14

(左)佐藤愛子さん(右)桐島洋子さん

九十歳。何がめでたい』(小学館)が絶好調の佐藤愛子さん(93歳)と、『あなたの思うように生きればいいのよ』(KADOKAWA)を上梓したばかりの桐島洋子さん(79歳)の辛口爆笑対談【後半】です。 「死後の世界を信じるか否か」という話題で大いに盛り上がり、親子だからこそ“付かず離れず”の関係がちょうどいいという意見で一致するおふたり。

いくつになっても気丈で明晰、背筋がピンと伸びてかっこいい年齢の重ね方にはあこがれるばかり。その秘訣は、飽くことなき好奇心でした。

死後の世界は怖くない!?

佐藤 桐島さんは、ご両親に「あなたの思うように生きればいいのよ」と言われてずっと生きてきて、もう十分に生ききったという満足があるでしょ。

桐島 満足かどうかはわからないけど、まあ十分ですね。したいことはしてきたから、いつ死んだっていいやって感じ(笑)。佐藤さんは、死ぬことが怖くないですか?

佐藤 若い頃は怖かったけれど、今は怖くはないわね。

桐島 苦しい死に方をするのは嫌ですけどね。

佐藤 そりゃあ、命がなくなるんだから、苦しいに決まってますよ。楽な死に方なんて、ないと思う。でも、今は死後の世界があると確信していますから、もう怖くない。向こうはどんなんだろうと楽しみです。

桐島 私は、まだ確信できていない。魂はあると思うけど、魂が変なところをウロウロするのは嫌じゃないですか? ちゃんと行き場があるならいいけれど。

佐藤 十分に生きて、この世に対する後悔も未練もなく死ねば、真っすぐ行けますよ。

桐島 一体どこへ行くんでしょうか?

佐藤 霊界よ。霊界に行けないのが、ウロウロしてるわけ。それが一番困るのよね。50歳で北海道に家を建てたとき、霊界に行けないアイヌたちの怨念で、ものすごい超常現象に遭いましたから。

桐島 確か、ずいぶんひどい目に遭われたんですよね。

佐藤 大変でしたよ。でも、あれは、原住民だった彼らを侵略し、虐殺した日本人が悪いの。だって、何も悪いことをしていないのに、殺されたんですもの。その怨念が土地にずっと残っていたのね。だから、魂は残るということは疑うべくもない。

桐島 私も、以前は魂なんて信じなかったけれど、佐藤さんのお話を聞いて興味を持ち始めたんですよ。

佐藤 私だって、そんなことは全然信じない人間でした。でも、いろいろ勉強してみると、死んでからの行き先は、この世で生きたときの生き様によって決まるみたいよ。

桐島 子どもの頃はカトリックの学校に通っていたから、悪いことをしたら地獄に行くと脅かされて育ったので、それが、いまだに結構身にしみています。

佐藤 いわゆる善悪の基準で、その人を裁断するんじゃないの。意識の問題なんですよ。

桐島 人殺しをしたら地獄行きというのではないんですか?

佐藤 その人に残っている恨みや嫉妬心とか、自分が死んだ後への心配とか、そういう意識ですよ。それをきれいにして死んだら楽だっていうの。

桐島 そのほうが、かえって難しい……。霊界に行けたら、どうなるんでしょうね。しかも、今度は永遠でしょう?

佐藤 永遠です。だけど、この世に来るということは修行に来ているわけだから、もう1回修行し直したいと思う人は、輪廻転生で生まれ変わる。もう、これで結構っていう人は、向こうに永遠にいるんでしょうね。

桐島 佐藤さんは、また生まれ変わりたいですか?

佐藤 どっちでもいい。私ね、来る現実に任せるほうで、わりに抵抗しないわね(笑)。

桐島 私は好奇心があるから、もう少しいろいろな人生を試してみたい。でも、好きな人生を選べるならいいけど、あんまりひどい人生は嫌だな。

佐藤 それは選べないでしょ。でも、人間には生まれ変われるわよ。人間でなくなるっていうのは、そりゃあもう鬼畜のような、よくよくの所業をした人でしょ。

桐島 (爆笑)

佐藤 そういう話は、聞いたことないけどね(笑)。

礼儀もヘチマもない親子関係

佐藤 こちらは、桐島さんらしい、いいお住まいね。

桐島 昔から、借家を探すのはうまいんです(笑)。

佐藤 引っ越しが好きなのね。どうして?

桐島 飽きるんですよ。それにいろいろ状況も変わるでしょ。一緒に暮らす相手が変わったり、お金もあったりなかったり(笑)。

佐藤 私みたいな無精者は、同じ家に60年ずっと住んでいますよ。

桐島 いいお宅ですよね。ああいうお住まいだと、落ち着いて書けるだろうなと思います。

佐藤 娘が結婚したとき二世帯住宅にして、上は娘一家、下は私ひとりです。玄関は別々だけれど、中は階段で行き来できる。

桐島 一番理想的ですね。

佐藤 私は、依存するということができない人間でね。娘にも、死ぬときは面倒見てもらうけど、それまではいいって言っています。だから、何も助けてくれないし、そのほうが私も気楽です。食事もお風呂もまったく別だけど、買い物だけは娘がまとめてしてくれるわね。料理は自分で作りますけど。

桐島 最近何かの雑誌で、「将来何かあったときには、子どもに面倒を見てもらう」と私が発言したら、それが話題になっちゃって。私がそんなことを言うのは、すごく意外だと思われたのね。でも、さんざん子どもの面倒を見てきたんだから、こっちが困っていたら助けてくれるのは当たり前でしょ。

佐藤 今から決める必要もないんじゃない? 元気なうちは、自分でできることは自分でやればいい。桐島さんは、きっとお世話にならなくても済む人だから。やっぱり私たちのような職業は、生活のリズムが普通じゃないですからね。

桐島 今は、小学生の子どもがいる、娘と同い年くらいの友人一家と一緒に、この家をシェアして住んでいるの。

佐藤 桐島さんは、包容力や柔軟性があるから。それは私にはまったくない。私はやっぱり気難しいですよ。わがままなくせに、いろんなことが気になるのよ。だから、他人がいるとダメね。自分勝手に生きたい(笑)

桐島 私は高校時代から、仲良しの友人たちと、年をとったらみんなで一緒に暮らそうなんて言ってたの。だから、今の暮らしも快適だけれど、カナダにいる次女のノエルが帰ってきたら、同居ではなく近居ができるといいなあと思っています。

佐藤 実の娘でも毎日一緒にいたら、お互いに疲れるから別がいいですよ。でも、私はいただき物が多いでしょう。ひとりで食べきれないときは、階段の途中に置いておくんですよ。面倒臭いから、いちいち声かけないで、黙って置いておく。向こうも階段の上から見て、何か置いてあると降りてきて持って行くわけ。まったく礼儀もヘチマもないうちね(笑)。

桐島 ちょうどいいスタンスですね。その程度の距離で近くにいてくれたら、ひとりで倒れていて誰にも気づかれないなんてことにはならない。

佐藤 あんまり揉めることもないわね。

桐島 そりゃあ、毎日毎日一緒にご飯なんて食べてたら、うちだってたちまちけんかだわ(笑)。

死ぬまで書ければ幸せ

桐島 物書きになってよかったとお思いになりますか?

佐藤 もう、これしかできない。天職ですよ。

桐島 私も、たぶんそうですね。

佐藤 だいたいお互い結婚生活がダメですからね(笑)。

桐島 よかったですね、お互い。何とかやってこられて(笑)。

佐藤 ほかにできることは何もないし、趣味もない。『晩鐘』という長い小説を書き上げた後、もうこれで総ざらいしたから、書くことも終わりだなと思って何もしないでいたら、うつ病みたいになっていったんですよ。

桐島 『晩鐘』を読んだとき、まだこんなに密度の濃いしっかりした文章をお書きになれるんだ、すごいと思いました。

佐藤 まあ、うれしい! でもね、書くことをやめたら、朝起きないで寝ていたって構わないという日が続くでしょ。そうするとだんだん気分が鬱屈してしまうの。そんなとき、新たに連載を頼まれて、すっかり甦った(笑)。やっぱり書くこと以外には、生き甲斐がないんですね。

桐島 今まで何に一番欲求を感じられましたか?

佐藤 美味しいものを食べたいとか、思ったことがない。作家になる前は、「どこへ行きたい」とか「この芝居を見たい」とか、わりにありましたけどね。やっぱりもう、書くことで手一杯っていう感じ。

桐島 小説を書くことが、最大の喜びなんですね。

佐藤 そういうことね。いいものを書きたいという気持ちが一番強い。書くことに満足があって、売れなくたって別に構わない。ところが、『九十歳。何がめでたい』が売れて騒ぎになって、しばらく書くどころじゃなくなった。居心地が悪くてしょうがないの。「売れておめでとう」と言われるけど、それこそ「何がめでたい」って(笑)。

桐島 私も、『あなたの思うように生きればいいのよ』という、母の口癖をタイトルにした本を出しました。今年から80代に突入するので、佐藤さんを見習ってもっともっと書かなければと思っています。

佐藤 こうやって死ぬまで書ければ、本当に幸せな人生ですね。

桐島 ところで、最後のラブロマンスはいつでしたっけ?

佐藤 50歳ですよ。

桐島 まだ若かったんだ! 私は、もう1回くらい恋をしたいわね。

佐藤 あなたなら、できるでしょう(笑)。

聞き手:川島敦子 撮影:原田崇