電車内の吊り広告は雑談のネタ。SNSを積極的に活用。「スゴい営業」が日々実践していることとは?

ビジネス

2017/2/13

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    『スゴい営業 そこまでやるか』(日経産業新聞:編/日本経済新聞出版社)

『スゴい営業 そこまでやるか』(日経産業新聞:編/日本経済新聞出版社)は、『日経産業新聞』で、2012年5月以降「売れる営業 私の秘密」という表題で掲載したおよそ150本の記事の中から、エピソードを厳選し、文庫化したビジネス書だ。

 本書では、様々な業種の、大・中小企業の営業マン、営業ウーマンが「自分の営業体験」を語っている。一人につき大体5ページ。主体はもちろん仕事についての話だが、趣味や、学生時代の話などにも触れられており、「プチ自叙伝」のようにも読める。ごく普通の人の人生を垣間見ることができるのは、単純に読み物としても面白かった。

 さて、気になる「スゴ技」だが、本書に載っているのは営業マン、営業ウーマンの中でも実績を出し、高い評価を受けた「一部のスゴい人たち」だけ。そんな人たちのテクニックは果たして参考になるのだろうか……と思ったのだが、彼らのテクニックは、案外「地味」なのだ。

 例えば森永製菓の大熊さんは、チョコレートの「ダース」の販促活動をする際、「固定観念を捨てた」という。社内では「他社が強すぎてキャンペーンはできない」という諦めムードが漂っていたそうだ。しかし、大熊さんは「定番棚以外で専用の什器(じゅうき)を置き、商品を陳列する」ことを提案。当時「各社がスペースの関係でできない」と思い込んでいた新たなる売り場面積を発掘したのだ。

 その他に、大熊さんが心がけているのは「信頼関係は小さな成功の積み重ね」「楽しさを(取引先と)共有する」といったこと。

「売ったら売りっぱなしにしない」(実際に取引が成功し、商品を納品した後のアフターフォローにも気を配る)、「物を売りたい時にだけ来るのかと相手から思われないように、日ごろから顔を見せる」「時間を守る」「商品を売ることだけを考えて、相手のニーズをおろそかにしない」……といったポイントは、比較的どの営業マン、営業ウーマンも同じようなことを意識しているようだ。

 大阪ガスに勤務する小林さんは、「何でもやります、というスタンス」を大切にしている。仕事に結びつかないことでも、相手に疑問点がある場合、すぐに調べてメールを送るという。また、「営業マンは売るだけの人間」と思われないため、専門的な知識を蓄え、技術の仕組みや一般人には分かりづらいことを、「いかにかみ砕いて説明するか」を学び、分かりやすく伝える姿勢を大切にしているそうだ。

 そんな小林さんの心がけているポイントは、「日ごろ会えない(担当企業の)幹部が出席するイベントには、進んで顔を出す」「電車内の週刊誌の吊り広告は頻繁にチェックし、雑談時のネタを仕込む」などなど。

 しゃぶしゃぶ店「鍋ぞう」などを運営する企業ワンダーテーブル勤務の関川さんは、SNSを積極的に活用し、インスタグラムで情報を発信したり、来店客のフェイスブックへの投稿にコメントをしたりして、口コミを広げているとか。

 本書を読んでいて思った。

 営業で「成功する人」は、地道な努力を継続できる人ではないかと。

 もちろん、本書にはその業界の方が読めば「その発想はなかった……! このテクニック、真似してみよう!!」と思うポイントも多々あると思う。ただ、営業職ではない筆者が全体を通して読んだ時に感じたのは、「奇想天外でビッグなこと」ではなく「相手のためになる些細で小さなこと」を「地道にできる」人こそ、「スゴい営業」ではないかということ。

 たくさんの営業マン、営業ウーマンの「人生」と「ワザ」が詰まった一冊。彼(彼女)らはみな、仕事を楽しんでいるようにも思えた。

文=雨野裾