ユーフォニアムは中間管理職? 夜の部室で語り合う楽器たち!ある吹奏楽部で描かれる、人と楽器の理想的な関係

マンガ・アニメ

2017/1/26

 最近、漫画やドラマなどでは「マイナー部活」にスポットを当てるケースが増えている。「競技かるた」を題材にした『ちはやふる』や「自転車ロードレース」を扱った『弱虫ペダル』など、珍しいだけでなく内容も面白くヒットした作品は多い。

 その流れでいえば『響け! ユーフォニアム』という作品で、「吹奏楽部(吹部)」の活動に興味を持った人も少なくはないだろう。そういう人たちならば『ある吹部での出来事-もしも楽器が吹奏楽部員だったら!?-』(菊池直恵:著、オザワ部長:監修/ベストセラーズ)に惹かれることも、十分に想定の範囲内だ。本書のオビに『響け~』の作者である「武田綾乃推薦!!!」とあるのも頷けよう。

 本書はタイトル通り「ある『吹部』での日常の出来事」を描いたコミックだが、少々補足をしておきたい。サブタイトルに「もしも楽器が吹奏楽部員だったら!?」とあり、人によっては「擬人化された楽器が活躍する話」だと感じてしまうかもしれない。確かに楽器が擬人化して登場するのは事実だが、それらがメインで活動する話ではないのである。あくまで主役は「ある高校の吹奏楽部員」たちであり、楽器はイメージとして人格化され、井戸端会議のような形で部員たちを評価するというスタイルだ。

 簡単なあらすじとしては、楽器経験者の女子・後藤がクラスメイトの男子で楽器未経験の北島、細川を「吹部」に勧誘するところから物語は始まる。最初はやる気のなかった北島だったが、後藤の説得や細川が熱心に部活に打ち込む姿を見て、その熱に当てられていく。そしてついには楽器に情熱を傾けていくことになる──という内容だ。まあよくある話だが、つまりは「王道パターン」ということであり、「青春部活モノ」として楽しめる。特に北島はかつて競泳をしていたが、怪我で長期離脱。復帰後もタイムは上がらず、そのままリタイアした経歴を持つ。実は私も水泳部に所属していたことがあり、同じような理由で辞めている。その辺にシンパシィを感じたことも、本書を面白く読めた理由であるかもしれない。

 そしてこの「吹部」を陰で見守っているのが、他ならぬ「楽器」たちだ。部員たちが帰った夜の部室で、楽器たちの井戸端会議が行なわれる。お互いに花形で目立つがゆえに張り合ってしまう「アルトサックス」と「フルート」。「高音と低音」「木管と金管」の橋渡し役のため、皆から「中間管理職」と揶揄されてしまう「ユーフォニアム」。「よくサックスに間違われる」と知名度の低さが自慢という「バスクラリネット」など、個性的な面々が「吹部」の活動について語り明かすのだ。

 その中で北島が担当することになった「第3のチューバ」は長い間、誰にも吹かれることがなかった。そのため彼はやさぐれてしまい、心を閉ざしてしまう。「私たちは、手をかけてもらえばもらうほどキラキラ輝いて元気でいられる」という楽器の言葉は、楽器のみならず人に使われる全ての道具に通じる真理であろう。そんな「第3のチューバ」だったが、北島の真摯な態度に触れてやる気を取り戻す。楽器たちは彼に感謝し、「吹部」のためによい音を出そうと誓う。それが「楽器のノリがいい」と部員たちにも伝わり、部活動もコンクールに向けて熱を帯びていくのだ。「吹部」部長の「楽器だってただ吹かれてるんじゃない、ちゃんと奏者のことを見てるんだ」という言葉に、人と楽器の理想の関係が表れているのではと思える。

 また本書では本編とは別に、監修の「オザワ部長」によるコラムも楽しめる。「吹部」の勧誘から担当楽器の指名など、いわゆる「吹部あるある」が満載。中でも一番大変なのは「人間関係」であるという。「目立つソロパートを誰が吹くか」とか「男女一緒にやる部活なので、部活内恋愛から揉め事が起こる」などトラブルはさまざまだ。漫画ではそこまでは触れられていなかったので、もし続編があるならそのあたりにも切り込んでほしいところである。

文=木谷誠