自分らしく生きられる場所とは? 23人の移住者に聞く、「自分の居場所」の見つけ方

ライフスタイル

2017/2/27

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    『生きる場所を、もう一度選ぶ 移住した23人の選択(しごとのわ)』(小林奈穂子/インプレス)

 人生において、誰もが一度は考える自分の「生きる場所」。

 生まれた場所は選べないが、大人になるにつれて自分が自分らしく生きられる場所は、本当にここだろうか? と、今いる場所に疑問を抱く。進学や、就職などをきっかけに他の地に移り住む人も多いだろう。

「生きる場所」というのは、単なる生活圏だけの問題ではなく、人生そのものを左右する。「生きる場所」探しは、「自分の居場所」探しともいえそうだ。

 世の中には自分の居場所が見つからず、人生を模索している人も多い。頭を悩ましている人もいるのではないだろうか。

 そんな人に手に取ってほしいのが『生きる場所を、もう一度選ぶ 移住した23人の選択(しごとのわ)』(小林奈穂子/インプレス)だ。本書には、自分の「生きる場所」を探して移住した23人の実体験が掲載されている。

 家具職人の大島正幸さんは、岐阜県の飛騨高山から岡山県の西粟倉村へと移り住んだ。
移住のきっかけは、仕事で西粟倉村へ向かう奥さんに付いていったことだ。はじめは運転手として、付き添った大島さん。しかし、そこで人生を変える大きな出来事が起こった。

大島さん「植えられてから九十年が経とうとしているひのきの森の、代々大切に手入れされてきた姿を見て、胸を打たれてしまった。それはもう衝撃だったんです」

 そう話す大島さん。長年、家具職人として、木材に向き合ってきた彼は、西粟倉のひのきの森の美しさに圧倒される。それだけでも彼の心を動かすのに十分であったが、更に心を揺さぶる出会いがあった。

大島さん「人の手で植えられた木から成る森には、人の手による管理が必要です。管理にはお金がかかるけれど、お金をかけても今は木が売れない時代。外材のほうがうんと安いんです。全く採算のとれないことを『おじいちゃんが植えた木』だからという理由で心をこめて長年やっている人がいる。その人ももうおじいちゃんの年齢です。その森のきれいなことといったら……。もう泣いちゃいました」

 そのおじいさんとの出会いが大島さんの運命を変えた。大島さんは、大切に手入れされたひのきの森と、それを守っている村の人々を見て移住を決意。飛騨高山に戻ってきた翌日に、家具職人として働いていた会社に辞表を出したという。

 大島さんは、ひのきの森の美しさに衝撃を受けたと言うが、本書を読む人は大島さんの決断の早さに衝撃を受けるだろう。このように、本書には思いもよらぬきっかけで移住を決断した人が多く登場する。そして、彼らは移住先で自分が自分らしく生きられる「自分の居場所」を見つけている。

 こう書くと、一見、移住成功への道を書いた本にも感じられるが、決してそうではない。本書を読んで感じるのは、世の中には多様な生き方があり、「生きる場所」の見つけ方も、「人生の居場所」の探し方もさまざまだということだ。もちろん田舎に憧れて計画的に移住をした人もいるが、衝動的に移住を決意した人もいる。移住への経路は人それぞれ。昨今は「○○をすれば成功する!」「××をするだけで幸せに!」などという、うたい文句も多いが、本書は「生きる場所」や「自分の居場所」を見つけるのに、一つの正解はない、もっとみんな自由でいいんだ、ということを教えてくれる。

 人間誰しも、どうすれば「自分の居場所」を見つけられるかと一度は悩むだろう。しかし、本書を読むと悩み考えるのがバカらしくなるほど、みんな自由である。その姿を見ると「あ~、悩まなくていいんだ」と気持ちが軽くなる。自分の生き方に悩んでいる人ほど手に取ってほしい一冊だ。

文=舟崎泉美