お節介でチートな母親同伴でMMORPGの世界を大冒険!“母親あるある”満載、親子の絆を描く新感覚冒険コメディ

マンガ

更新日:2017/1/19


『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?(富士見ファンタジア文庫)』(井中だちま:著、 飯田ぽち。 :イラスト/KADOKAWA)

 いくつになっても親は子供が可愛いもの。しかし思春期をむかえた子供にとって、親の存在はどうにも気恥ずかしいものだ。そんな微妙な年頃の息子と母親の親子関係を描いたコメディが1月20日に発売された、第29回ファンタジア大賞受賞作『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?(富士見ファンタジア文庫)』(井中だちま:著、 飯田ぽち。 :イラスト/KADOKAWA)である。

 主人公の男子高校生・大好真人は、政府が極秘に開発した仮想現実型MMORPGのテストプレイヤーに選ばれてゲーム世界へ転送される。しかし、そこになぜか真人を溺愛する母親の真々子までもがついてきてしまう。若作りで10代の美少女にしか見えない真々子は、戦闘ではチート武器の二刀流による全体攻撃の二回攻撃でモンスター相手に無双し、仲間探しでは真人の選んだメンバーをダメ出しして追い返してしまい、「勇者」である真人のお株をすべて奪ってしまう。事ある毎に出しゃばってお節介をしたがる世間の「母親あるある」なネタ満載のコメディが、この作品の持ち味だ。

 騒動はあったが小動物系美少女ポータと、ツンデレ美少女のワイズとパーティを組み、ようやく冒険の旅に出発するが、誰しも自分の母親は友人知人に見せたくないものだ。とくに可愛い女の子の前では格好つけたいのが男心だ。それなのに人前でも構わずベタベタしてくる真々子のせいでマザコンと呼ばれたり、生暖かい目で見られたりと恥ずかしい思いを味わうことになる。本人にはまったく悪意がないからこそ厄介で、怒るに怒れない真人の姿が笑いと同情を誘う。しかし、そうした過度な干渉が思春期で反抗期真っ盛りの真人の心に次第にしこりとなっていく。噛み合わない息子と母親の関係がもどかしいばかりだ。

 ただし、親子の関係で問題を抱えているのは、なにも真人ひとりだけではない。自分たちより複雑なワイズの家庭環境を知り、彼女と彼女の母親の親子喧嘩に巻き込まれていく。真人は崩壊してしまった娘と母の関係修復のためにワイズの母親と立ち向かう。当たり前だが、母親だってひとりの人間だ。完璧な母親はいない。そして子供を愛していない親もいない。真々子たち母親も成長していく我が子を理解しようと一生懸命なのだ。冒険を通じて真人も母親の不器用な愛情に気づき、親子の絆を取り戻してく姿が感動を呼ぶのだ。

 「親の心、子知らず」というが、親子それぞれに言い分はあるもの。親子の関係は一生涯、切れないものなのだから、身内だからと甘えて蔑ろにしていればいつか後悔する。仕事や勉強、部活動にかまけて、家族のコミュニケーションや会話が不足しがちな現代では思い当たる節がある人も多いだろう。そんな人にこそ本作をオススメしたい。意地を張ってモヤモヤしていた親への感情を、いつの間にか素直な気持ちに晴らしてくれるハートフルストーリーだ。

文=愛咲優詩